マダム・クニコの映画解体新書

コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

完全なるチェック・メイト

2016-01-19 | 映画短評
2015年、アメリカ、エドワード・ズウィック監督

 冷戦時代に実在した米国のチェスチャンピオンが、チェス最強国ソ連の王者と世紀の対局に挑む姿を描いた。
 トビー・マグワイヤー主演&製作。

 代理戦争として政治に利用され、政府の監視下に置かれる2人。
 主人公が次第に精神的に追い詰められていく様子を、克明に映し出す。

  チェスを知らなくても、十分に面白い。
大写しの表情と、駒を動かす手元を延々と見せるだけだが、非常にスリリングだ。

 勝つための手法は無限にあるようでいて、答えはたった1つしかない。
 本作は、そのことをまざまざと教えてくれる。

 それは誰の人生にも当てはまる究極の哲学だ。
「他人に振り回されないオリジナル性」。
 ライバルは、それに気付き、彼に惜しみない拍手を送る。

 だが生き方でそれを貫くのは至難の技である。
 この天才プレイヤーは、自由を希求し、放浪を続け、かつての世紀の対局の地で、非業の死を遂げる。

 彼の生き様は、現代の我々にも通ずる。
  監視社会への恐怖、それがもたらす狂気、自由の尊さ、差別への抵抗…。

 映画を通して、様々なことを考えさせられた1日だった
★★★★(★5つで満点)

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