クラシック音楽のひとりごと

今まで聴いてきたレコードやCDについて綴っていきます。Doblog休止以来、3年ぶりに更新してみます。

ベートーヴェンのピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110 ウラディーミル・アシュケナージ(Pf)

2007年06月04日 05時21分05秒 | 器楽曲
6月に入ってから涼しい日々が続いています。
空は曇天。雨模様の休日でありました。でも梅雨入りはまだらしく、四国地方は渇水の恐れありとの予報なので、この時期、まとまった雨が欲しい気もします。

さて、今日はベートーヴェン後期のピアノ曲を。

ピアノソナタ第31番 変イ長調 作品110。
ウラディーミル・アシュケナージのピアノ独奏。
1972年7月、ロンドンのキングズウェイ・ホールでの録音。DECCAに録音したアシュケナージの全集では、最も初期の録音になる。

このソナタは、ベートーヴェンにしては、全楽章とも形式張ったところが少なくて、自由で即興的、また夢幻的な世界に漂う感じの曲と思う。
アシュケナージのピアノは、クリスタルの美しさ。透明で光り輝く。その燦めきは、硬質の輝き。聴いていると、惚れ惚れする。そして、爽やかで清々しい響きでもある。

そう、アシュケナージのベートーヴェンは、輝くばかりの鮮やかさが特徴。精神性云々は、この際置いておいて、その美しさと曲の夢幻性に酔うのも悪くないだろう。

第1楽章はモデラート・カンタービレ・モルト・エスプレッシーヴォ。
よく歌いながら、熱い気持ちを品よく語りかけるアシュケナージのピアノが美しい。
一つ一つの音がホンマに綺麗。粒立ちが良く、美しく鳴る。高音はもちろん、伴奏の左手だって輝くような美しさ。

第2楽章はアレグロ・モルト。
テクニックはナンボでもひけらかすことは出来るだろうに、アシュケナージは曲想よろしく、淡々と進んでゆく。その奥ゆかしさ、抑制のきいた表現がイイ。

フィナーレはアダージョ・マ・ノントロッポとフーガ~アレグロ・マ・ノントロッポの複合2部形式。
透きとおった哀しみのアダージョ。心が震えているような、それをそっと隠すような表現が素晴らしい。そして、生への執着と天国への階段を表しているようなフーガ。絶品の演奏と思う。その表現を支えるピアノの美しいこと。
巧いもんだなぁと思う。

録音から35年も経過しているのに、今も素晴らしい音。
DECCAの録音陣の凄さを改めて感じます。
アシュケナージのかけがえのない1970年代、彼がピアニストとして全盛を誇っていた時期の、素晴らしい演奏が味わえます。



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