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ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

里山のカフェ

2014-10-14 15:05:04 | エッセイ

  こないだ、八瀬の台地区まで足を伸ばしたのは、春、ひょっとすると田植え前だったかもしれない。ほぼ半年ぶりになる。

 もはや、稲は収穫されて、はせに干されている。

 山田を眺めるというのは、特別な経験に違いない。

 どこか肉体の奥深いところが癒されていく感触がある。

 昨年も何度か訪れて、代搔きのあとから、田植えのあと、緑の株がぐんぐんと伸びる時期、そして黄金の稲穂が垂れる時期と経験させてもらった。

 ことしは、うかつなことに、夏の盛りを含むその成長のプロセスをすっ飛ばしてしまった。

 内陸の平野の広々とした稲作地帯とはまったく違う里山の谷あいのせいぜい数枚が隣り合わせの田んぼ。向かいの斜面は、上流域とも中流域とも呼べるような狭い川を挟んだ向こうで、一面広葉樹に覆われている。もうしばらくすれば、紅葉も見られるが、このあたりは、実は海にも近い低い山地、それほどの鮮やかさは見られず、渋い色合いという範疇に収まるものに過ぎない。

 八瀬盆地が(ここは「やせ」ではなく「やっせ」と呼ぶ)、気仙沼の桃源郷であるとは古くから唱えられたことである。奥に峠を越えて隣県までの林道がないではないが、川の源流まで、行き止まりの袋路。

 しかし、ここに、本格的な自家焙煎の珈琲を飲ませるカフェができて、しかも、カレーライスやサンドウィッチやら、10時半前にはお得で洒落たモーニングなども頼めるとなれば、ドライブがてらのひとはわざわざここをめざしてやって来る。つられて、地元のひとびとも、出勤前にあるいは、夕刻、一服の珈琲をと立ち寄ることにもなるという。

 内湾の港に面して、港町のカフェが最近オープンしたところだが、こちらは、里山のカフェ、とも称すべきか。

 八瀬コーヒー、里山の時の流れ。


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