ものごとはいつも
予感のなかにあるときがいちばん美しい
実現したものが美しくなくていい
ということでなく
実現したものの美しさが
遡って
なおさらに
予感を美しくする
ときめき
とは
ものごとが成就するそのときに向けて
時が熟していく
その過程をこそ指し示すことば
成就した途端に
盛りはすでに過ぎてしまう
建築物の完成はゴールではない
有機的な組織機構が成長していく
その過程での
ひとつのエピソードでしかない
その都度の
とりあえずのゴールではあるとしても
ほんとうの成就は
だから
いつも先送りしなくてはならない
その先に
その先に
しかし
その先は
阿弥陀菩薩のような
何億光年ものその先
ではない
せいぜいが
わが子の
その子の時代まで
の見通しでなくてはならない
未来永劫への成長ではない
ひとは生きているあいだは
ひとに成りきれない不完全な存在
死んで初めて一個の人間になる
その間は成長する
せいぜいがそのスパンでの
成長
世界はひとりひとりにとっての世界
ひとそれぞれに住んでいる世界が違う
生きている全ての人間と同じ数の世界が
パラレルに重なっている
それぞれの世界のなかでの成長
ひとつのものさしでは測れない成長
世界が均一に均等に成長していくなどということはない
だから
世界の成長を数学的に推測するのは
いつでも近似値の予測でしかない
仮定したものさしでの仮説でしかない
現実は
常に仮説をはみ出す
予測が完全に実現することはない
経済学は限られた条件でのシミュレーションでしかない
あなたはそれを知っているだろうか?
未来永劫の美しさなどない
そんなものに心が動かされることはない
ときめく今の美しさ
むしろその予感をこそ
杉本博司ですか。調べてみましょう。