菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

椅子を探す。

2010年07月06日 00時00分16秒 | ブロぐ。
椅子が壊れた。
今年買ったばかりの椅子の左の肘掛がボキンと折れたのだ。
立ち上がるときに、体重を肘掛けて立ち上がるからだろう。
DVDを観終えて、ああ、面白かったとDVDを片付けるために、立ち上がろうとしたとき、ボキンといった。
突然、支えを失い、体はズドンと転がった。
前の椅子は8年ももったというのに。
この8年間の体重の増加のせいだけではなかろう。
決して高い椅子ではなかったが、それでも2万はしたオフィス用のハイバックの椅子だった。
1週間もさまざまな店で椅子に座り続けて買った椅子だったが、実際に使ってみると、少々相性の悪いところもあった。
右のパイプが時折、背中の肋骨のところに当たって痛いのだ。
そこで、無印良品で、固めのビーズクッションを買い、当てた。
肘掛にもクッションを巻き、自分に合うように少しずつ改良して、ようやくなじんだところだったのに。

保証してもらっても、前と同じ椅子であると言う。
それでは、結局また半年でボキンだろう。

おいらは、ベッドより椅子の上で長く暮らしている。
執筆していると、体力が尽きて、しばしば椅子で寝てしまうし、撮影のときは、遅刻が怖くて、ベッドでは寝られず、椅子で寝る。
DVDを観るのも椅子だ。
前に一人がけのソファー的な椅子を購入する計画を立てたが、手狭な部屋では、二つの椅子は場所をとり過ぎるので、断念。

しかたなく、新しい椅子を買うべく、さっそく椅子を物色しにでかけた。
仕事に出る前に、暇を見つけては、そそくさと店に通い、椅子に座りまくる。
今回は予算を気にせずに椅子を探した。
いい椅子がくれば、いい仕事につながるかもしれぬ。

漫画『茄子』の中で、「100万円で購入するつもりで、絵を見たら、目は鍛えられる」というような台詞があった。
10万ぐらいの椅子を買う気で探せば、それなりに、尻と背も鍛えれるであろうか。

椅子を探すには、ある種の覚悟がいる。
それは、ただ座るだけでは、ホントウの座り心地はわからないからだ。
普段座っているように、胡坐をかき、体を捻り、子どものように揺らし、腕を大きく伸ばしたり、体を預けて眠ってみなければならない。
恥を忘れて、公の場で私的な姿をさらしつづける。
そういう覚悟がなければ、いい椅子を見つけられない。
これは苦行である。
前回の椅子探しは、それが少々欠けていた。
ゆえに、背中にわずかに違和感を覚えるはめになったのだから。
教訓とは体で覚えるものなのだな。


仕事の合間合間に探し続けて、右肘掛けだけの椅子で暮らすこと2週間。
ようやく、我が背と尻に合う椅子を見つける。
今回は、3万の本皮のハイバックの重役椅子だ。
実際、大手の家具屋にあったイタリアの椅子とも背には合ったのだが、高くて手が出なかったのだ。
14万は出せないもの。
それよりも、日本製のオフィス家具の3万の椅子が合ってしまったのだ。
おいらの背と尻の育ちの安さもあるだろうが、安価で満足させるいい椅子を作った日本の職人の腕を褒めることにしよう。
もちろん、細かい不満はある。
リクライニングではなく、ロッキングなのだ。
それでも、独特の尻の部分が持ち上がらないロッキング方式を採用しているのだが。
肘掛けのクッション部分にも覆い方が甘く骨組みが当たるときがある。
まぁ、それはやはりいっしょに暮らし続ける内に、体が合わせていくだろうし、合わない部分は改良すればよい。


で、お届けは一週間後。
それまで、またあの右肘掛けの椅子とお付き合い。
最近はうまく使いこなせるようにすらなってきた。
左肘掛け代わりに固めのクッションを置き、立ち上がるときも右肘掛けだけに負担をかけすぎて、そちらもボキンといかぬように、尻面に手をついて。
肘掛けがない分スペースも広くなり、胡坐も悠々とかける。
住めば都ではなく、座れば都という感じ。
お互いの欠点を補い合って、うまくやっている。
そうなると、愛着もわいてくるものだ。
別れまで、あと6日間。
待ち遠しくもあり、切なくもあり。

体を椅子に合わせる人生である。
畳で暮らせば、そういうことも少なかったのだろうか?
お年寄りが椅子よりも和室を好むのは、そういう体の要求からだろうか?
とはいえ、新しい椅子と背と尻を合わせるのも、楽しみな自分である。
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