一期一会

日々是好日な身辺雑記

「反日種族主義」/李栄薫

2019年12月16日 | 雑記
先月中旬の発売と同時に、図書館に予約票を出しておいた「反日種族主義」を先週木曜日に手に入れた。
予約した時点では蔵書になっていなかったが、評判になっている本なので暫くして蔵書になった。
蔵書前の予約という同じ考えの人がいたらしく予約待ち2番目で、現在私の後に60人以上の予約待ちになっている。
文化論的な本かと思っていたが、過去の色々な資料を基にして書かれた学術書で、3部22章から成る本は主に李栄薫氏によって書かれているが、他に5人の学者も章ごとの著者になっており、そこにリストアップされている参考文献の数も多い。

本の中心になっているのが、現在日韓間で問題になっている、徴用工、従軍慰安婦、それに関連して大法院の個人請求権は消滅していないとの判決、竹島の帰属などだが、それに対して過去の資料を基に、全て明快に現在の韓国の見解を否定している。

従軍慰安婦問題については、80ページにわたって論じられており、戦後の韓国軍慰安婦、ベトナム戦争時の米軍慰安婦などを例にとって、従軍慰安婦との違いについて疑問を呈しているが、どちらにしても肯定的に論ぜる話ではないので、ここでは書かない。
日本人吉田清治氏が「私の戦争犯罪」「朝鮮人慰安婦と日本人」で済州島の慰安婦狩りとして、日本軍が強制連行したというのは嘘で、それを報じた朝日新聞社が後で陳謝したという件についても書かれている。

プロローグで、嘘をつく国民、嘘をつく政治、嘘つきの学問、嘘の裁判として書き始められるこの本を読み終えての感想は、全ての問題に対する著者達の見解の論拠が明快に示されている事と、韓国人としてよくここまで書けたなという驚きだ。
同じソウル大教授出身の曺国前法相の(吐き気がする反日)という感情的な反応に、公開質問状を出して論争を呼びかけたが、応じられていないらしい。

韓国で親日のレッテルを貼られていると大変らしく、慰安婦の事実を「帝国の慰安婦」として本にした世宗大学の女性教授朴裕河氏は名誉毀損で訴えられ、ソウル高裁に有罪判決を下されている。
9月には延世大学の教授が(慰安婦が強制連行された事実はなく、貧しさが原因)と講義し、その質疑応答での発言が問題視され名誉毀損で訴えられている。
 「帝国の慰安婦」は図書館の蔵書となっており、現在2人予約待ちとなっているが、既に10冊の予約を入れているので駄目だが、一冊届けば予約出来る。

「反日種族主義」の李栄薫氏とその執筆陣は、この本を批判する韓国の大手メディアへは正面からの論争を仕掛けるらしいが、韓国の中央日報のWeb版を見れるが、保守系の新聞なのか、この本に対する批判的な論調は見られない。
ただ、日韓関係の記事に対する日本人の匿名のコメントは良い感じが持てないものが多い。
このブログもデフォルトでは(コメントを許可する)になっているので、投稿の度に(許可しない)と直すと、コメントのマークが消える仕組みになっているのだ。
インターネット上での匿名のコメントは受けたくない。

先週川崎市が罰金50万円のヘイトスピーチ禁止条例を可決したが、インターネット上の同種の規制は出来ないところが、韓国でも日本でも難しいところだ。

「反日種族主義」は、正しく日韓の歴史を理解する上での良書で、日韓関係以外にも盧武鉉(ノムヒョン)政権や文在寅(ムンジェイン)政権の北朝鮮融和策の危うさについても書かれており、学術書的だが読み応えのある本だ。