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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ダークマターの正体は大質量天体? それとも軽い粒子なのか? とりあえずブラックホールではないようです

2018年10月25日 | 宇宙 space
遠方にある超新星のデータを分析してみて分かったことがあります。

それは、ダークマターの大部分がブラックホールからなるという可能性が低いこと。
ダークマターの正体がブラックホールだったとしても、その割合はせいぜい40%程度にしかならないようです。


軽いものから重いものまであるダークマターの候補

天文学で最も厄介な難問の一つダークマター(暗黒物質)。

宇宙にある物質の84.5%がダークマターだということは分かっていても、その正体となる物質はまだ検出されていません。
  ダークマターは、質量を持っているけど光学的に直接観測できないとされる仮設上の物質。

ただ、ダークマターの候補として挙がっている物質はいくつかあります。
“アクシオン”のような非常に軽い粒子から、銀河ハローに存在するかもしれない大質量でコンパクトな天体“MACHO”まで、質量は様々。
  “MACHO”には、宇宙誕生の直後に作られ、
  太陽の数十倍から数百倍の質量を持つとされる“原始ブラックホール”も含まれている。

○○○
手前のブラックホール(中央)によって、
超新星(左下)とその母銀河の像が“重力レンズ効果”で歪められ、
実際より明るく見える(イメージ図)。
また、ダークマターは複数の粒子や天体からなるという説もあります。

でも、互いに無関係の成分がダークマターの中にいくつもあるとすると、それぞれについて起源の説明が必要になり、モデルが非常に複雑になってしまうことに…

ダークマターが、非常に重いブラックホールと、非常に軽いブラックホールの2種類からなる。
または、ブラックホールと未知の粒子からなると考えることもできてしまいます。

そうすると、片方の成分はもう片方の成分に比べて1個当たりでは何桁も質量が大きいことになり、にもかかわらずトータルの質量では同じくらい存在しなくてはならなくなります。

天体から顕微鏡レベルのものまで、あるいは宇宙で最も軽い粒子まで考えるので、非常に説明が難しくなるんですねー


“重力レンズ効果”により否定された大質量天体説

今回の研究では“重力レンズ効果”に着目しています。

遠くにある天体からの光は、地球に届くまでの間に、途中にある銀河や銀河団に含まれる膨大な質量が生み出す重力によって、曲げられたり明るくなったりします。

この重力による影響を“重力レンズ効果”といいます。

ブラックホールや“MACHO”が、もし宇宙にたくさんあれば、遠方で起こったIa型超新星の光に“重力レンズ”が影響を与えるはずです。

Ia型超新星は爆発後の最大光度がどれも同じになるので、明るさの変化を見てダークマターの正体を特定しようということです。
  爆発後の最大光度がどれも同じになるIa型超新星は、
  宇宙の距離を測る標準光源として使われている。

○○○
超新星と観測者の間にブラックホールがあると、
その重力によって超新星からの光の経路が曲げられ、
光を像こうするレンズの役割を果たす。
まず行われたのは、2通りの超新星カタログを使って超新星の明るさと距離の統計解析でした。
  “Joint Lightcurve Analysis”カタログの580個、
  “Union 2.1”カタログの740個の超新星を解析している。


もし、ダークマターの正体がブラックホールや“MACHO”なら、超新星の増光・減光のタイプから予測される明るさよりも0.1~1%ほど明るく見えるものが8個は存在するはずだと推定します。

でも、解析の結果、実際にはそうした超新星は1つも見つからず…

この結果から出た結論は、原始ブラックホールや“MACHO”は、仮に存在するとしても宇宙のダークマターのたかだか約4%を占めるにすぎないということでした。

さらに、別の超新星カタログを用いた最新の解析では、より厳しい2%という上限値が得られています。
  “Pantleonカタログ”にある1048個の明るい超新星が解析に使われた。


ダークマターの有力候補は素粒子へ

こうした解析手法が提案されたのは1990年代後半のことでした。

ただ、ダークマター探索については、大質量天体から素粒子へと関心が移ったので、ダークマター天体を探す解析は中断していました。
  特にWIMPと呼ばれる弱い相互作用をする質量の大きな粒子に関心が移った。

  ダークマター候補物質の検出へ! アメリカが次世代ダークマター検出装置を建設
    

当時、“MACHO”として考えられた天体の質量や種類については、後にそのほとんどが多くの観測実験によって否定され、こうした天体が見つかる望みはほとんど残っていなかったからです。

さらに、当時は遠方のIa型超新星で距離が測定されたものは少ししかありませんでした。

でも、重力波検出装置“LIGO”による重力波の検出が状況を変えることになります。

2015年に太陽質量の数十倍というブラックホール同士の合体による重力波が検出されると、このようなブラックホールが宇宙に十分存在していればダークマターを説明できるのではないか、という希望が再び広がったんですねー

興味深かったのは、“LIGO”の観測で見つかったブラックホールの質量が、ダークマターの可能性がまだ否定されていない天体の質量範囲にちょうど一致していたことでした。

でも、今回の研究結果によれば、結局これは偶然の一致だったということになりますね。


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