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謎の光る点は砂丘から舞い上げられた砂塵の雲? 活発な衛星タイタンに新しい特徴を発見

2018年10月20日 | 土星の探査
地球以外で唯一、地表に安定した液体が存在しているのが土星の衛星タイタンです。

意外に思うかもしれませんが、厚い大気と湖、川、海を持っていて、太陽系の中で最も地球に似た天体と言えるんですねー

ただ、極寒の地表にあるのは水ではなく、メタンやエタンのような有機分子の液体…

地球では水の雨が降り、川となって海に流れ、蒸発してまた雨になるのですが、タイタンではエタンやメタンと言った炭化水素が循環しています。

今回、そのタイタンに新しい特徴が見つかりました。
どうやら、タイタンの赤道領域では大規模な砂嵐が発生しているようです。


土星探査機の観測データから分かった新しい特徴

NASAとヨーロッパ宇宙機関などが運用した土星探査機“カッシーニ”は、2004年から2017年まで土星とその衛星を周回して探査を行っていました。

今回、その膨大なデータの一部から、土星最大の衛星タイタンの赤道領域に、大規模な砂嵐と思われるものが発生していたことが分かってきました。

砂嵐が観測されているのは太陽系内では地球と火星のみ。
なのでタイタンは、太陽系では3例目の天体になります。

タイタンと言えば、地形や一風変わった炭化水素の循環について知られていました。
そこに、砂嵐という新しい特徴が加わることになります。


メタンやエタンが循環する極寒の環境

太陽系内の衛星として唯一、豊富な大気を持つ天体がタイタンです。

さらに、地球以外で表面に安定的に液体が存在する唯一の天体でもあります。

ただ、タイタンの表面温度は摂氏マイナス180度ほどで、存在している液体は水ではなく、主にメタンとエタンなどの液体のガス。

タイタンでは炭化水素の分子が蒸発して雲の中で凝縮、雨となって地表に降り注いでいるんですねー
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液体のメタンやエタンが地表に存在するタイタン(イメージ図)


赤道付近に現れる謎の光る点

タイタンの気象は、地球と同じように季節ごとに変化します。
1年は長く地球の約30年にあたり、季節は7年ごとに変化。

特に、約15年ごとに訪れるタイタンの春分や秋分の頃には、赤道付近で巨大な雲が形成され、激しいメタンの嵐が発生しています。

“カッシーニ”は、タイタンの北半球が春分を迎えていた2009年頃に赤道付近を赤外線で撮影。
すると、通常とは異なる3つの光る点が見つかります。

当初、この光る点はメタンの雲だと思われていました。

ただ、タイタンで雲が形成される仕組みから考えると、この時期にこの領域にメタンの雲が発生することは物理的に不可能なんですねー

そして、この模様を詳しく調べてみて、雲とは違うものだと分かってきます。
○○○
3つの明るい模様(矢印の先)
中断の画像が模様が最も明るいときのもので、
上下は胴領域をその前後の期日にとらえたもの。


正体は大気中に広がる個体粒子の薄い層

この明るい模様は最短で11時間、最長でも5週間ほどで消えてしまったので、表面で凍結したメタンの雨や、内部から表面に流れ出て凍った物資である可能性は無いようでした。

さらに、化学組成の面からも表面の特徴ではないことが示されます。

考えられるのは、この特徴は表面に近い大気中に広がる固体粒子の薄い層だということ。

模様の位置がタイタンの赤道付近に存在する砂丘の真上にあたるので、この模様は砂丘から巻き上げられた砂塵の雲だと考えられます。

この砂嵐は、地球の乾燥した地域で発生する大規模な砂嵐“ハブーブ”と同じもののようでした。
“ハブーブ”は、雨で冷えた空気が下降することで突風が発生し、その風によってチリが舞い上げられる現象です。

タイタンの赤道付近では、メタンの嵐が同じような突風を発生させている可能性があります。

強い風や大規模な砂嵐によって、タイタンの砂丘は常に変化し続けているのかもしれません。
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タイタンの砂嵐(イメージ図)

液体のメタンが流れる川や、メタンの雨に浸食された地形、激しいメタンの嵐や大規模な砂嵐の発生…
とても活発な衛星タイタン、それでも太陽系の中で最も地球に似ている天体なんですねー


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