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モバライダー mobarider

地球生物のDNAにも関係がある? 星間空間で初めてキラル分子を発見

2016年07月28日 | 宇宙 space
巨大な星形成領域“いて座62分子雲”で、
キラル分子の酸化プロピレンが見つかりました。

隕石や彗星など太陽系内では見つかっていたキラル分子ですが、
星間空間で検出されたのは初めてのことなんですねー

なぜ、地球上の生物はDNAの二重らせん構造が、
キラル分子のうちどちらか一方だけを使っているのか?
謎を解く第一歩になるのかもしれません。


鏡像の関係にある構造

右手と左手(鏡像)の関係のように、
ある構造と、その鏡像の関係にある構造が、
回転操作によって互いに重ね合わせることができない。

こうした性質のことを“キラリティー”と呼び、
そうした性質を持つことを“キラル”と呼んで、
「手はキラルである」と表現します。


キラル分子

そして分子にも、
“キラル”なもの(右手型と左手型があるもの)が存在しています。

キラル分子は地球上で発見される隕石や彗星など、
太陽系内では検出されています。

でも星間空間で検出されたことは、これまでありませんでした。

今回、アメリカ国立電波天文台の研究チームは、
アメリカのグリーンバンク電波望遠鏡とオーストラリアのパークス電波望遠鏡を使用。

天の川銀河の中心方向にある巨大な星形成領域“いて座B2分子雲”を観測し、
キラル分子である酸化プロピレン(CH3CHOCH2)を検出しています。

初めて星間空間でのキラル分子を発見に成功したんですねー

酸化プロピレンは、これまで宇宙で発見された中では最も複雑な分子でした。
中央の円がいて座B2分子雲。
酸化プロピレン分子の構造イラスト。キラルの右手型と左手形が描かれている。
下にある矢印が指しているのが、天の川銀河中心のいて座A*(エースター)


地球のキラル分子

今回の発見は、
「どこでどのように右手型・左手型といった差が発生し、
  なぜ一方がもう一方よりもわずかに多く存在するのか?」
ということを調べる研究への扉を開くものになります。

地球上の生物はDNAの二重らせん構造などを含め、
キラル分子のうちどちらか一方だけを使っています(ホモキラリティー)。

でも、どのようにして右手型・左手型の、
いずれかだけに頼るようになったのでしょうか?

太陽系内の隕石にはキラル分子が含まれていて、
その年齢は地球のものよりも長いものです。

彗星にもキラル分子は含まれています。

こうした小天体中のキラル分子に、もともと偏りがあり、
それが地球に生命のもとを運んできたとすれば…

今日見られるような生物のホモキラリティーが生じたことを説明できますね。


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