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“アンタレス”ロケット改良の目玉! ロシアから来た新エンジン

2015年10月15日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
オービタルATK社の“アンタレス”ロケット5号機が、
打ち上げに失敗したのが2014年10月のこと。

失敗の原因が、第1段ロケットエンジンにあった可能性が高かったので、
オービタルATK社は、ロケットエンジンを新しくするなどの改良を施した、
新しい“アンタレス”の開発を進めています。

その新エンジンがロシアから届いたんですねー


第1段ロケットエンジンの変更

この改良型“アンタレス”では、
失敗の原因と目された第1段エンジン“AJ-26”の使用を止め、
新たに“RD-181”というエンジンを搭載することになります。

“AJ-26”は、ソ連で今から40年ほど前に製造されたエンジンを、
現代のロシアとアメリカで改修したもの。

でも、“RD-181”は現在も製造が続いているロシア製エンジンで、
開発や製造を担当している企業も異なります。

ロシアから出荷された最初の2基の“RD-181”は、
ヴァージニア州のウォロップス島にあるアンタレス組み立て施設に到着し、
“アンタレス”に装着。

エンジンの装着数は2基で変わらないのですが、
エンジンそのものの形や、1基あたりのエンジン性能が上がっているので、
ロケットとエンジンとの結合部分などを中心に、改修が施されているそうです。

“RD-181”は“RD-191”というエンジンを改造したもので、
“RD-191”は2013年に資格認証プログラムを完了していて、
これまでに累計3万7000秒間にもわたる運用実績があるそうです。
“アンタレス”ロケットに装着される“RD-181”エンジン。


新エンジン装着後のスケジュール

ロケットに装着された状態でのエンジンの燃焼試験は、
今年末から来年初めごろに行われる予定になっています。

また、最初の打ち上げは、2016年中に実施される予定だそうです。

なお、初期の飛行で使われる機体“アンタレス200”は、第1段タンクが従来型とほぼ同じなので、
“RD-181”が本来持つ性能を落とした状態で飛ばすことになっています。

この場合、打ち上げ能力が従来型とほぼ同じになってしまうんですねー

ただ、現在新しい第1段の開発が進んでいて、
これを使った機体“アンタレス300”では、エンジンの能力を最大まで発揮できるので、
打ち上げ能力は従来型より最大20%も向上するそうです。
“アンタレス”ロケット


新ロケットエンジン“RD-181”

これまで使われていた“AJ-26”は、今からおよそ40年前に、
ソビエト連邦が開発・製造したエンジン“NK-33”が基になっています。

その後“NK-33”は倉庫で保管され続けた末、1990年代にアメリカが購入。

そして、エアロジェット・ロケットダイン社の手で、
アンタレスに装着するための細かい改修が施され、
新たに“AJ-26”という名前が与えられたそうです。

一方の“RD-181”はと言うと、
実は、こちらも原型となるエンジンが開発されたのは1990年代のこと…

でも、その後現在まで改良が重ねられていて、
また製造も続々と行われている、実は新しいエンジンなんですねー

その原型エンジン“RD-170”は、
超大型ロケット“エネルギア”の第1段用として開発された、
世界でも最高の性能をもつエンジンのひとつです。

4つの燃焼室とノズルを持つ“RD-170”は、4基のエンジンを束ねたようにも見えますが、
エンジンに推進剤を送り込むためのターボ・ポンプは1基のみなので、
これて1つのエンジンとして数えられています。

“エネルギア”そのものは、
ソ連崩壊などの影響で打ち上げは2回しかありませんでした。

でも“RD-170”の技術は、他のロケットに転用され、
また改良が重ねられるなどして生き続けることに…

たとえば、現在も打ち上げられている“ゼニート”ロケットの第1段には、
“RD-170”を改良した“RD-171”や“RD-171M”が、
また燃焼室を2つにした“RD-180”は、
アメリカの“アトラスV”ロケットの第1段として使われています。

また、燃焼室を1つにした“RD-191”は、ロシアの新型ロケット“アンガラ”の第1段。

さらに、それを改良した“RD-193”は、
将来“ソユーズ”ロケットに使用される予定になっていて、
改良型“アンタレス”に装備される“RD-181”は、
この“RD-193”の輸出版になります。


エンジンの変更は以前から検討されていたこと

オービタルATK社は、2014年10月の打ち上げ失敗より前から、
新しいエンジンの使用を検討していました。

それは、“AJ-26(NK-33)”の在庫が限られていることや、
再生産の見込みがまだ立っていないからでした。

当時からすでに“RD-181”は候補に入っていて、
2017年ごろから新エンジンを搭載した“アンタレス”が、
使われる予定になっていたんですねー

でも、打ち上げ失敗が起きたこと、
その原因が“AJ-26”にあった可能性が高いと見られたことから、
予定が早められたという経緯があります。

ただ、“AJ-26”を供給したエアロジェット・ロケットダイン社は、
推進剤タンクの中に乾燥剤が残ったままになっていたことが、
打ち上げ失敗の原因としています。

そのまま打ち上げたことでエンジンに入り込み爆発に至ったそうです。


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