宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽表面の爆発やジェット噴出は、黒点の合体で発生していた

2015年10月18日 | 太陽の観測
太陽で黒点が作られる際に見られる小規模な爆発現象やジェット噴出。

これらの仕組みが、
太陽観測衛星のデータとコンピュータシミュレーションを合わせた研究から、
調べられました。

すると、明るく細長い構造“ライトブリッジ”と周辺の磁場構造が、
現象を引き起こしていることが分かってきたんですねー


黒点の合体

太陽の表面に見られる黒点は、
ときに大規模な爆発現象“太陽フレア”を起こすことがあり、
地球環境にも多大な影響を与えることがあります。

その形成・成長時に磁場が関わっているのですが、
どのような働きをするかについては謎が多いんですねー

また、複数の小さな黒点が合体して、
大きな黒点に成長することもあります。

その際、黒点の間に現れるのが“ライトブリッジ”と呼ばれる、
明るく細長い構造です。

この“ライトブリッジ”が現れると、太陽表面より上空で、
爆発現象やジェット噴出が繰り返し発生することがあります。

今回の研究では、
日本の太陽観測衛星“ひので”とNASAの太陽観測衛星“IRIS”を用いて、
太陽黒点の共同観測を実施。

さらに、スーパーコンピュータによる詳細なシミュレーションと組み合わせて、
  どのように小黒点が合体して黒点が作られるのか?
  なぜ小黒点の間で爆発やジェットが起こるのか?
という謎に迫っています。


衛星による太陽観測

“ひので”による高精度の太陽表面磁場観測から分かったことは、
接近する2つの小黒点には垂直に立った強い磁場が存在すること。

そして、この磁場に挟まれた“ライトブリッジ”には、
水平な弱い磁場が存在していることでした。

また、“IRIS”による“ライトブリッジ”の上空観測データからは、
突発的な爆発やジェット噴出が、磁力線のつなぎ替え“磁気リコネクション”により、
繰り返し発生していることも分かりました。
(左)“ひので”による形成中の黒点の観測。
合体しつつある小黒点(暗い部分)の間に“ライトブリッジ”が現れている。
(右)黒点形成シミュレーションの結果。
観測とよく似た“ライトブリッジ”が小黒点の間に形成されている。


シミュレーションによる解析

一方、シミュレーション結果の詳しい解析からは、
太陽表面で小黒点を形成する2つの垂直な磁束が、
黒点形成に伴って太陽内部で互いに接近していく際、
弱い水平磁場を持ったプラズマのかたまりを挟み込んでいる様子が、
明らかになります。

このプラズマのかたまりこそが“ライトブリッジ”になります。

つまり、黒点形成の際に見られる“ライトブリッジ”は、
強い垂直磁場を持った小黒点(太陽内部から浮上してきた磁束)が、
合体する時に、弱い水平磁場を持ったプラズマを挟み込むことによって、
作られる構造だったんですねー

小黒点が合体する際に“ライトブリッジ”が作られ、
“ライトブリッジ”の水平磁場と小黒点の強い垂直磁場とが繰り返し、
“磁気リコネクション”を起こすことにより、
“ライトブリッジ”の上空で爆発現象やジェット噴出が発生する。

今回の研究は、
太陽内部における磁場の発達、太陽表面における黒点の形成、
太陽上空における活動現象(爆発やジェットなど)の密接な関わりを、
観測とシミュレーションの両面から、
初めて3次元的に解明した画期的な成果になります。

近年では、太陽以外の恒星の黒点についても研究が盛んになっているので、
太陽黒点を理解する必要性は、ますます高まっています。

観測機器やコンピュータシミュレーションの向上と共に、
今後さらに黒点形成や活動現象のメカニズム解明が進むといいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ “ひので”と“IRIS”がとらえた太陽コロナ加熱メカニズム