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中国ロケット新時代の幕開け

2015年10月01日 | 宇宙 space
中国が2015年9月20日に、新型ロケット“長征六号”の打ち上げに成功しました。

“長征六号”は、これまでの“長征”シリーズとは違い、
すべてが新しく開発されていて、きわめて高度な技術も使われているロケット。

なので、“長征六号”の打ち上げ成功により中国のロケットは、
新たな時代の幕開けを迎えたといえるんですねー


打ち上げから衛星の軌道投入

ロケットは日本時間の2015年9月20日8時1分に、
山西省にある太原衛星発射センターから離昇。

順調に飛行し、
打ち上げから約15分後に搭載していた計20機の小型衛星、超小型衛星を分離しています。

米軍の宇宙監視ネットワークも、
“長征六号”と衛星が、軌道に乗ったことを確認。

公表された軌道データによると、
衛星が乗っているのは、は高度約520キロ、
軌道傾斜角約97度の太陽同期軌道で、
そのうち1つの物体は高度392キロ×520キロまで下がっているんですねー

軌道を下げているのはロケットの第3段だと思われ、
大気圏に早期に再突入させて処分することを狙っているようです。

当初、打ち上げは9月19日の同時刻に予定されていたのですが、
技術的な問題により延期されたそうです。

搭載されていた衛星は合計20機で、100キロ級から数百グラム級まで様々。

いくつかの衛星からの電波も受信されているので、
打ち上げや軌道投入が正常だったことが裏付けられています。


小型衛星の打ち上げに特化

“長征六号”は小型衛星の打ち上げに特化したロケットで、
中国航天科技集団公司の上海航天技術研究院が開発しています。

ロケットは3段式で全段に液体燃料を使用。

全長は29メートル、第1段の直径は3.53メートルで、
第2段と第3段部分は2.25メートルと細くなっています。

打ち上げ能力は、高度700キロの地球を南北に回る太陽同期軌道に最大で1トン。

これは日本の“イプシロン”ロケットやインドの“PSLV-CA”ロケット、
ロシアの“ローカト”ロケットに近い性能なんですねー


高度な技術が使われたロケット

“長征六号”の第1段には、
液体酸素とケロシンを使う新開発ロケットエンジン“YF-100”を1基装備しています。

エンジンサイクルは2段燃焼サイクルで、
さらに酸素リッチでまわすという、きわめて高度な技術を使用。

“YF-100”は、中国が90年代にロシアから輸入した、
ソ連製の“RD-120”エンジンを参考に、設計されたものだと言われています。

“RD-120”は非常に高度な技術で造られているので、
仮に実物が目の前にあったとしても、簡単にコピーできるものではないはずです。

コピーできたということは、
中国のロケット技術力の高さを示していることになるんですねー

また、“RD-120”の推力が約834kNであるのに比べ、
“YF-100”は約1340kNと大きく向上しているので、別のエンジンも参考にしたか、
あるいは中国独自の技術が入っているのかもしれません。

第2段には“YF-115”という、こちらも新しく開発されたエンジンを装備。

“YF-115”もまた、液体酸素とケロシンを使い、
酸素リッチの2段燃焼サイクルを採用しています。

第3段は、衛星を最終的な目標の軌道まで運ぶ、上段としての役割りを持っています。

推進剤に過酸化水素とケロシンを使う小型のエンジンを4基装備。

また、姿勢制御スラスターやバッテリー、飛行制御用のコンピュータなども装備されていて、
エンジンの点火と停止を複数回繰り返しできる能力も持っているようです。

これは、正確な軌道に衛星を投入するための調整や、
複数の衛星を異なる軌道に投入するために必要なもの。

また詳しいことは分かっていないのですが、
写真を見る限りでは、発射台も従来と比べ近代化されているようです。

なのでロケットを運用するシステム全体にも、
大きく手が加えられているようです。


中国ロケット新時代の幕開け

これまで中国の主力ロケットは、
すべて1970年代に開発された“長征二号”を基に開発されてきました。

活躍してきた“長征三号”、“長征四号”などは、
“長征二号”を基に、タンクを大きくしたり、ブースターを装着したり、
また第3段を装備したりといった改良を重ねることで完成。

小型衛星から大型衛星、有人宇宙船や宇宙ステーションまで、
様々な人工衛星の打ち上げを行ってきたんですねー

でも“長征六号”は、
これら旧型長征シリーズとは、まったく異なる技術で開発されています。

特に酸素リッチの2段燃焼サイクルエンジンの実用化に成功したことは、
中国のみならず、世界のロケット開発史にとっても大きな意味をもつことになります。

また、中国は並行して大型ロケット“長征五号”、
そして中型ロケット“長征七号”の開発も進めていて、
“YF-100”は五号と七号で、“YF-115”も七号で使用されます。

まだ完全な互換性はないようですが、第1段や第2段機体の技術も、
それぞれ共有するモジュラーロケットになっています。

“長征五号”と“長征七号”の打ち上げが計画されているのが2016年。

今回の“長征六号”の成功により、
打ち上げに向けて大きく近付いたことになります。

長征五号、六号、七号が揃うことになれば、
中国の宇宙開発は、さらに活発になると見られています。

“長征六号”の成功によって、中国は新たな時代の幕開けを迎えた言えるんですねー


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