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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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記録更新は太陽への接近距離と太陽に対する速度! 太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”

2018年11月06日 | 太陽の観測
2018年8月12日に打ち上げらた、NASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”。

7年にも及ぶ探査ミッションは始まったばかりですが、10月末に太陽への接近距離と太陽に対する速度の2つで、人工物としての新記録を約40年ぶりに更新したそうですよ。


さらなる記録更新は2024年の最終接近

2018年8月12日に打ち上げられたNASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”の運用チームでは、探査機の速度や位置を計測するために、NASAの深宇宙ネットワークから探査機に繰り返し信号を送っています。

その信号が戻ってくるタイミングや、信号の特徴などを元にした計算から、太陽の表面から約4273万キロ(太陽の半径の約60倍)の距離を通過したことが確認されたんですねー

これは、人工物の太陽への最接近記録(約4343万キロ)を約40年ぶりに更新する記録。
更新前の記録は、1976年4月に太陽へ接近したドイツ・アメリカの探査機“ヘリオス2”が持っていました。

他にも分かったことがあります。

それは、探査機の速度(太陽に対する相対速度)が時速約24.7万キロを超えていたこと。
こちらも“ヘリオス2”が達成していた記録(時速24.7万キロ)を塗り替えたことが明らかになります。
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太陽へ向かって飛行中の“パーカー・ソーラー・プローブ”(イメージ図)。
“パーカー・ソーラー・プローブ”は10月31日から太陽への接近飛行を開始していて、第1回目となる太陽への最接近を11月5日に向かえます。

2024年に計画されている最終接近では、太陽の表面から600万キロほどしか離れていない距離を飛行し、速度は時速69万キロに達する見込みです。

そう、今回更新した記録は、今後“パーカー・ソーラー・プローブ”自身が更新することになるんですねー


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中緯度領域の2.5倍も赤道領域の自転が速かった! 太陽のような恒星の自転周期を調べてみて分かったこと

2018年10月16日 | 太陽の観測
質量や年齢が太陽と似た恒星の観測から、これらの星の自転速度は太陽と同様に、緯度の高いところよりも赤道の方が速いことが明らかになりました

ただ、太陽とは異なり、赤道付近の速度は中緯度に比べて2.5倍も大きいようです。


太陽の自転周期は緯度によって異なっている

太陽の自転周期は、赤道付近では約25日なんですが緯度が高くなるにつれて長くなり、極付近では約30日にもなります。

つまり、赤道付近の自転速度は緯度の高いところよりも速いということになるんですねー

これは太陽が液体(気体)で構成されているから起こる現象で、このように緯度によって速度が異なる回転を差動回転(微分回転)と呼びます。

もちろん、太陽と似たような恒星も同じように差動回転しているはずなんですが、これまで分かっていたのは赤道付近が高緯度部分よりも速いということ、詳細は不明なままでした。


星の内部を伝わる音波を利用して星の構造を調べる

今回の研究で用いられたのは、星の内部を伝わる音波から星の構造を調べる“星震学”の手法でした。

アメリカ・ニューヨーク大学アブダビ校宇宙科学センターの研究チームが、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”の観測データから、質量と年齢が太陽に似た13個の恒星の自転を正確に測定。

その結果、これらの恒星の赤道領域が中緯度領域の約2.5倍の速さで回転していることが初めて明らかになります。

赤道領域が速いという点では太陽と同じなんですが、太陽の場合には赤道の自転は1割ほど速いだけです。
この点で観測された星とは大きな違いがありました。

これまで数値シミュレーションで考えられていたのは、こうした恒星がこれほど大きな差動回転を維持することはできないということ。
そう、この結果は予想外のもので、理論の正当性が問われることになります。
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緯度によって自転速度が異なる。青い矢印が長いほど速くなる。


恒星の自転を理解すれば太陽嵐のことも分かってくる

太陽の自転は、太陽の磁場を発生させるうえで決定的な役割を果たしていると考えられていて、熱心に観測や研究が行われてきました。

でも、その詳細はまだはっきりと分かっていないんですねー

太陽の磁場は大規模な太陽嵐を引き起こすことが知られています。

太陽嵐は、しばしば人工衛星に障害を発生させたり、地球の送電線にダメージを与えたりすることがあるので、磁場発生の仕組みを理解することは、私たちの生活においても極めて重要なことといえます。

恒星の自転と地場の生成についての理解が進めば、磁場を生み出す物理的なプロセス“太陽のダイナモ機構”に関する情報を得るうえで、大いに役立つようですよ。


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太陽研究の大きな課題“コロナ加熱問題”を解明できるかも。太陽観測ロケット“FOXSI-3”が打ち上げと観測に成功!

2018年09月30日 | 太陽の観測
太陽観測ロケット“FOXSI-3”が、世界で初めて軟X線の低エネルギー域で太陽コロナを撮像分光観測することに成功しました。

わずか6分間の観測で、これまでに誰も手にしたことがないデータを手に入れることができたんですねー

これにより期待されるのが、高エネルギー現象やナノフレアの理解が進むこと。
太陽研究における大きな課題も解明されるかもしれませんよ。


“FOXSI-3”の打ち上げと世界初の観測

国立天文台や名古屋大学が研究を進めている“FOXSI”は、観測ロケットで太陽のコロナが放つX線を集光撮像分光観測する日米共同プロジェクトです。

その3号機になる“FOXSI-3”が、9月8日にニューメキシコ州のホワイトサンズ観測ロケット打ち上げ場から打ち上げられました。

“FOXSI-3”は最高到達高度約300キロの弾道軌道で約15分間飛翔。
X線輝度の異なる3つの太陽コロナ領域“活動領域”、“静穏領域”、“太陽の北極域”を約6分間観測しています。
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研究チームと“FOXSI-3”が搭載された観測ロケット。
“FOXSI-3”に搭載されているのは、硬X線域(主に4~20キロ電子ボルトの高エネルギー域)を観測する6本の望遠鏡と、軟X線域(主に0.5~10キロ電子ボルトの低エネルギー域)を観測する1本の望遠鏡。

この望遠鏡を使って、広い範囲のエネルギーのX線を観測して太陽コロナの超高温プラズマや、非熱的プラズマを詳細に調査できるようになっています。

このうち今回新たに採用されたのが軟X線域用の望遠鏡です。
1秒間に250枚の撮像が可能なカメラや、可視光線を遮りX線だけを透過するフィルターなどにより、世界で初めて太陽コロナの軟X線撮像分光観測に成功したんですねー
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“FOXSI-3”に搭載された7本の望遠鏡(左側)と7個の検出器(右側)。
“FOXSI-3”の科学的目的は、太陽コロナにおけるエネルギー開放・粒子加速・加熱などの高エネルギー現象の理解です。

そのうちの1つが“ナノフレア”がコロナ加熱へどのように影響しているかを調べること。

太陽の表面温度は約6000度なのに、数千キロ上空のコロナの温度は100万度という超高温になります。

この加熱メカニズムはまだ分からず… なぜ、こんなに高温になるのでしょう?
“コロナ加熱問題”と呼ばれるこの謎の解明は太陽研究における大きな課題になっているんですねー

  “ひので”と“IRIS”がとらえた太陽コロナ加熱メカニズム
    

“ナノフレア”は、通常の太陽フレア(爆発現象)の10億分の1程度の極めて小さなフレアです。
でも、この現象によって1000万度の高温のプラズマが生成されると考えられていて、コロナ加熱を引き起こす有力な候補の1つと見られています。

今回、わずか6分間の観測で、これまでに誰も手にしたことがないデータを手に入れることができました。

今後、このデータを解析すれば、“ナノフレア“とコロナ加熱の関係について何か分かってくるのかもしれません。

太陽コロナの中に1000万度の高温プラズマが恒常的に存在すれば、問題は一発で解決できそうですね。
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2017年8月に北米で見られた皆既日食のコロナ。


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初めて太陽のコロナへ突入する探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”が打ち上げ成功!

2018年08月18日 | 太陽の観測
NASAは太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”を2018年8月12日に打ち上げました。

“デルタIVヘビー”ロケットに搭載された“パーカー・ソーラー・プローブ”は、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から予定通りの軌道に投入され、打ち上げは成功。

7年にも及ぶ探査ミッションが始まった“パーカー・ソーラー・プローブ”。
最終的には太陽から600万キロまで近づき、太陽コロナや太陽風などを調査。初めて太陽の大気“コロナ”に突入し直接観測もするそうですよ。
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“デルタIVヘビー”ロケットによる
太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”の打ち上げ


太陽系の内側に向かう軌道

太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”が搭載されたのは、強力な打ち上げ能力を持つユナイテッド・ローンチ・アライアンス社の“デルタIVヘビー”ロケットです。

デルタIVヘビーは、主に大型で重い偵察衛星などの打ち上げに使われるロケット。
なのに、“パーカー・ソーラー・プローブ”の打ち上げに使われるのは、太陽に向かうには膨大なエネルギーが必要になるからです。

地球から太陽系の内側に向けて探査機を送り込むには、「太陽の引力を使って近づけばいい」っというほど簡単なものでなく、特殊な考え方が必要になります。

地球は太陽の周りを時速約11万キロで回っているので、地球上に存在する物質には大きな慣性力が存在します。

もちろんロケットにも慣性力が働くので、たとえ太陽に向けてまっすぐに探査機を打ち上げても、太陽からどんどん離れる軌道をたどることに…
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慣性力によって探査機は地球の公転方向に流されていく
この慣性力を打ち消すには、地球が公転する向きとは逆の方向にロケットを加速させてスピードを相殺すれば良いのですが、これは容易なことではないんですねー

それは、時速11万キロという速度にロケットを加速させることが極めて難しいから。

なんせ、アポロ計画で用いられた人類最大のロケット“サターンV”が出したスピードが時速4万キロ、火星を目指すのに必要な速度が時速4万7000キロ、冥王星を目指した探査機“ニュー・ホライズンズ”でもスピードは時速5万8000キロです。

つまり、地球の慣性力を打ち消すためには、これまでの2倍近くもの速さでロケットを打ち出す必要があり、これが極めて困難なことになります。

そこでNASAが取り入れたのが、天体の引力を利用する“重力スイングバイ”を行うことで機体の速度を上手く調節し、目的の周回軌道に探査機を載せるという方法です。

“パーカー・ソーラー・プローブ”の打ち上げは、8月12日にフロリダ州ケープカナベラル空軍基地の37番発射施設から行われ、約40分後に太陽に向かう軌道に投入。
  軌道への投入はロケットの第3段に装備されたスター48という固体ロケットにより行われた。

その後、“パーカー・ソーラー・プローブ”の状態が良好で動作も正常なのが確認され、打ち上げは無事成功となりました。

計画ではこの後、地球や金星を使ったスイングバイを行うことで、太陽を周回する長い楕円軌道に投入されることになっています。
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打ち上げ後の“パーカー・ソーラー・プローブ”が通る軌道


太陽に最も近づく最速の探査機

“パーカー・ソーラー・プローブ”という名前は、1985年に太陽風の存在を理論化した物理学者ユージン・パーカーから付けられました。

存命の科学者の名前が探査機に付けられたのはNASAのミッションでは初めてのこと。

今後、探査機は金星に向かいながらアンテナの展開や磁力計の伸展などを行い、9月初めから約1か月間にわたって観測機器の試験を行います。

その後、10月初めに金星の重力を利用した軌道調整“フライバイ(接近通過)”を行い、11月初めに太陽から約2400万キロまで接近。
この距離は太陽の高温大気であるコロナの内部にあたり、探査史上最も太陽に近づくものになります。

そして、科学観測の開始は12月。7年間のミッションの間に探査機はあと6回の金星フライバイを行い、計24回太陽の近くを通り過ぎながら観測を行うことになります。

探査機は徐々に太陽へ近づいていき、最終的には太陽の表面から約600万キロまで接近。
この時、探査機の速度は時速約70万キロになり、探査機史上最速の記録を打ち立てることになります。
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太陽を観測する“パーカー・ソーラー・プローブ”(イメージ図)


太陽の謎はけっこう多い

太陽は私たちにとって最も近くにある恒星なんですが、けっこう謎が多いんですねー

たとえば、太陽の表面温度は摂氏約6000度なのに、数千キロ上空のコロナは100万度にもなります。
なぜ、こんなに超高温になるのかという“コロナ加熱問題”の原因は、まだ分かっていません。
  “ひので”と“IRIS”がとらえた太陽コロナ加熱メカニズム
    

また、太陽系に吹く超音速の太陽風の駆動源や、太陽から放出され光速の半分以上もの速度に達している高エネルギー粒子の加速メカニズムも謎のまま…
  太陽風の玉突き事故? 大規模な磁気嵐が発生するメカニズム
    

研究者は60年以上もそれらの謎の解決に取り組んでいるのですが、答えを得るにはコロナへ探査機を送る必要があったということです。

ただ、太陽コロナを探査機で調べることは、宇宙探査で最も難しいミッションの1つになります。
それは、コロナの高熱から探査機を防護することが難しいからです。


コロナの高熱から探査機を守る

集められたデータは、太陽フレアの発生や宇宙天気の突発的な変化を予知するモデルの構築に使われます。

これらは衛星に不具合を起こし、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士たちを危険にさらし、そして地球上の電力系統を破壊する可能性があるからです。

ただ、観測データを得ることは簡単ではないんですねー

“パーカー・ソーラー・プローブ”による太陽への接近は24回も予定されています。
つまり、太陽の焼けつくような光にさらされながら飛行することになります。
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接近時の熱から探査機を守るもの、それが幅2.4メートルで厚さが11.4センチのディスク状の耐熱シールドです。

このシールドは、超軽量の断熱カーボンフォームを2枚の堅いカーボンファイバーのプレートで挟んだ構造をしていて、仮に片側のプレートに火炎を噴射しても、もう片方は手で触れるくらいに冷たいままだそうです。

探査機の内部はたった30度くらいにしかならないので、これまでの計測機器を高熱対応させることなく使うことができたそうです。


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50億年後、太陽が一生を終えると何が起こるの?

2018年06月16日 | 太陽の観測
約50億年後に太陽が寿命の終わりを迎えると何が起こるのでしょうか?

これまではっきりと明らかになっていなかったこの疑問。
どうやら暗い惑星状星雲が形成されるらしいことが最新の研究から分かってきたようです。


太陽質量の数倍以下の恒星が一生を終えると惑星状星雲になる

質量が太陽の数倍程度以下の恒星が寿命を迎えるとガスやチリの外層を放出します。

そして放出された外層部分は、後に残った高温の中心核に照らされて輝いて見えることになり、これを惑星状星雲と呼びます。

惑星状星雲のなかには数千万光年彼方にあっても見えるほど明るいものもあるのですが、この距離は惑星状星雲になる前の恒星であれば暗すぎて見えないほど遠くになります。
惑星状星雲“Abell 39”
ヘルクレス座の方向約7000光年の距離に位置する惑星状星雲“Abell 39”。
直径は約5光年、殻の部分の厚さは約3分の1光年になる。


太陽は見ることができる惑星状星雲へ

太陽もあと約50億年ほどすると一生を終えるとみられているのですが、最終段階がどうなるのかははっきりとは分かっていないんですねー

ただ、これまで考えられてきたのは、「太陽は軽すぎるので見ることができるほど明るい惑星状星雲にはならない」っということでした。

今回、ポーランド・ニコラウス・コペルニクス大学と英・ジョドレルバンク天文台の研究チームが行ったのは、恒星のライフサイクルを予測するモデルを新たに開発し、異なる質量や年齢の恒星から放出された外層の明るさを推測する研究です。

このモデルによると、外層を放出した後の星は従来のモデルに比べて3倍も速く温度が上昇することに…

その結果分かったことが、太陽のような低質量星でも、これまで考えられてきたよりもはるかに容易に明るい惑星状星雲が形成できるということでした。

研究チームの計算によると、太陽の質量は暗いながらも見ることが出来る惑星状星雲を作り出す下限近くで、太陽よりも数パーセント軽い星では惑星状星雲は見えなくなるそうです。

さらに、今回のモデルは約25年前に発見された観測事実の説明につながることになります。

観測から、様々な銀河に存在する惑星状星雲のうち最も明るいものの本来の明るさはどれも同じであることが知られています。

このことが示しているのは、太陽のような低質量星からも明るい惑星状星雲が作られることです。

でも、従来のモデルによる理論では、太陽の2倍程度より軽い星から作られる惑星状星雲は暗すぎて見えないと考えられています。

そう、今回の新しいモデルにより、この矛盾が解決できたんですねー

今回の研究により、観測が難しい遠方銀河内にある数十億歳の星の存在を調べる方法が見つかりました。

さらにもう一つ見つけることができたのが、太陽が一生を終えると何が起こるのか? という疑問の答えなんですね。


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