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渦巻き模様が伝える星の最後のメッセージ

2017年04月08日 | 宇宙 space
年老いた星の周囲に現れたガスの渦巻き模様。

この渦巻き模様の解析から、
直接観測することができない連星系の軌道運動が分かってきたそうです。


1つの天体に存在する異なる形状

太陽の8倍ほどよりも質量の小さい星は、
一生の最期に大きく膨らんで、“赤色巨星”と呼ばれるタイプの星になります。
  赤色巨星とは、太陽の1~8倍程度の質量しかない軽い恒星が燃料を使い果たして燃え尽きた状態。
  大気が膨張し、その大きさは地球の公転軌道半径から火星の公転軌道半径に相当する。
  肉眼で観察すると赤く見えるので「赤色」巨星と呼ばれる。

  太陽系の未来かも… 地球も白色矮星に切り裂かれてしまう?
    

“赤色巨星”から放出されるガスは、
進化が進んでむき出しになった中心星の芯から放たれる強烈な紫外線に照らされ、
“惑星状星雲”として見えるようになります。

“惑星状星雲”は、さまざまな形を見せる天体で、
外側は球対象に近く、一方で内側は非対称な形状を持ったものもあるんですねー

まったく性質の異なる形状が、なぜ1つの天体の中に共存するのでしょうか?

どうやら中心星が連星をなしていることが、
この不思議な形状を理解するカギになるようです。
  アルマ望遠鏡が描き出した、老齢の星ミラを取り囲む雲
    


電波観測から分かった連星系の軌道運動

この連星を実際に確かめるには、
星の周りに生じたパターンを詳しく解析することが重要な手がかりになります。

今回の研究では、
約3400光年彼方に位置する赤色巨星“ペガスス座LL星”をアルマ望遠鏡で観測。
  “ペガスス座LL星”は、
  直径が太陽の200倍以上に膨らんで盛んにガスを放出している、
  惑星状星雲になる一歩手前の段階にある年老いた星。


観測によって、
“ペガスス座LL星”から断続的に噴出したガスが放つ電波がとらえられ、
星の周囲に広がるガスの渦巻き模様がはっきりと描き出されました。

“ペガスス座LL星”の周囲に広がる渦巻状のガス。

そして、渦巻き模様の解析からは、この星が連星を成していること、
連星系の軌道運動を導き出すことができました。

シミュレーションと観測結果を比較してみて分かったことは、
渦巻き模様を作り出すためには、
連星の軌道が非常に細長い楕円になっていることが必要だということ。

とくに、観測画像にもはっきりと表れている渦巻き腕の枝分かれこそが、
細長い軌道を持つ連星系に特有の構造であることが突き止められたんですねー


ガスの形状から中心星の性質を知る

星の周囲を取り巻くガスには、一酸化炭素やHC3N分子が含まれれています。

アルマ望遠鏡による観測では、
この一酸化炭素やHC3N分子が放つ特定の周波数の電波をとらえていて、
ドップラー効果による周波数のズレから、ガスの運動を測定することができます。

これにより、星から放出されるガスの運動が、
伴星の運動に伴って変化していく様子を明らかにすることができました。

渦巻きの間隔の測定から、
“ペガスス座LL星”を含む連星系の周期は約800年と推定されています。

(左)ハッブル宇宙望遠鏡が2010年に公開した“ペガスス座LL星”の画像。(右)今回アルマ望遠鏡が観測した“ペガスス座LL星”。

星の直径の数千倍にも広がったガスの形状から、
中央部に隠されて、実際には直接観測できない連星の性質を調べる。

今回の成果は、この新しい研究手法を見つけたことにありますね。


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