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せいめい望遠鏡による赤色矮星の観測で、最大級の“太陽フレア”の約20倍もある“スーパーフレア”を検出! 太陽でも起こりうる現象。

2020年07月25日 | 太陽の観測
私たちの生活に大きな影響を及ぼすことがある太陽表面の爆発現象が“太陽フレア”です。
今回、京都大学“せいめい望遠鏡”による赤色矮星の観測から検出されたのは、最大級の“太陽フレア”の約20倍に達する“スーパーフレア”でした。

ただ、“スーパーフレア”は太陽でも起こりうる現象だと考えられているんですねー
なので、今回の観測・研究により期待されるのは、フレアが周囲に与える影響が解明されること。
太陽で“スーパーフレア”が発生すると、地球にも磁気嵐や放射線という形で大きな影響があるはず。
超巨大なフレアが起こる条件や兆候も分かるといいですね。


“太陽フレア”の10倍以上もある“スーパーフレア”

太陽表面における突発的な爆発現象“太陽フレア”は、ときに磁気嵐を引き起こして通信や人工衛星に影響を与えたり、オーロラを発生させたりするなど、私たちの生活にもかかわる現象です。

これまでの研究からは、数百年に一度ほどの頻度で、通常のフレアの10倍以上もある超巨大な“スーパーフレア”が発生する可能性も示唆されています。

“スーパーフレア”は太陽より温度が低い恒星でも頻発していて、近年では系外惑星の中心星で発生する“スーパーフレア”が、惑星や生命にどのような影響を与えるのかも注目されています。

ただ、発生頻度の低さと予測の困難さから、“スーパーフレア”の性質の解明に必要となる恒星の分光観測例は、これまで少ししかありませんでした。


“スーパーフレア”を分光観測するプロジェクト

現在、京都大学の研究グループが進めているのは、他の恒星で発生している“スーパーフレア”を分光観測するプロジェクト。
観測には、2019年春に観測を始めている京都大学岡山天文台の赤外線望遠鏡“せいめい望遠鏡”を用いています。

研究グループでは、太陽よりも温度が低い赤色矮星“しし座AD星”のフレア発生頻度が比較的高いことに注目。
8.5夜にわたってモニタリング観測を実施しています。
“しし座AD星”は、しし座の方向約16光年彼方に位置する赤色矮星(M型矮星)。M型矮星は表面温度が低く、フレアの発生頻度が比較的高いことが知られている。太陽の表面温度が約5800Kに対して、M型矮星の表面温度は2300~3800Kほどしかなく、“しし座AD星”の表面温度は約3200K。

さらに、赤外線天文学大学間連携“OISTER”や、中央大学の口径36センチ望遠鏡“SCAT”なども用いて、フレアの物理の解明に必要とされるX線から可視光線までの複数の波長で同時観測を実施しています。

その結果、検出されたのは12件のフレア現象。
その中には、最大級の太陽フレアの約20倍程度に当たる“スーパーフレア”が含まれていました。
“しし座AD星”で検出された“スーパーフレア”のイメージ図。黒点(星の表面の黒色の部分)の周辺で巨大“スーパーフレア”(白色)が発生している。(Credit: 国立天文台)
“しし座AD星”で検出された“スーパーフレア”のイメージ図。黒点(星の表面の黒色の部分)の周辺で巨大“スーパーフレア”(白色)が発生している。(Credit: 国立天文台)
観測データをモデル計算により解析してみると、“スーパーフレア”中に可視光線の増光に対応してHα水素線の幅が数分間に大きく広がり、元に戻る様子が明らかになります。

このような短時間で変化する現象の報告例はこれまでに無いこと。
“せいめい望遠鏡”の持つ高い精度によって得られた成果といえます。

この現象を説明するには、“スーパーフレア”の増光を引き起こす高エネルギー電子の量が、太陽フレアに比べて一桁程度大きい必要があることも分かりました。
(左)“しし座AD星”のフレアの中の、Hα水素線の幅や強度の時間変化(番号は右図の時間に対応する)。(右)波長毎の明るさの時間変化。(Credit: 京都大学)
(左)“しし座AD星”のフレアの中の、Hα水素線の幅や強度の時間変化(番号は右図の時間に対応する)。(右)波長毎の明るさの時間変化。(Credit: 京都大学)
さらに発見されたのは、Hα輝線では増光があるが、可視線連続光では増光のない予想より一桁以上弱いフレアがいくつもあることでした。

これまで恒星フレアの研究には、主に可視連続光観測が用いられてきました。
ただ、この発見が示唆していたのは、これまで可視連続光観測で見られていたものよりも、実際のフレアは発生頻度が高い可能性があることでした。

太陽表面で発生した大規模なフレアの影響で、これまでにも地球上で通信障害や大規模な停電などが起きたことがあります。
頻度は低いものの、太陽でも数百年に一度は“スーパーフレア”が発生する可能性があると考えられています。

なので、“スーパーフレア”の性質を解明することは、“スーパーフレア”によって発生しうる災害の被害を減らすことにもつながるんですねー

研究グループでは、今後も様々な恒星の観測を続けていき、いずれは太陽に似た恒星で発生する“スーパーフレア”の観測を目指すそうですよ。


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太陽探査機“ソーラーオービター”が太陽表面まで7700万キロの距離に到達

2020年07月13日 | 太陽の観測
これまで見ることができなかった太陽の両極域を観測するための探査機。
ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”が、6月15日に初めて太陽に接近し、表面まで7700万キロの距離まで到達したようです。


太陽の両極域を観測する探査機

2020年2月10日、アメリカ・フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から1基の“アトラスVロケット”が打ち上げられました。

このロケットに搭載されていたのはヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”。
“ソーラーオービター”は太陽を斜めに周回する軌道に投入され、これまで見ることができなかった太陽の両極域を観測するんですねー

これまで地球や人工衛星、探査機からは見ることができなかった太陽の両極域は、太陽活動を理解する上でカギになると考えられている部分です。
この領域が観測し易くなるので、今まで見たことのない画像、新しい発見が期待されます。

6月15日に“ソーラーオービター”は、初めて楕円軌道上で太陽に一番近づく点“近日点”を通過。
このときの太陽表面からの距離は、地球~太陽間の半分にまで迫る約7700万キロでした。

近日点通過の1週間で探査機が行ったのは、搭載された6基のカメラを含む10種類の科学機器の動作確認。
撮影された画像は7月中旬に公開される予定です。
太陽探査機“ソーラーオービター”の太陽初接近のアニメーション。(Credit: ESA/MediaLab)


2つの探査機による相互補完的な観測

今年初め、ハワイにある口径4メートルの望遠鏡“ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡”が、太陽をより高解像度で大きく撮影しました。

でも、地上からだと大気の影響を受けるんですねー
なので、宇宙から観測したときと比べて太陽スペクトルのほんの一部しか見ることができませんでした。

では、太陽を観測する探査機ではどうでしょうか。

2018年に打ち上げられたNASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”は、太陽の非常に近くまで接近して観測を行います。

ただ、太陽に近づき過ぎるので、カメラのセンサーがその高熱に耐えることができないんですねー
なので、“パーカー・ソーラー・プローブ”には、太陽を直接とらえるカメラは搭載されませんでした。

逆に、太陽を撮影できない“パーカー・ソーラー・プローブ”にとって“ソーラーオービター”のカメラを含む観測機器は極めて重要な助けになります。
2つの探査機による相互補完的な観測により、単独のミッションよりも多くの成果が得られるはずです。


惑星の重力や公転運動量などを利用した軌道変更

6月15日に初期フェーズを終えた“ソーラーオービター”は、2020年12月と2021年8月に金星の重力、2021年11月には地球の重力を利用して軌道変更“フライバイ”を実施。

これにより、初期運用軌道になる太陽を周回する長楕円軌道に投入され、黄道面、つまり惑星の公転軌道とほぼ同じ面上を移動することになります。
科学観測の開始は2021年11月を予定しています。
惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、探査機の速度や方向を変えることができる。燃料を消費せずに軌道変更と加速ができ、このような飛行方式をフライバイあるいはスイングバイという。
太陽を中心に描いた太陽探査機“ソーラーオービター”の軌道。(Credit: ESA/ATG MediaLab)
その後、金星へのフライバイにより、“ソーラーオービター”は地球やその他の惑星が太陽の周りを回る公転面から離れ、太陽を斜めに周回することに。
高緯度から太陽を観測することで、観測史上初めて太陽の両極をはっきりととらえることになります。

太陽極域の観測は、太陽磁場のふるまいを理解することにもつながります。

さらに、磁場によって発生する太陽風や、太陽風が太陽系全体の環境に及ぼす影響についても研究が発展するはずです。

最終的に“ソーラーオービター”が接近するのは、太陽から水星までの距離よりも短い4200万キロの位置。
ちなみに“パーカー・ソーラー・プローブ”は、2024年に太陽の表面から600万キロほどしか離れていない距離を飛行するようです。


2020年7月17日_追記
近日点の通過中に撮影した太陽の姿

“ソーラーオービター”が6月15日に近日点(約7700万キロ)を通過したときの画像が公開されました。
近日点通過の1週間で撮影された画像(Credit: NASA / ESA)
近日点通過の1週間で撮影された画像(Credit: NASA / ESA)
“ソーラーオービター”には、6つのイメージングセンサーが搭載されていて、それぞれが太陽の様々な表情を撮影します。

なかでも、紫外線撮像装置“Extreme Ultraviolet Imager(EUI)”がとらえた画像には、研究者たちが“キャンプファイヤー”と呼ぶ太陽表面の小さな爆発や非常に小さな規模の太陽フレアらしきものが写っていました。

研究者たちが考えているのは、“キャンプファイヤー”が太陽表面よりも外側のコロナ部分の方が300倍も高温になる理由を説明するものだということ。

この現象を詳しく理解するのに必要になるのが、“キャンプファイヤー”部分の温度を正確に調査することです。
もちろん“ソーラーオービター”には、そのためのスペクトル撮像装置が搭載されているので、謎の解明に向けて研究者たちの期待は高まっているようです。
かつていないほど接近した“ソーラーオービター”が初めて見た太陽(Credit: ESA/ATG MediaLab)
通常、探査機が撮影する最初の画像は、搭載している機器の動作試験を兼ねたものになります。
なので、最初の撮影で何らかの発見をするとは期待されていないんですねー

最初の段階から“キャンプファイヤー”のような画像をとらえ、最高のスタートを切った“ソーラーオービター”ですが、これまでに前例のない困難にも遭遇しています。

それは、新型コロナウィルスのパンデミックによるもの。
ドイツ・ダルムシュタットにあるヨーロッパ宇宙運用センターの管制チームの多くが、1週間以上にわたり在宅勤務に移行せざるを得なかったことです。
その間は、必要最低限の人数での監視操作が求められ、重要な操作もリモートから実行していたそうです。

現在、“ソーラーオービター”はすべての機能が正常なことが確認され、計画通りにミッションを継続中のようですよ。


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初めて太陽両極を観測する探査機“ソーラーオービター”が打ち上げに成功 いまだに謎の多い現象の解明にどこまで近づけるかな?

2020年03月06日 | 太陽の観測
2月10日、ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”が打ち上げられました。
“ソーラーオービター”は太陽を斜めに周回する軌道に投入され、これまで見ることができなかった太陽の両極域を観測するんですねー
太陽の両極域は、太陽活動を理解する上でカギになると考えられている部分。
なので、見たことのない画像や新しい発見が期待できますよ。


初めて太陽両極を観測する探査機

日本時間の2月10日13時3分、ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”が打ち上げられました。

“アトラスVロケット”に搭載された“ソーラーオービター”は、アメリカ・フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地を離床。
ロケットは順調に飛行し、14時24分には太陽電池パネルが正常に展開されたことを示す信号をドイツの運用センターが受信、打ち上げの成功が確認されます。

打ち上げ後の最初の2日間で“ソーラーオービター”が行うのは、観測装置の準備とアンテナの展開。
アンテナは地球と通信するとともに、観測データを集めるためのものです。

“ソーラーオービター”には10種類の観測装置が搭載されていて、太陽の大気や太陽風、磁場などを調査します。

観測手法は探査機の周囲の電場・磁場などの測定と、太陽とそこから噴き出してくる物質の計測とリモート・センシングの2つ。
2021年11月末まで“ソーラーオービター”は周囲の情報を測定しつつ、リモート・センシングに関する機器のチェックを行いながら太陽に近づくことになります。

その間に行われるのが3度の軌道変更“フライバイ”です。2020年12月と2021年8月に金星の重力、2021年11月には地球の重力を利用することになります。
  2年以内に初期運用軌道である太陽を周回する長楕円軌道に投入されることになる。

その後、特に重要となる金星へのフライバイを行います。
このフライバイによって、探査機は地球やその他の惑星が太陽の周りを回る公転面から離れ、太陽を斜めに周回することになるんですねー
  惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、探査機の速度や方向を変えることができる。燃料を消費せずに軌道変更と加速ができる。このような飛行方式をフライバイあるいはスイングバイという。

これまで地球や人工衛星、探査機からは見ることができなかった太陽の両極域は、太陽活動を理解する上でカギになると考えられている部分です。
この領域が観測し易くなるので、今まで見たことのない画像、新しい発見が期待されます。
太陽探査機“ソーラーオービター”の打ち上げ~太陽への旅


2つの太陽探査機による相互補完的な観測

“ソーラーオービター”には摂氏500度に耐えられる熱シールドが備わっています。
これは、太陽から約4200万キロ(太陽~地球の約1/4の距離)の距離を保って周回するからです。

太陽に最も近い水星の公転軌道のすぐ内側、この過酷な環境で“ソーラーオービター”は摂氏500度の温度と、太陽から放出される高エネルギーの粒子に晒されることになります。

太陽両極の観測などで期待されるヨーロッパ宇宙機関の“ソーラーオービター”ですが、実はNASAも大きく協力しています。

2018年に打ち上げられたNASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”との相互補完的な観測では、異なる2つの太陽探査機が協力してデータを集めることになります。
これにより、単独のミッションよりも多くの成果を得られることが期待できます。
  “ソーラーオービター”には太陽を直接撮影できる6つの機器が搭載され、“パーカー・ソーラー・プローブ”の膨大なデータを補完することになる。太陽の非常に近くまで接近する“パーカー・ソーラー・プローブ”では、カメラのセンサーがその高熱に耐えることができない。太陽を撮影できない“パーカー・ソーラー・プローブ”にとって、“ソーラーオービター”の観測機器は極めて重要な助けになる。

太陽で高速プラズマ雲の放出“コロナ質量放出”が起こると、数日後に地球に到達して、地磁気が一時的に弱まる現象“磁気嵐”が発生することがあります。

“磁気嵐”は規模が大きくなると、極域で見られるオーロラが活発になるだけでなく、低緯度の地域でもオーロラが見れることも…
さらに、大規模な“磁気嵐”は、私たちの生活とも密接に関連していて、地上の送電設備や人工衛星へ障害を与えることもあります。

変化する太陽のふるまいを司る隠された力や、太陽が地球に及ぼす影響などなど…… 
多くの事柄がこれまで以上に明らかになり、いまだに謎の多い現象の解明に近づければいいですね。
2つの太陽探査機のイメージ図。(左)ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”、(右)NASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”
2つの太陽探査機のイメージ図。(左)ヨーロッパ宇宙機関の太陽探査機“ソーラーオービター”、(右)NASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”


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私たちの生活に深刻なダメージを与えるスーパーフレア。実は太陽でも起こりうる現象だった。

2019年06月21日 | 太陽の観測
若い恒星でしか起こらないと考えられてきた“スーパーフレア”が、太陽でも起こりうることが統計的な研究から分かってきました。

私たちの生活にも大きな影響を及ぼすことがある太陽表面の爆発現象“太陽フレア”。
もし、太陽で通常の数百から数千倍もの大規模爆発“スーパーフレア”が起これば… 地球は無事でいられるのでしょうか。


“太陽フレア”より大規模な爆発現象“スーパーフレア”

太陽の大気で発生する爆発現象“太陽フレア”では、磁気エネルギーが解放されて膨大な光や熱が放出されます。

大規模な太陽フレアが発生すると地球付近にも影響が及ぶことがあり、オーロラが見られたり、人工衛星や通信、送電施設に被害が生じたりします。

太陽以外の恒星でもフレアは発生していて、記録に残る最強の“太陽フレア”の数百倍から数千倍ものエネルギーを発生させる“スーパーフレア”を起こすものもあります。

こうした“スーパーフレア”は、ほぼ若く活発な恒星にしか起こらず、太陽では発生しないと考えられてきました。
○○○
太陽に“スーパーフレア”が発生すれば地球にも大きな影響が及ぶ。


“スーパーフレア”は太陽でも起こりうる現象

今回の研究でアメリカ・コロラド大学ボルダー校の研究チームは、太陽と同タイプの恒星で発生した43の“スーパーフレア”現象を統計的に調査。
研究には、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”やアメリカ・アパッチポイント天文台の観測データが使われています。

その結果分かってきたのが、若い星ほど“スーパーフレア”を起こしやすいが、誕生から46億年経った太陽のような星でも全く起こらないわけではないということ。

研究チームによると、若い星は毎週のように“スーパーフレア”をお越すのに対し、太陽のような星の場合には数千年に1回ほど…
でも、今後100年間で起こる可能性はゼロではないようです。

1000年前なら太陽で“スーパーフレア”が起こったとしても綺麗なオーロラが見られるぐらいで大した問題は無かったでしょう。

でも、現在の地球だと私たちの周りは電子機器だらけなので、生活に深刻なダメージを受けることになりますね。


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謎の多い太陽コロナ現象に挑戦! 観測ロケット“FOXSI-3”の軟X線データが公開

2019年02月01日 | 太陽の観測
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日米共同の観測ロケット“FOXSI-3”で得られた太陽の軟X線観測データが公開されました。

このデータは、毎秒250枚という高い時間分解能の撮像分光観測を世界で初めて行って得られたもの。
わずか6分間の大気圏外飛行中の観測で得られたものですが、太陽コロナについての理解が進むことが期待されているんですねー


太陽系で最大の爆発現象

太陽を取り巻くコロナは、100万度以上という極めて高温で希薄なプラズマからなる大気です。

太陽コロナの中では様々な現象が起こっていて、代表的なものは“太陽フレア”と呼ばれる太陽系で最大の爆発現象になります。

フレアが発生すると周囲の温度は数千万度まで上昇し、プラズマ粒子は光速近くまで加速。
この高エネルギー粒子は太陽風として地球にも到達し、地球環境や送電線・電力系統に影響を与えたりします。

特に、宇宙空間にある衛星や巨大なアンテナとして働く送電線の被害が起こる可能性が高いようです。


宇宙に出てX線を観測する

100万~数千万度の温度を持つコロナはX線を最も強く放射しています。
なので、太陽コロナを研究するには、太陽から放射されるX線をとらえる必要があります。

でも、X線は地球の大気に吸収される性質があるので、観測するには気球や観測ロケット、人工衛星を使って宇宙空間に出る必要があるんですねー

また、X線は通常の鏡やレンズを透過してしまうので、撮像や分光に必要になるのが特殊な望遠鏡やカメラです。
さらに、コロナの性質を詳細に知るには、X線の空間分布・時間変化・エネルギー分布を知る必要もあります。

つまり、高いダイナミックレンジ(明るい場所も暗い場所もよく見えること)・高い空間分解能・高い時間分解能・高いエネルギー分解能の観測を実現しないといけません。

これまでの太陽観測では、数百万度のプラズマが放射する“軟X線”の波長で、この4つを同時に満たすような観測は行われたことがありませんでした。

たとえば、日本の太陽観測衛星“ようこう”や“ひので”のX線望遠鏡です。
この望遠鏡は、空間分解能は高いものの、1枚の画像を撮像するのにかかる時間が長すぎるので、太陽コロナで発生する数十秒~数分という時間スケールの現象をとらえる撮像分光観測は不可能でした。
  “ひので”と“IRIS”がとらえた太陽コロナ加熱メカニズム
    

新しい軟X線観測装置を開発

今回の研究では、裏面照射CMOSセンサーを採用することで、1秒間に250枚もの高速度撮像が行える軟X線観測装置“ProEnIX”を新たに開発しています。

昨年の9月8日、研究チームはこの装置を日米共同の太陽観測ミッション“FOXSI-3”の観測ロケットに搭載。
観測では、軟X線での集光撮像分光観測(光を焦点面に集め、画像を撮り、同時に光子のエネルギー分布も得る観測)を高い時間分解能で行うことに初めて成功しています。

今回公開された“FOXSI-3”の太陽観測データは、太陽からのX線光子1個1個を検出・測定した世界初の成果になります。

“ProEnIX”の高速度カメラは1枚あたり50個程度のX線光子を検出していて、このX線光子のデータを重ね合わせれば、点描のように太陽の軟X線画像を描くこともできます。
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“FOXSI-3”に搭載された高速度軟X線観測装置“ProEnIX”カメラの全データを用いて描いた太陽。
また、“ProEnIX”カメラで高速連続撮像が可能になったので、10秒という極めて短い時間スケールでのコロナの時間変化をとらえることにも成功。
さらに、X線光子のエネルギーごとの検出数からコロナのスペクトルも得られました。
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“FOXSI-3”の“ProEnIX”カメラで得られた軟X線集光撮像分光データ。
(a)が撮像された画像。画像上の白い点が検出されたX線光子を示す。
この画像を重ね合わせることで、(b)のような太陽の軟X線画像が得られる。
(c)は検出された光子の数を10秒ごとに合計して得られた軟X線の時間変化の様子。
(d)は検出された光子をエネルギー(信号強度)ごとに合計して得られた軟X線スペクトル。
現在研究チームでは、今回公開されたデータを使った解析作業を進めているので、謎の多い太陽コロナの現象についての理解が進むといいですね。


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