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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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太古の海の痕跡? 生命生息の可能性は? 火星の地下に湖らしいものを発見!

2018年08月14日 | 火星の探査
火星に水があるということは知られていますが、今回はもっと大きな水のお話し。

サイエンス誌に掲載された論文によると、火星の南極の地下約1.5キロの深さに幅約20キロの湖があるそうです。

地球以外では木星や土星の衛星に地下海があることが分かっているのですが、これまで火星でまとまった量の水は見つかっていませんでした。

なので湖の存在が確定すれば、太古の火星にあった海の水の行方について謎が解けるかもしれません。

さらに、この湖は人類が火星に移住する際の水源になることが期待できるのと、地下の湖は地球外生命探索の最有力候補にもなるんですねー
○○○
周回軌道上から見た火星の南極の極冠。
レーダーを使った観測から、その地下に液体の水がある可能性が出てきた。


火星は海に覆われていた

数十億年前の火星は、おそらく地球と同じように温暖で表面は海に覆われていました。

でも今は、赤い乾ききった砂漠の惑星になっています。
では、かつての火星の海にあった水はどこにいったのでしょうか?

火星ではこれまでに何度か水が発見されています。

でも、大気中に漂っていたり、永久凍土層や極冠に閉じ込められていたり、季節ごとにクレーターの斜面からしみ出していたりと、一時的なものや手の届かないものばかりでした。

さらに、その量は古代の火星の海を満たせるような量ではないんですねー

そう、行方不明の水の一部が地下の帯水層に閉じ込められている。っと考えると疑問は解けることになります。
  火星に深さ1.6キロの海があったかも、約40億年前に…
    


29回にわたるレーダー観測

21世紀になってから、人類は地下の水を見つけることができる探査機を火星に送り込んできました。

その1つが2003年から火星の軌道を周回しているヨーロッパ宇宙機関の火星探査機“マーズ・エクスプレス”です。

“マーズ・エクスプレス”が搭載している観測装置“MARSIS”は、レーダーパルスを利用して火星の地下を探っていて、2008年には非常に明るい反射を発見。
  “MARSIS”は低周波数の電波を火星に照射し、跳ね返ってきた反射波を調べることで、
  地中にあるものを観測できる。


火星の南極付近にある氷床が何層にも重なっている領域を詳細に観察することになります。

それから数年間は役に立つデータを収集できなかったのですが、2012年の観測から全体像を描くのに十分なデータを収集できるようになります。
  研究に必要な情報が揃うのはそれから3年後、29回に及ぶレーダー観測の後。

“MARSIS”のデータ解析は容易ではなく、それからの2年間、研究チームは地下の湖以外の可能性を1つ1つ否定していことになります。
○○○
火星の中緯度地方のあちこちにある浸食された崖では、
地表から1~2メートルの深さに、青みがかった色をした層が帯状に見えている。

さらに、火星での反射率のパターンを地球で見られるパターンと比較することで、反射は地下にある湖のものだと確信していきます。


緩い泥の可能性もある

今回の発見から連想するものに地球の“ボストーク湖”があります。

“ボストーク湖”は南極大陸の氷の下(約4キロ)にあり、数種類の微生物が繁殖していることが知られているので、火星の地下の湖にも生物に適した環境があると考えることができます。

でも、火星の地下の湖が本当に湖であるとは考えていない人もいます。

研究チームでも、くぼ地を満たしているのは水ではなく、水で飽和した堆積物(ゆるい泥)だという可能性を否定はしていませんでした。

ただ、その性質を特定するには別の観測装置が必要に…
そう、情報が足りないので、湖が泥沼か断定することができないんですねー

実は、火星の周回軌道にはレーダーで地中を探れる探査機がもう1機あります。
2006年から火星の軌道を周回しているNASAの“マーズ・リコネサンス・オービター”です。

ただ、この探査機が話を少々ややこしくしてしまいます。

“マーズ・リコネサンス・オービター”は火星の南極の堆積物の層を含め、広大な範囲をレーダーで探査しています。

でも、搭載されているSHARADという観測装置では反射物はとらえられず…
そう、地下に湖のようなものは見つけていないんですねー

なぜ、観測結果に違いがでたのでしょうか?

ここで考えられるのが、“SHARAD”のレーダーと“MARISI”のレーダーが使う波長の違いです。

塩水は金属を除けば、おそらく最強の電波反射体になります。
湖なら表面は鏡のように滑らかなので、その反射はSHARADでとらえられるはずです。

“SHARAD”でとらえられないということは、表面がデコボコしているもの… そう水で飽和した堆積物なのかもしれません。


湖から考えられる色々なこと

火星の地下に湖があるとすると、この小さな塩水の水溜りは、火星の失われた海の謎の解明に役立つ可能性があります。
  火星の水については、極冠で融けた水は地下に帯水層として蓄えられ、
  水の大部分は南の高地から北の低地に流れているとする理論がある。

○○○
黒っぽい色をした盆地と白っぽい色をした極冠は、火星の際立った特徴。

さらに、地下には鉱物があるので両極地方に新しい火山でもあれば、湖という環境に栄養分とエネルギー源が揃うことになります。

そう、地下の湖は生命が生息できる可能性が高く、生命探査のターゲットになるんですねー

ただ、火星の両極地方は惑星を保護するための特別な領域にあたるので、この場所を訪れることは簡単なことではありません。
  国連は、生命が生息している可能性のある惑星間環境の汚染を防ぐために、
  厳しい規制を行っている。


地下の湖は、人類が火星への定住を考えるときに、すぐにではなくてもいつかは利用したい資源でもあります。

最初に火星に降り立った人々が、地下何キロにも達するような穴をあけるとは考えられないので、他のもっと表面に近いところにも湖を探すはずです。

将来のベースキャンプ建設の候補地のためにも、もっと地下の湖のことを知る必要がありますね。


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太陽からの紫外線が火星の大気散逸に及ぼす影響

2018年02月24日 | 火星の探査
重力も弱く磁場もない火星。
なので火星の最も外側の大気は太陽風によって簡単に宇宙空間へ流れ出してしまいます。

今回はこの大気の散逸過程において、太陽の紫外線が重要な役割を果たしている可能性があるというお話しです。
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岩石惑星の大気

地球は適度な大気が存在していて生命が存在するのに適した環境の惑星です。
でも、火星は長い歴史の早いうちに大量の大気を失い、温暖で湿潤な環境から現在の冷たく乾燥した惑星へと変化してしまいました。

また、金星には厚い大気が存在しているので、高温高圧でとても生命が存在できるような惑星ではありません。

このように太陽系内にある岩石惑星の大気は、それぞれ異なる状態にあるんですねー
そして、その原因を解明することは、惑星の環境を生命に適したものにする条件を知る鍵になったりします。


イオン化した惑星大気

地球には内部磁場が存在し、それによって地球の周囲に生み出される磁気圏が荷電粒子の流れである太陽風から大気を守ってくれます。

一方、火星や金星には内部磁場がないので、地球にも存在する電離層が太陽風を妨げる役割を果たすことになります。

電離層は太陽からの紫外線が惑星大気中の原子や分子から電子を剥がして作られる領域で、この層と太陽風とが作用して誘導磁気圏を生み出し、惑星の大気を太陽風から守ります。
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太陽風により磁気圏が形作られる様子(イメージ図)。
金星(上)、地球(中)、火星(下)

今回の研究で明らかになったのは、火星の大気が失われる現象において、太陽の紫外線放射の影響がこれまで考えられていた以上に重要であるということ。

  スウェーデン宇宙物理研究所が、
  ヨーロッパ宇宙機関の火星探査機“マーズエクスプレス”による14年間の観測データを用いて
  明らかにした。


これまでイオンの散逸は、太陽風のエネルギーが誘導磁気圏というバリアを通って電離層へ効果的に運ばれるため起こると考えられてきました。

でも今回明らかになったのは、太陽からの紫外線放射によるイオンの生成増加によって、大気が太陽風から守られているということ。

そう、イオンの散逸にエネルギーはほとんど必要なく、火星の重力が弱いので大気が失われているんですねー

太陽からの紫外線で生じるイオンの量は、太陽風によって失われる量を上回ります。
ただ火星では、イオンの発生によって大気が太陽風から守られても、重力が地球の約3分の1しかないので、イオンは簡単に宇宙空間へと逃げ出してしまうということです。

強い太陽風によって追加のエネルギーが注がれるかどうかはあまり関係ないようです。

これまでに失われてきた火星の大気に対する太陽風による直接的な影響はとても小さなもので、むしろ太陽風はすでに逃げ出している粒子の加速に弾みをつけるという形で影響を及ぼしていただけなのかもしれません。

紫外線でイオン化した惑星大気の保護という点では、磁場の役割は重力ほど大きなものではないんですね。


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火星に似た環境でもジャガイモ育つようですよ

2017年05月11日 | 火星の探査
火星でもジャガイモは栽培できる?

映画オデッセイではシェルターの中で栽培していましたが、
南米ペルーで進められている実験で、今後の成果に期待できる結果が出たようです。


火星環境で育つジャガイモ

火星の自然環境に似せた条件でジャガイモを栽培してみる。

この実験は、南米ペルーの首都リマにある国際ポテトセンターが、
NASAの協力を得て行っているもの。

火星の大気環境を模した環境で、ジャガイモの生育実験を実施しています。

もちろん目的の一つは、
宇宙飛行士が火星でジャガイモが生産できるかを確かめることになります。
  いくつかの品種を実験環境に植えつけて育ちの良さの比較を、
  いま研究チームが進めている。


火星でジャガイモ栽培というと、映画オデッセイでのエピソードが思い当たりますよね。

でも、あれはハビッタット(居住空間)内、
つまり地球環境を模した環境でのジャガイモ栽培なので、きちんとやれば育ってあたりまえ。

一方、研究チームが進めているのは素の火星環境。
つまり、大気全体の量が少ないうえに、二酸化炭素の割合が非常に高い状態での実験なんですねー


育成実験

植物は光が当たっていれば、光合成によって水と二酸化炭素から糖類を生み出し、
その過程で樽俎を放出します。

でも、日の当たらない夜間では逆に酸素を消費します。
一方、火星では水がほとんどなく気温も低いので、夜間に野ざらしにすれば、
映画に出てきたように、あっという間に凍結してしまうはずです。

ところが研究チームでは、ジャガイモの種類によっては、
極限環境に適応可能な遺伝子を備えるものがあり、それをすでに見つけているそうです。
  初期段階の実験では、ペルー南部にある高塩分濃度の土壌を使って、
  塊茎がきちんと育つことを確認している。


実験の期間は2月14日~3月5日で、火星の環境が再現されたのは、
リマにある工科大学UTECの技術チームが開発した小型人工衛星の内部。

研究チームによると、
ジャガイモの栽培を試してみると、生育が確認されたそうです。


将来の気候変動にも有効

ジャガイモには、たくさんの収穫ができて高カロリーという利点があります。

より少ない農地で、より多くのカロリーを作り出せるという点では、
理想的ともいえる植物なんですねー

なので、火星と似た環境でもジャガイモが栽培できる可能性が示されたということは、
気候変動の影響下や、過酷な環境での食糧供給実現に向けた明るい兆しの1つといえます。

気候変動の影響を受ける地域での食糧安全保障の強化は、
火星での有人探査や、将来実現されるかもしれない火星への移住でも、
有利な材料になります。

なんせ、現地で食料を調達できるのは大きいです。

国際ポテトセンターでは、
気候変動の影響を受ける地域での食糧安全保障を強化するため、
さまざまな将来性の高い品種を開発しているそうです。

今回の実験で使用した土は、ペルー南部にある極度に乾燥したもので、
地球上で最も火星の土壌の条件にもの。

国際ポテトセンターによると、この実験は今後5年にわたり継続される予定です。

火星だけでなく、将来の気象変動が悪化した地球で、
人類を生き延びさせてくれるのは、どんなジャガイモなのか?

水害に強いジャガイモが見つかればポテトチップスの生産も安泰(^_^)
品種も気になりますが、「おいしいジャガイモ」が見つかればいいですね。


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火星を居住可能にする? 構想中の“人工磁気フィールド”は厚い大気や海を復活させるかも

2017年04月25日 | 火星の探査

地球で私たちが生活することができ、
太陽系の他の惑星への移住を難しくしている理由のひとつに“磁気圏”があります。

それは、地球のようにある程度の磁気を帯びていないと、
宇宙から降り注ぐ太陽風を防ぐことができないからです。

そこでNASAは、火星に人工磁気フィールドを作って、
居住可能な環境に作り変えることを構想しています。
  人工磁気フィールドの生成には、
  1~2テスラほどの磁束密度が必要だとされています。

この構想では、火星のラグランジュL1地点に強力な磁気双極子を設置し、
太陽から吹き付ける粒子を、まるで盾のように防ぐことになります。

そして、火星の大気が増える環境を作り出すんですねー
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大気により火星が暖かくなると地下の氷が溶け出し、
海を復活させるかもしれません。
火星では大気によって水が維持される

かつての火星は、地球のように十分な磁気圏を持っていたと考えられています。

この磁気圏により、火星には大気や海があったようなんですが、
約42億年前の磁気圏の消失と共に宇宙線によって大気が削り取られ、
現在のような赤い乾ききった惑星になったようです。
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もちろん、この計画で火星を住み良い環境にするには、
長い年月が必要なことが予測されます。

現在、NASAやスペースXなど進めている有人火星探査やマーズ・ワン社の移住計画など、
火星は少しずつですが身近な存在になってきてはいます。
  民間企業のスペースX社が火星探査を2018年に実施へ!
    

なので、将来的には人工磁気フィールドが、
火星への移住の解決策になるのかもしれません。

まぁー この計画はまだ想像的なアイデアなんですがね…


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着陸地点探し、キーワードは過去に水が存在していたこと NASAの次期火星探査

2017年02月27日 | 火星の探査
“キュリオシティ”や“オポチュニティ”が探査を続けている火星に、
新しい探査車が加わることになりそうです。

それは2021年の2月頃。
NASAが進めている火星探査計画“Mars 2020”により、
新しい探査車が“生命が存在した痕跡”の調査を始めるんですねー。
3箇所に絞られた着陸地点。
探査車が走行する適性も考慮されている。


水が存在していた場所

今回発表されたのは、
火星のどの地点に探査車を降下させるかについてでした。

発表されたのは3箇所に絞られた着陸地点、
グセフ・クレーター内のコロンビア・ヒルズ、
過去に湖があったと推測されるジュゼロ・クレーター、
そして過去に火山活動があった北東流砂でした。
ジュゼロ・クレーターには、
水が長期間存在したことで粘土の厚い層があると思われる。
(探査機がとらえた分光画像)

これらの地点に共通するのは、
すべて過去に水が存在したことが期待されてる場所ということ。
もちろん生命が存在した痕跡を探すためです。
グセフ・クレーター内のコロンビア・ヒルズ。
(2004年に探査車“スピリット”が撮影)


生命体の発見に特化した装備

“Mars 2020”では、費用を節約するため多くのハードウェアが、
2012年8月から活動を続けている探査車“キュリオシティ”と共通化されています。

“Mars 2020”のミッションは生命体の発見に重点をおいているので、
“キュリオシティ”の設計と一部の余剰部品を活用することで、
開発のコストや日数を抑えているんですねー

その分、ミッションに特化した機器を装備することが出来るわけです。
新探査車“Mars 2020”(イメージ図)。

“Mars 2020”が火星に到着するのは2021年の2月。

土壌サンプルを採掘したり、さまざまな観測機器を使って、
火星から“生命が存在した痕跡”を探すことになります。

さらに、将来の有人ミッションで、
周囲から酸素や、その他の物質を手に入れられる可能性の調査、
そして期待されるのが火星からのサンプルリターンです。

“Mars 2020”では、
採取したサンプルを将来的に地球へ持ち帰ることも計画されています。

打ち上げは2020年の7月。フロリダのケープ・カナベラル空軍ステーションから、
ユナイテッド・ローンチ・アライアンスのアトラスVロケットで行われる予定。

そして探査車の着陸地点が決まるのは、打ち上げの1年から2年前になるそうです。

それまで科学者たちは、
この地点が探査車による探査に最適なのかの議論を続けることになります。


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