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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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衛星フォボスの表層には、火星と小天体が衝突して運ばれた物質が積もっている! “はやぶさ2”に続くサンプルリターン計画にも期待

2020年02月08日 | 火星の探査
火星に小天体が衝突すると表層物質が吹き飛ばされてしまいます。
この吹き飛ばされた物質は火星を回る衛星フォボスにも運ばれているんですねー
今回、この現象のシミュレーション研究が行われ、フォボスにはこれまでの見積もりの10倍以上の火星表層物質があることが分かってきます。
日本は火星の衛星フォボスとダイモスからのサンプルリターンを計画していて、2024年には探査機を打ち上げる予定です。
もし、今回のシミュレーション研究が正しければ、火星の多様な物質が得られるはず。火星の歴史のさらなる理解につながるといいですね。


衛星フォボスに降り積もる火星の表層物質

日本は“はやぶさ2”に続く次世代サンプルリターン計画を進めています。

その計画は火星の衛星フォボスとダイモスを対象とした火星衛星探査計画“Martian Moons eXploration:MMX”。
2024年に探査機打ち上げ、衛星のサンプルが地球に届くのは2029年になるそうです。

2つの衛星のうち火星に近いところを公転しているフォボスの表土には、火星本体の表層物質が混入している可能性があります。

これは、火星に小天体が衝突することによって表層物質が吹き飛ばされ、その一部がフォボスまで到達し降り積もるためです。

なので、“MMX計画”でフォボスの表土を採取できれば、同時に火星表層物質も採取されているかもしれないんですねー
火星に無数の小天体が衝突することで、その破片がフォボスへと運ばれている(イメージ図)。
火星に無数の小天体が衝突することで、その破片がフォボスへと運ばれている(イメージ図)。
今回のシミュレーション研究で、火星からフォボスへ運ばれる物質の量を見積もったのは、東京工業大学地球生命研究所のチームでした。

5億年前から現在までの間に火星で発生した様々な種類の小天体衝突によって、フォボスへ運ばれる火星物質の量を、高解像度の衝突計算と破片の詳細な軌道計算で見積もっています。

その結果明らかになったのが、これまで考えられていた量の10~100倍もの火星表層物質がフォボスへ運ばれること。

また、小天体衝突は火星形成後から恒常的にあらゆる方向で起こっていました。
これにより、衝突によって火星全休の表層物質がフォボスへ運ばれ、表面に均質に混入することも示されています。
小天体衝突によってフォボスへ運ばれる火星表層物質の量。ZunilからMojaveは火星表面上に存在する直径10キロ以上の新しいクレーター(10万年以内)を作った衝突によって運ばれた量。Randomは最近5億年間に直径100キロ以下のクレーターを作った無数の小天体衝突によって運ばれた総量。260kmは最近5億年間で少なくとも一度はあったと考えられる直径260キロのクレーターを作る衝突により運ばれる量。Totalがこれらの合計値を表している。右の軸は、運ばれた火星物質がフォボス表層1メートルに均質に混ざった場合の火星物質の割合。
小天体衝突によってフォボスへ運ばれる火星表層物質の量。
ZunilからMojaveは火星表面上に存在する直径10キロ以上の新しいクレーター(10万年以内)を作った衝突によって運ばれた量。
Randomは最近5億年間に直径100キロ以下のクレーターを作った無数の小天体衝突によって運ばれた総量。
260kmは最近5億年間で少なくとも一度はあったと考えられる直径260キロのクレーターを作る衝突により運ばれる量。Totalがこれらの合計値を表している。
右の軸は、運ばれた火星物質がフォボス表層1メートルに均質に混ざった場合の火星物質の割合。


火星の歴史の包括的な理解につながる

研究チームの見積もりによると、フォボスからサンプルを10g採取すれば、その中に少なくとも30粒以上の火星粒子が含まれているそうです。

これは“MMX計画”で目指す採取量なんですねー

これだけの量があれば、火星上で現在知られている7つの地質年代区分すべてのサンプルが得られる可能性が高いとみられています。

一方、NASAとヨーロッパ宇宙機関が進めている火星探査計画“Mars 2020”では、火星本体からのサンプルリターンも目指しています。
でも、この計画ではある特定の領域における限られた地質と年代区分にしかアクセスできず、帰還も2031年と“MMX計画”以降になってしまいます。

今回の研究により、火星の衛星フォボスにはこれまでの見積もりの10倍以上の火星表層物質があることが分かってきました。

なので、衛星からのサンプルリターンは火星の多様な物質が得られる可能性が高く、火星の歴史の包括的な理解につながるはずです。
日本が進める次世代のサンプルリターン“MMX計画”に期待ですね。


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キュリオシティが過去最高濃度のメタンを火星で検出! 微生物から出たもの? 残念ながら発生源はよく分かっていないようです。

2019年07月05日 | 火星の探査
火星探査車“キュリオシティ”によって、これまでで最も高い濃度のメタンが火星大気から検出されました。
でも、なぜかメタンの濃度は、数日後には平常時のレベルにまで下がったそうです。
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メタンは生物由来なのか、それとも地質由来なのか

火星のゲールクレーター周辺で2012年から探査を続けているNASAの探査車“キュリオシティ”。

この“キュリオシティ”が、これまでに検出した中でも最大の濃度になるメタンを大気中で検出したことが発表されました。
  検出されたのは体積比で21ppb(10億分の21)という濃いメタン。
“キュリオシティ”が現在探査している尾根“ディールリッジ”。“粘土ユニット”と呼ばれている地域の一部(6月18日に撮影)。
“キュリオシティ”が現在探査している尾根“ディールリッジ”。
“粘土ユニット”と呼ばれている地域の一部(6月18日に撮影)。
このデータは“キュリオシティ”の試料分析ユニット“SAM”の波長可変レーザー分光計で得られたもの。

地球では微生物がメタンの重要な発生源になっています。
このことから、今回の発見は生命の存在を示している っと期待しますよね。
ただ、メタンは岩石と水の相互作用でも発生します。

“キュリオシティ”には、メタンの源を特定できるような観測装置は搭載されていません。
なので、今回のメタンがゲールクレーターの限られた場所から出てきたものか、火星の別の場所で発生したものかはよく分かっていません。

残念ながら現状の観測結果では、このメタンが生物由来なのか、地質由来なのかを知る手段はありません。
さらに、古い時代に生成されたメタンなのか、それとも最近作られたものなのかということも分からないんですねー

“キュリオシティ”が検出したのはメタンの雲

“キュリオシティ”の科学チームは6月22~23日にかけて引き続きメタンの観測を行い、24日朝に観測データを受信しています。

そのデータによると、メタンの検出量は急激に下がり、1ppb以下にまで減ってしまったそうです。
この値は“キュリオシティ”が日常的に検出しているメタンのバックグラウンド濃度と変わらない値でした。

この結果が示唆しているのは、今回検出された過去最大量のメタンは、以前にも観測された突発的なメタンの雲であるということ。

これまでに“キュリオシティ”は、移動経路上のあちこちでメタンを検出していて、メタンのバックグラウンド濃度が季節によって変動することも分かっていました。

でも、今回のような突発的なメタンの雲がどのくらいの間持続するのか、なぜ季節変動とは違う変化をするのか、といった点についてはまだほとんど分かっていません。

これから研究を進めていく上で必要になるのは、これらの手掛かりを分析して、もっと多くのメタンを測定すること。

また、2016年から観測を行っているエクソマーズミッションとの連携も必要になってきます。
  エクソマーズは、ヨーロッパ宇宙機関とロシア・ロスコスモスの共同ミッション。
  このミッションの軌道周回機“トレース・ガス・オービター”のチームとの連携も必要。

ただ、1年以上にわたって火星軌道で観測を行っている“トレース・ガス・オービター”は、まだメタンを検出していないんですねー

今後、“トレース・ガス・オービター”がメタンを検出できれば…
火星表面と軌道上での観測データを組み合わすことで、火星のメタン源を特定し、火星大気中でメタンガス雲がどのくらい持続するのかを理解するのに役立ちそうです。

そうすれば、“トレース・ガス・オービター”と“キュリオシティ”のメタンのデータが食い違っている原因も説明できるのかもしれません。

火星大気中でメタンはどのよう振る舞いをしているのでしょうね。


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全て解けると火星が深さ1.5メートルの水で覆われる? 北極の地下に大量の氷を発見

2019年06月11日 | 火星の探査
火星の北極の地下に氷の層が存在することが確認されました。
太古の極冠の名残りと考えられ、火星で最大級の水源の1つかもしれないそうです。


北極の地下に大量の水の氷

今回、火星の北極の地下に広がる氷の層を発見したのは、テキサス大学地球物理学研究所とアリゾナ大学月惑星研究所のチーム。
研究で用いられたのは、NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載されている浅部レーダー“SHARAD”で観測したデータでした。

この氷の層がある深さは地下約1500メートルで、砂と氷が交互に堆積した互層になっていて、場所によっては水分を90%も含んでいます。
この氷の層が全て融けると、火星の全球が深さ1.5メートルの水で覆われるほどの量になるそうです。
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火星の北極にある極冠。垂直方向の凸凹を強調している。
火星の北極の地下に、これほど大量の水の氷が見つかることは予想していなかったこと。
南北の極冠に次ぐ、火星で3番目に豊富な水源と考えられているんですねー


水の氷は氷河期に作られていた

研究チームが考えているのは、太古の火星で氷河期に極域に堆積した氷が、この層の元になったということ。

火星の氷河期は、火星の公転軌道や自転軸の傾きが周期的に変動することがで生じます。
なかでも自転軸の傾きは、約5万年の周期で大きくなったり小さくなったりします。

自転軸が立つと赤道での日射が増え、極域の日射は減って極冠が成長。
自転軸の傾きが大きくなると逆に極冠は小さくなり、ときには完全に消滅することもあったはずです。

温暖な時代には極冠は砂で覆われてしまい、この砂の層は氷が日射で蒸発するのを防ぐ働きをすることになります。

これまで、温暖な時代には極冠は消滅したと考えられてきました。
でも、今回の研究で、かなり大量の氷床の名残りが地下で生き残っていて、氷と砂の交層の中に閉じ込められていることが明らかになったんですねー
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“マーズ・リコナサンス・オービター”の高解像度カメラ“HiRISE”で撮影された、
火星表面に露出している砂と氷の互層。
白っぽい色の層が水の氷、濃い青色の層が砂を表している。
火星の北極域の地下にもこのような互層の形で水の氷が存在することが明らかになった。


太古の火星に生命が存在できる環境はあったのか?

極の地下の堆積物に閉じ込められている水の総量は、驚くべきことに火星の低緯度地域に存在する氷河や地下氷床の量とほぼ同じで、できた年代も同じだそうです。

氷の層は木の年輪と同じように、火星の過去の気候を記録しています。

なので、氷の層の厚さや面積、分布範囲、組成などを調べることで、火星の昔の気候が生命の存在に適していたかどうかを知ることが出来るんですねー

さらに、過去の火星全体にどのくらいの水が存在していたか、またどのくらいの水が極域に閉じ込められているかを知ることは、火星の表面で生命が液体の水を利用できるかどうかという点で重要になってきます。

仮に生命が生きられる条件がすべて揃ったとしても、水の大半が極域に閉じ込められていれば、赤道付近の領域で十分な量の液体の水を得るのは難しくなるからです。

太古の火星に生命は存在したのでしょうか? 過去の気候や水の分布が気になりますね。


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お疲れさま“オポチュニティ”! 90日のつもりが15年も働いたNASAの探査車が火星でのミッションを終了

2019年02月14日 | 火星の探査
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火星で15年にわたり活動を続け、「最も成功した探査機の1つ」とたたえられたNASAの探査車“オポチュニティ”のミッションの終了が2月13日に発表されました。

マーズ・エクスプロレーション・ローバー・プログラムとして2003年の夏に打ち上げられ、2004年1月に火星に着陸した探査車は“スピリット”と“オポチュニティ”の2台ありました。

それぞれが岩石やミネラルを分析するためのパノラマカメラやマクロカメラ、スペクトルメーターを搭載。また、サンプル収集用の小型ドリルも備えていました。

もともとの運用期間は90日間。
毎日40メートル移動し、最終的には約1キロの距離を探査するはずでした。
でも、どちらの探査車もそれを大幅に上回ることになるんですねー

“スピリット”は最終的に7年間で7.7キロを移動し、“オポチュニティ”にいたっては14年間でフルマラソンを超える45キロも移動しています。
  NASAの火星探査車が、走行距で新記録を樹立
    

火星に対する理解を大幅に引き上げてくれた“スピリット”と“オポチュニティ”。
単に過去の火星に水が存在していただけでなく、生命が存在しうる液体の水が存在していた証拠を発見したのは重要な成果でした。
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“オポチュニティ”は科学観測だけでなく、たくさんの自撮りも行っている。
この写真はエレバスクレーターで撮影したもの。
“オポチュニティ”は、昨年6月に火星で発生した砂嵐に巻き込まれてから、地球との交信ができなくなっていました。

交信ができなくなった原因は、想定以上続いた惑星規模の砂嵐に覆われ発電量が低下したこと。

“オポチュニティ”は火星の過酷な気候を想定してデザインされているので、バッテリーが切れるまでに数ヶ月の猶予があるはずでした。
でも、長時間続いた惑星規模の砂嵐とマイナス100度という環境には耐えられなかったんですねー

ここ数ヶ月の間、“オポチュニティ”からの反応を得ようとして、あらゆる手法で交信が試されています。
たとえメモリが消去されたり、観測機器が動作し無くなったとしても、わずかな通信さえ確立できればシステムを再プログラムし活動が続けられるから。
でも、“オポチュニティ”からの応答は無く、13日にミッションの終了が決定してしまいます。

もちろん、これで火星から探査機がいなくなったわけではありません。
今も探査車“キュリオシティ”や探査機“インサイト”が活動していて、2020年7月には探査車“Mars 2020”の打ち上げも控えているので、これからも火星での発見は続きそうですよ。


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ゲールクレーターを覆っていた1~2キロ厚の堆積物がシャープ山を作った? 火星探査車“キュリオシティ”の観測で分かってきたこと

2019年02月11日 | 火星の探査
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火星探査車“キュリオシティ”が数年にわたって走行してきたシャープ山のふもとが、意外に密度の低い場所だということが分かりました。

クレーターの中央にあるシャープ山がどのようにしてできたのか?
この謎を探るヒントになりそうですね。


クレーターの中央にそびえるシャープ山

2012年の8月から火星の赤道付近で活動中のNASAの探査車“キュリオシティ”。

これまで、直径154キロのゲールクレーターの中心にある高さ5000メートルのシャープ山の裾野を登り続け、その途中で地表の撮影や岩石の掘削分析など様々な調査を行ってきました。
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ゲールクレーターの中央にそびえるシャープ山。
“キュリオシティ”は楕円形の部分に降り立ち、水色の線から登っている。
その“キュリオシティ”に搭載された加速度計のデータから、シャープ山の生成の謎に関する興味深い発見があったんですねー

それは、“キュリオシティ”が地表から受ける重力が予想以上に小さかったこと。
2012年から2017年にかけて取得した700回の計測結果から分かったことです。

このことが意味しているのは、これまで辿ってきたシャープ山の裾野地域の密度が、1立方メートル当たり1.5トンから1.8トン程度と予想以上に低いことでした。

シャープ山は、もともとゲールクレーターを覆っていた堆積物が長年の浸食作用で削られて形成された。っという説があります。
でも、その堆積物がどのくらいの量だったかは分かっていません。

もし堆積物がクレーターいっぱいまで埋まるほどなら、大量の物質に圧縮されて密度が高くなるので、今回のようなデータにはならないんですねー

たぶん、この地を覆っていたのはせいぜい1~2キロの厚みの堆積物のようです。

“キュリオシティ”は山のふもとから350キロほど登った北側の尾根“ヴェラ・ルービンー・リッジ”に2017年9月から滞在しています。
今後、尾根を南側に下って粘土鉱物の多い場所に向かい、かつてその場所にあったとされる湖の痕跡を探ることになります。
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1年半滞在した“ヴェラ・ルービン・リッジ”の風景を背にした
“キュリオシティ”の自撮り画像(1月15日撮影)。


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