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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

これまでの説より1億年遅い? 宇宙は誕生してから5.5億年後に再電離した。

2015年02月11日 | 宇宙のはじまり?
ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”の観測から、
宇宙の再電離が起こったのが、宇宙誕生から5.5億年後であることが分かりました。

この結果は、これまで考えられていたよりも1億年遅い時期になるんですねー

“プランク”が観測した
“宇宙マイクロ波背景放射”の偏光。
生まれたばかりの宇宙は、
電子や陽子、ニュートリノが密集して飛び交う高温のスープのような場所で、電離した状態にありました。

それが誕生から38万年経ったころに、
宇宙が膨張し、冷えるにしたがって電子と陽子が結びつくことに…

そして、電気的に中性な水素が作られていきます。

その後、宇宙で初めての銀河や星が生まれ、
それらが放つ紫外線で、水素が再び電離されていく“宇宙再電離”が起こるんですねー

宇宙に広がっていた中性水素の“霧”が電離されて晴れたことにより、
空間を通り抜けられるようになった“宇宙最初の光”が、
現在の空に広がる“宇宙マイクロ波背景放射”として観測されています。

“プランク”による観測からは、
この“宇宙マイクロ波背景放射”に刻まれた、
原始宇宙のさまざまな出来事が明らかになってきています。

その1つとして、今回宇宙の再電離と呼ばれる現象が、
宇宙誕生から5.5億年後に起こっていたことが分かります。

宇宙で最初の星々の光によって中性水素が電離され、
自由になった電子が、“宇宙マイクロ波背景放射”のもととなる光とぶつかった痕跡。

これが、“宇宙マイクロ波背景放射”の偏光(光の振動の向きが揃うこと)パターンとして、
見つかったんですねー

これまで、再電離が起こったのは、宇宙誕生から4.5億年後とされていました。

でも、ハッブル宇宙望遠鏡で観測された宇宙誕生3、4億年後の銀河では、
再電離を起こすには十分でなかったんですねー

今回の成果は、この矛盾を解消するものでもあるんですねー

一方で再電離の完了は、遠方のクエーサーや銀河の観測により、
宇宙誕生から9億年後だということが分かっています。
ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”


宇宙誕生のインフレーションの痕跡、実はチリによるノイズだった…

2015年02月07日 | 宇宙のはじまり?
2014年3月に検出の可能性が発表された“宇宙誕生のインフレーションの痕跡”。

この痕跡が新たなデータにより、
「銀河内のチリによるノイズ」である可能性が高くなってきました。

これにより、宇宙誕生時の出来事を記す“インフレーション理論”の
有力な証拠を求める探索は、さらに続くことになるんですねー
“プランク”が観測した星間チリの分布。
点線内が“BICEP2”プロジェクトでの観測範囲。


南極での観測研究プロジェクト“BICEP2”のチームが、
“宇宙誕生のインフレーションの痕跡”を検出したのは2014年3月のこと。
重力波を観測した南極の施設

全天に広がる、
かすかな“宇宙マイクロ波背景放射”から、
宇宙誕生時の急激な膨張“インフレーション”由来の重力波で作られた可能性のある偏光(電磁波の振動方向の偏り)パターンを見つけ出したんですねー
インフレーション由来の原始重力波によって、
宇宙背景放射に生じたとされるパターン“Bモード偏光”

宇宙の始まりを示す「“インフレーション理論”を間接的に証明するかもしれない」
っと大きな話題になりました。

ただ、銀河内の星間チリでも、
同様の偏光パターンが作られることがあります。

でも、観測した天域では星間チリは少なく、
観測されたような強度のパターンは作られないと判断されていました。
赤外線天文衛星“プランク”

それが、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”や、“南極ケックアレイ”による最新の詳細なデータで、星間チリの影響が思ったよりも大きいことが分かることに…

これを受けて、
“BICEP2”のチームが改めて解析し直したところ、
原始重力波由来の偏光パターンの存在はあやうくなるんですねー


そして、インフレーションに由来する原始重力波の確定的な証拠は、
一旦消えたことに…

でも、これは「インフレーション自体が無かった」っという訳ではなく、
「インフレーション由来の原始重力波が検出できないほど弱い」ということ。

“プランク”が観測した“宇宙マイクロ波背景放射”の温度変動から、
この原始重力波は、かなり弱いと推測されていて、
その意味では予測通りということになります。

宇宙誕生時の出来事を解き明かす
インフレーションに由来する原始重力波は、引き続き追跡されることになりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 銀河内の磁場構造が分かる全天マップ

水素の霧が晴れたのかも? 131億年前に突然現れた銀河たち

2014年12月03日 | 宇宙のはじまり?
初期宇宙において、観測される銀河からの光が急激に増えていることが、
すばる望遠鏡の観測から分かりました。

これには、中性水素の“霧”が晴れる現象“宇宙再電離”が関わっている可能性が高く、
初期宇宙の出来事を探る大きな手がかりなるようです。


今回の研究では、すばる望遠鏡での観測で、
水素原子が放つ“ライマンα輝線”という光がとても明るい銀河(LAE銀河)を、
ビッグバンから7億年後の宇宙に7個見つけています。
131億光年先のLAE銀河(2本の白い線の間)

これまでの観測結果からの推測では、
この時代の宇宙にある銀河は、数十個みつかるだろうと予測されていました。

でも、実際に見つかった数はとても少なかったんですねー

これは、観測される銀河の数が、これより後に急増したことを表していて、
誕生間もないころの宇宙で、LAE銀河が突然姿を現したようすが初めて描き出されることになります。
銀河が放つ“ライマンα輝線”の明るさの変化グラフ。
宇宙の年齢が7億年の時代を調べた今回の観測結果は、
8億~10億年の頃の明るさから推測した予測値よりもはるかに低く、
急激に明るくなっていったことが分かる。

LAE銀河が急に現れた理由として、まず考えられるのが、
宇宙に広がっていた中性水素の“霧”が、
星や銀河が放つ紫外線によって電離されて晴れたことです。

“宇宙再電離”と呼ばれるこの現象は、
ビッグバンから約10億年後(約128億年前)に、終ったことは分かっているのですが、
いつ始まり、どのように進んだかは謎のままでした。

その他に、LAE銀河の周りにかたまって存在していた中性水素が消えたことや、
LAE銀河自体が明るくなったという可能性も考えられます。

いずれにしても今回の発見は、
“宇宙再電離”と、その頃のLAE銀河の性質を理解する上で、
大きな手がかりになるんですねー

今後、3つの可能性のうち、どれが正しいかを調べるために、
すばる望遠鏡のさらに広視野のカメラ“Hyper Suprime-Cam”や、
建設中のTMT望遠鏡を用いた観測が計画されているようです。

“宇宙再電離”が、どのようにして起こったのか?
銀河がどのように生まれたのか? 謎の解明に期待したいですね。

ビッグバン直後に、なぜ宇宙は崩壊しなかったのか?

2014年11月25日 | 宇宙のはじまり?
素粒子物理学の標準理論では、
「なぜヒッグス粒子の生成によって、ビッグバン後に宇宙が不安定となり崩壊しなかったのか?」
について、まだ答えを出せていません。

その謎については、
「未知の物理が働いた」といった理論が、複数考え出されているのですが、
答えは意外にシンプルなのかもしれないんですねー

天文衛星“プランク”による宇宙マイクロ波背景放射の全天マップ。

欧州原子核研究機構でヒッグス粒子が発見されたのは、2012年のことです。

ヒッグス粒子が発見されたということは、
加速膨張する初期宇宙で、ヒッグス粒子が作られたことによって宇宙が不安定になり、
崩壊が引き起こされた、はずであることを示します。

でも、現実として宇宙が崩壊していないのは、なぜなんでしょうか?

その理由については、
「知られざる未知の物理が働いた」という説が、いくつか唱えられてきました。

そして今回の研究では、
「“時空の曲率(重力)”によって安定性が得られたため」という、
とてもシンプルな解決案が発表されることに…

エネルギーが、どのように変換するかを考慮に入れ、
ヒッグス粒子と重力との相互作用を研究した結果、
わずかな相互作用で、崩壊をまぬがれるには十分だと分かります。

素粒子物理の標準モデルにおいて、
未知のパラメータである、ヒッグス粒子と重力の相互作用についての研究では、
このパラメータは、粒子加速器による実験では測れないレベルなのですが、
インフレーションの最中に、ヒッグス粒子が引き起こす不安定性には大きな影響を与えます。

比較的小さな値でもあっても、新しい物理法則や現象を考えることなく、
この宇宙が生き残れたことを説明するのに十分なんですねー

今後得られる宇宙マイクロ波背景放射や重力波の観測データから、
この相互作用をより詳細に明らかにし、
初期宇宙の進化に、どのような影響を及ぼしたのかを解き明かす計画です。

粒子物理学の標準理論… 
この最後の未知数が得られたとして、
私たちすべての存在に関する基本的な謎の答えに、迫ることができるんですかねー

宇宙初代の巨大質量星の痕跡?

2014年09月02日 | 宇宙のはじまり?
宇宙の歴史の研究で、重要な謎解きにつながる成果が発表されました。
初代の巨大質量星のイメージ図

それはビッグバン後の宇宙に最初に誕生した巨大質量星のこと。
なんと、この巨大質量星の痕跡をとどめていると考えられる星を、
すばる望遠鏡で発見したんだとか。

このことは、宇宙の初期に誕生して、
その後の星々と、元素の合成の出発点になった巨大質量星の進化を、
探る手掛かりになるんですねー


星は、宇宙空間のガスやチリが集まって形成され、超新星爆発などによって死を迎えます。
これまで宇宙では、これが何世代にもわたって繰り返されてきました。

その間に、炭素、酸素、窒素だけでなく、
鉄や銅、銀、金、鉛などの重い元素も合成されることに…
そして、太陽系に地球が生まれ、生命、人類も誕生することになるんですねー

この壮大な物語は、ビッグバンとその後に出現した初代星で始まりました。


宇宙初代の星は、水素とヘリウムという軽い元素だけで構成されていました。

超高温、超高圧の中心部が核融合反応を起こして強力な紫外線を放射して輝き、
内部に炭素以上の重い元素を合成して、その後の星の材料を提供していきます。

でも質量が大きいと、星の寿命はわずか数百万年で早く燃え尽きてしまいます。

なので、宇宙誕生から138億年後の現在、
地球の望遠鏡で、直接その姿を観測することはできていません。
宇宙の初代星のなかに巨大質量星が存在したという理論はあるのですが、
観測による証拠はこれまで出ていなかったんですねー


初代星が作り出した物質は、
宇宙空間に放出され、次の世代の星に取り込まれます。

その中には、質量が小さくて寿命が長い星もあったと予想され、
初代星の痕跡を探す研究が30年あまり続けられてきました。

でも、鉄などの比較的重い元素を大量に合成する、
太陽質量の100倍以上の巨大質量星の痕跡は見つからず、
謎のひとつとされてきました。


今回の研究では、地球から近い天の川銀河の星の元素組成を調べています。
特異な元素組成から、
宇宙初期の巨大質量星の
痕跡とされた星。

そして、くじら座の方向約1000光年の距離にある太陽質量の半分程度の小さな星が、
特異な元素組成を持つことを発見します。

すばる望遠鏡の高分散分光器で観測し、元素組成比のスペクトルを測ったところ、
鉄の組成は太陽の300分の1程度で、比較的軽い元素の炭素やマグネシウムの組成は、太陽の1000分の1以下でした。

鉄以外の元素の組成が、極端に低かったのが特徴だったんですねー



第2世代の星の元素組成は多くの場合、
太陽質量の数十倍の大質量星が起こす、超新星の元素合成モデルでよく説明されてきました。
初代の巨大質量星が放出した物質と
周囲の水素が混ざったガスから
誕生すると考えられる小質量星
(イメージ図)

でも、今回発見された星の元素組成は、そのモデルでは説明できず、
鉄を比較的多量に作り出す、巨大質量星の爆発で予想される元素組成とよく一致していました。

なのでこの星は、初代の巨大質量星から放出された元素が、
周囲の水素ガスと混ざって生まれた、第2世代の星の可能性が大きいようです。





今回の観測結果は、
「宇宙初期に太陽の100倍以上の巨大質量星があった。」
っという理論を支持するものになります。

数は少なくても、巨大質量星は爆発のエネルギーが大きいので、
周りへの影響は強く、その後の宇宙の進化にも関わったんですねー

今回発見した大質量星の痕跡を示す星は、
質量が小さいので、誕生して130億年ぐらいは経過しているそうです。

ハワイに建設が予定されている、
世界最大級の直径30メートル巨大光学望遠鏡“TMT”が完成すれば、
宇宙誕生から数億年ごろ… 宇宙初期の巨大質量星の光を、
直接とらえられる可能性があるそうです。