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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

原始宇宙で、銀河の作られる様子

2014年04月29日 | 宇宙のはじまり?
すばる望遠鏡を用いた観測で、
宇宙誕生10億年後のガンマ線バーストに、中性水素の兆候が見つかりました。
このことは、中性水素ガスが電離されていった“宇宙再電離”以前の時代に踏み込む研究成果になるんですねー
再電離の経過

138億年前に宇宙が生まれた当初は、原子核と電子がバラバラの電離した状態にありました。

そして、誕生から約38万年経ったころに、宇宙は膨張によって冷え、それによって原子核と電子が結合し、電気的に中性な水素原子が形成されることになります。

およそ10億年後には、宇宙で初めての銀河や星が生まれ、
それらが放つ紫外線で水素が再び電離されていく“宇宙再電離”が起こるんですねー

それから現在に至るまで、宇宙の水素の大半は電離状態の銀河ガスとして存在しています。


再電離がいつどのように起こったのかを探るため、
遠方の宇宙(つまり昔の宇宙)の観測から、再電離が起こる前に存在したはずの中性水素ガスを検出する試みが進められてきました。


今回の研究では、2013年6月に観測された明るいガンマ線バースト“GRB 130606A”が調べられることになります。
この強いガンマ線バーストは、大質量星の爆発現象によるとみられています。

誕生から約10億年経ったころの宇宙から届いたこの光を、
すばる望遠鏡で観測、分析したところ、中性度が10%以上の水素ガスの痕跡がスペクトルから検出。
ガンマ線バーストの図解

バースト源の周囲で、これほど中性度の高い銀河間ガスの兆候が見つかったのは初めてで、
再電離前の中性水素ガスが、バースト発生当時まだ残っていたことを示す結果になったんですねー

遠方宇宙の観測は、再電離よりさらに前の時代に踏み込みつつあります。
次世代望遠鏡などを用いた今後の研究により、原始宇宙で銀河が作られる様子が、さらに明らかになるといいですね。
ガンマ線バースト“GRB 130606A”の
可視光スペクトルに現れた中性水素の痕跡

宇宙が一瞬で膨張した決定的証拠を発見

2014年03月23日 | 宇宙のはじまり?
宇宙が誕生した瞬間、驚くほど強力な重力波が広がっていった。
っという事実が、最新の研究によって明らかになりました。

これにより、誕生直後に急膨張したとする“宇宙インフレーション理論”を裏付ける決定的な証拠が、初めて観測されたことになるんですねー
宇宙に波を打って広がる重力波
(イメージ図)
“インフレーション理論”は、
初期宇宙の誕生直後から、想像を絶するほどの大きさにまで膨張した成り立ちを説明する進化モデルで、火の玉の爆発で始まったとする、ビッグバン理論を補完する位置づけにあります。

今回の研究では、宇宙誕生後に放出された熱の名残り“宇宙マイクロ波背景放射”を分析しています。

“宇宙マイクロ波背景放射”は、天空全域に広がっていて、
宇宙誕生の40万年後に、物質がどこで凝縮していったのかが分かるんですねー

重力波は波打つように広がり、移動した部分の空間を歪めます。
そして、広がりの規模に応じて、一定間隔で物質をひとまとめにしていきます。

これは、アインシュタインの重力理論で予言されていて、宇宙インフレーションの存在を示す証拠になると考えられてきました。

なのでこの研究では、重力波を直接観測した訳ではなく、“宇宙マイクロ波背景放射”に与えた影響をとらえています。


観測は、澄んだ空と乾いた大気の条件を満たし、地上随一のレベルで“宇宙マイクロ波背景放射”の観測が可能になる、南極大陸のBICEP2望遠鏡で行われています。
インフレーションからの重力波が、
“宇宙マイクロ波背景放射”に“Bモード偏光”歪みを生じさせる。
黒い線が“宇宙マイクロ波背景放射”の偏光方向を示し、
歪みの程度に応じて色が付けられている。

インフレーション理論では、“宇宙マイクロ波背景放射”が重力波の影響を受けると、
偏光サングラスと同じ理屈で、特定の方向の光に歪みが生じるそうです。
これを観測するために、2010~2012年の3シーズンを費やしたんですねー

そして、ついに特徴的な偏光パターン“Bモード偏光”を発見することに…
その歪みは事前の予想に比べて、およそ2倍も強力だったそうです。

インフレーション理論では、宇宙誕生時の高密度エネルギーによって、
誕生から1秒の1兆分の1の、さらに1兆分の1の、さらに100万分の1以内の時間で、
宇宙の境界が、指数関数的に膨張していったと想定されています。

なので、宇宙は誕生した瞬間に、人類が観測可能な領域(直径約920億光年)を超えて、
はるか彼方まで広がっていったんですねー

重力波はその時生まれたもので、今回の研究は宇宙誕生の謎を解明する大きな一歩になると期待されているようですよ。

宇宙は、ブラックホールから生まれた?

2014年03月06日 | 宇宙のはじまり?
時計を巻き戻して、人類が生まれる前、地球が形成される前、太陽が輝き始める前、
銀河が誕生する前… そして、光さえまだ輝くことのできなかった頃に遡ってみると、
そこにあるのはビッグバン「138億年前の出来事」に行き着きます。

でも、その前となると、多くの物理学者は「何もなかった」と答えます。
ただ、そう考えない異端の物理学者も、わずかですがいるんですねー

彼らの説によると、ビッグバンの直前には、生まれようとしている宇宙のすべての質量とエネルギーが、信じ難いほど高密度だが有限な大きさを持つ、1つの粒の中に押し込められていたそうです。

この粒を“新宇宙の種”と呼ぶことにすると、この種がどのようにして生まれたのか?
っという疑問がでてきます。

そして、数年前から議論になっている1つの説があります。
それは、わたしたちの宇宙の種は、自然界でおそらく最も極端な環境である究極の炉、すなわちブラックホールの内部で作られているというものです。

過去数十年の間に、多くの理論物理学者が「宇宙は、わたしたちが暮らす宇宙1つだけではない」と考えるようになりました。

この宇宙は、無数の別々の宇宙からなる“マルチバース(多宇宙)”の中の1つかもしれない、ということです。

1つの宇宙が別の宇宙とどのようにつながるのか?、あるいはそもそもつながっているのか?
この問題は大きな論争を呼んでいて、すべては非常に思弁的な議論で、現時点では証明はまったく不可能なんですねー

でも、宇宙の種は植物の種のようなもので、基本物質が高度に圧縮され、保護殻の中に隠された塊となっているという考え方には説得力があります。
これは、まさにブラックホールの内部で作られるものの説明と同じになります。


ブラックホールの底で起こっていることを確認するために、アインシュタインの理論を用いると、
計算上、密度が無限大で大きさが無限小の“特異点”という仮説的概念に到達します。

でも、通常自然界では、無限というものは存在しません…  アインシュタインの理論には、このような不調和があります。
宇宙の大半については、見事に計算できるのですが、巨大な力の前では破綻しがちなんですねー
もちろん巨大な力とは、たとえばブラックホールの内部や、宇宙の誕生の瞬間に存在したような力になります。

ブラックホール内の物質は、実際にそれ以上は押しつぶされない段階にまで到達。
この“種”は、信じ難いほど小さく、太陽の10億倍もの質量を持つかもしれないのですが、
“特異点”とは異なり、現実に存在しています。

あとブラックホールは自転しているので、圧縮のプロセスは引き止められます。
自転は極めて速く、光速に近い可能性もあるんですねー

この自転が、圧縮された“種”に巨大なねじれを与えることになります。
“種”は小さく重いだけでなく、ねじれ、圧縮されていて、ばね仕掛けで飛び出す「びっくり箱のヘビ」のような状態になります。

そして、それは突然、爆発するように飛び出すことに…  これがビッグバンというわけです。

ただ、ブラックホールは大質量星の重力崩壊で誕生するので、
大質量星があった最初の宇宙は、何によって作られたんですかねー

“ガンマ線バースト”で宇宙の誕生期にせまる

2013年08月24日 | 宇宙のはじまり?
宇宙でもっとも大きなエネルギーを放つ現象、その1つが“ガンマ線バースト”です。

今回アメリカの研究チームが、遠方宇宙から届く“ガンマ線バースト”の残光を分析して、
宇宙誕生約10億年後の銀河に含まれるガスの組成を突き止めました。

今回観測した“ガンマ線バースト”は、6月6日にNASAのガンマ線監視衛星“スウィフト”が検出したもの。
4分以上も継続したのでロングバーストに分類されます。

127億光年彼方の銀河の恒星が、最期を迎える時の大爆発によって起こったとみられ、
“ガンマ線バースト”の中ではかなり遠いものになるんですねー

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターでは、
“ガンマ線バースト”を検出後に、すぐさまアリゾナ州のMMT望遠鏡や、ハワイのジェミニ北望遠鏡を向けています。

理由は“ガンマ線バースト”のジェットで、周囲のガスが加熱されて光る「残光」を観測・分析するため。
残光は“ガンマ線バースト”が起こった銀河の中を通るので、その光を分析すれ星間ガスの組成が分かるんですねー

“ガンマ線バースト”の残光が銀河内のガスを通過する(イメージ図)

調査の結果、127億年前、つまり誕生してからおよそ10億年の初期宇宙にあったこの銀河は、
太陽系の10分の1しか重元素を含んでいませんでした。

生まれたばかりの宇宙には、水素、ヘリウム、リチウムといった軽い元素ばかりが存在しています。

そして、時間が経つとともに恒星の核融合や、その後の超新星爆発によって炭素や酸素などの重元素が増え宇宙空間に広がっていくことになります。
なので、この初期宇宙に岩石惑星が作られても、まだ生命の誕生に至るほどの重元素は無いことになるんですねー

研究チームでは宇宙の誕生期にせまるため、さらに遠くの“ガンマ線バースト”の観測を目指しているようですよ。

ビッグバン理論がさらに強固に! 天の川銀河でもっとも古い星の観測で

2013年06月20日 | 宇宙のはじまり?
宇宙は138億年前に、ビッグバンで誕生したと考えられています。

このことは、その名残りである宇宙背景放射や、
理論予測どおりの軽元素の組成が観測されていることなどで、説の正しさが裏付けられています。










宇宙初期に形成された恒星は、
ビッグバン直後の元素合成を
反映している。









でも、長年解決されていない問題もあるんですねー

それは、天の川銀河のもっとも古い星々で観測された、リチウム同位体の量です。
この量が、ビッグバン後の元素合成で作られる っと理論上で予測された量と、一致しないんですねー

同位体とは、同じ元素でも中性子の数の違いにより、質量などが異なる原子のことです。
これまで、6Li(リチウム6)が予測される量の200倍、7Li(リチウム7)は3~5分の1という大きな違いを見せていました。

今回、ケンブリッジ大学で行われた最新の観測研究により、
リチウム同位体の量は、ビッグバン標準理論と矛盾しないという結果が発表されました。

観測は、ハワイ ケック天文台の口径10メートル望遠鏡で行われ、
古い恒星を観測して、恒星大気についての理論モデルと併せて解析が行われています。

6Liは存在量が少ないため観測が難しく、大気中の異なる過程のために観測データのモデル化も慎重さを要するそうです。
でも、ケックⅠ望遠鏡やスーパーコンピュータの能力によって、問題を解決できたんですねー

今回の成果で、リチウム6Liと7Liの量についての理論と観測との隔たりが大幅に小さくなり、
完全な一致も見えてきました。
宇宙背景放射などで支えられていたビッグバン標準理論が、これによってさらに強固になったようです。