良薬は口に甘し

　「こんなつらい治療を受けているのは、あなたのためよ」・・・これは、現在、読売新聞に連載中「時代の証言者」垣添忠生さんの「がんと人生」を読んでハッと胸を突かれた。

　・・・妻のガンは「あと数カ月の命」と宣告された。
　私は初めて妻の死を意識せざるを得ませんでした。抗がん薬もほとんど効かず副作用ばかり出ました・・・妻は一切弱音を吐きませんでした。が、ただ一度、「こんなつらい治療を受けているのは、あなたのためよ」と言ったことがあります。本当は抗がん剤治療を受けたくないのに元国立がんセンター総長の私の立場を考えての治療選択だったのでしょう・・・

　奥さんは自宅で無くなったこと、１２歳年上で周囲の猛反対にもめげず結婚したことなどが今日までの記事であった。

　抗がん剤の副作用については、医者も言っていた。毒を身体に入れるのだから良い訳はない。素人の表現とすれば「ヒ素」か「インク液」でも注入しているのか、化学療法で完治などあるのか、ガンの進行を抑えることが出来れば上出来なのだろう。

　赤血球、白血球、血小板が明らかに減ってくる。嘔吐、食欲不振、便秘下痢、手足の痺れ、頭髪の抜けなどなど死ぬまで続けるのか、先が見えない。

　いずれにしても、７０歳を過ぎれば他の病気でも死ぬこともあろう。

　苦しいのは嫌だ！あの奥さんの言葉は、ガン専門医の妻が「ガン治療を拒否」したならば、夫の立場はない、故に・・・・「あなたのためよ」・・・こんな苦しみは、死んだ方がましなのですよ・・・死ぬほど辛いのですよ、生地獄なのですよ・・が物語っている。

　良薬は口に苦し「良薬苦於口、而利於病」は昔のこと、今は甘い薬が一杯ある。そのうち、楽しい夢が見られる抗がん剤が出来るであろうが、間に合いそうにもない。

　果たして誰の為に受けるのか、毒をもって毒を制するのか、毒にも薬にもならなかったこの人生、無駄な抵抗はよせ！とも・・・