『カラーパープル』(原題:The Color Purple)
監督:ブリッツ・バザウーレ
出演:ファンテイジア・バリーノ,タラジ・P・ヘンソン,ダニエル・ブルックス,コールマン・ドミンゴ,
コーリー・ホーキンズ,H.E.R.,ハリー・ベイリー,アーンジャニュー・エリス=テイラー他
公開初日に109シネマズ大阪エキスポシティにて。
アリス・ウォーカーは1983年にピューリッツァー賞のフィクション部門を受賞。
それをスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化したのが1985年のことでした。
さらにそれが2005年にブロードウェイでミュージカル化されて大ヒットし、
そのブロードウェイミュージカルを映画化したのが本作。
そして私は1985年の映画版を観ていないことに気づき、本作鑑賞後に配信で鑑賞して見比べました。
Netflixでは配信なし、Amazonプライムビデオにはあったけど、無料ではなく100円課金。
スピルバーグが監督を務めると決まったとき、原作者のアリス・ウォーカーは反対したとか。
ま、そりゃそうでしょう。黒人の話を白人監督が撮れるものだろうかと思う。
渋るウォーカーを説得したのが、音楽を担当したクインシー・ジョーンズだったとのこと。
このミュージカル版リメイクではクインシー・ジョーンズも製作に名を連ねています。
内容は概ね同じで、全然違う描写というのは見当たりません。
セリーとネティは仲良し姉妹。母親を亡くしても、横暴な父親のもとでも、ふたりでいれば生きて行ける。
そう思っていたのに、父親のアルフォンソは姉のセリーを“ミスター”ことアルバートに売りつける。
ミスターといえば、浮気した妻を殺したとの噂。彼は残された3人の子どもの世話を誰かにさせたがっていた。
ミスターは美人のネティを娶ることを希望したが、アルフォンソは不美人のセリーをミスターに売る。
セリーは荒れ放題のミスターの家で家事に追われつつ、性欲のはけ口にされ、
殴る蹴るの暴行を受けながら、わがままな子どもたちの世話までしなければならない。
セリーは実家にいる間もアルフォンソから性的虐待を受けて、2度妊娠、出産。
生まれた赤ん坊はすぐにアルフォンソによって取り上げられ、子どものいない牧師夫婦に売られていた。
アルバートのところへセリーが嫁いだ後、今度はネティに手を出そうとしていたアルフォンソ。
たまりかねたネティは実家を逃げ出してセリーに助けを求める。
ミスターからネティを家に置いてもよいという許可を得て、
また仲良し姉妹で暮らせると喜んだのも束の間、ミスターがネティを襲おうとする。
ネティが逃げると、ミスターは激怒。ネティを追い出してしまう。
こうしてまたひとりになったセリーは、ネティからの手紙を待ちわびるも、届いた手紙はすべてミスターの手に。
ある日、ミスターが想い焦がれる歌手シュグが帰郷する。
村中の男たちを虜にするシュグは、ミスターの家に泊まることに。
セリーは甲斐甲斐しくシュグの世話を焼き、いつしかふたりの間に絆が生まれ……。
というような物語。
スピルバーグ版でセリーを演じていたのがウーピー・ゴールドバーグでした。
有名司会者のオプラ・ウィンフリーの映画デビュー作も本作だったそうで、
ミスターの息子ハーポに嫁ぐ豪快な女性ソフィア役を演じています。
観る前は人種差別について描かれている作品だと思い込んでいました。もちろんそんなシーンはある。
いけ好かない市長と市長夫人が「私たち、黒人にとても優しくて理解があるの」なんて言うシーンは反吐が出そう。
この市長夫人、車で事故って死ねばいいと思ったけど、そうか、死なないのか~(笑)。
本作は、白人による黒人迫害よりも、黒人による黒人女性の迫害が描かれています。
こんな男ばかりじゃないんでしょうが、本当にひどい。
女なんて殴っときゃ従わせることができると思っている男たちが、女性たちの反逆に遭って面食らう。
皆が集う席で、セリーがミスターとその父親に馬鹿野郎と言うシーンは胸がすく。
ソフィアとシュグもいいですよねぇ。
ネティが戻ってくるに至った経緯など、ミュージカル版のほうがわかりやすくて優しい。
ラストのセリーと子どもたちが会うシーンはオリジナル版のほうが好き。
そのほかのシーンを見比べても、キャストはどちらも素晴らしいし、良い作品だと思いました。
ただ、テーマがテーマだけに難しい。安易に「良かった」とは言えない雰囲気もあります。