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『ある男』

2022年11月26日 | 映画(あ行)
『ある男』
監督:石川慶
出演:妻夫木聡,安藤サクラ,窪田正孝,清野菜名,眞島秀和,小籔千豊,坂元愛登,山口美也子,
   きたろう,カトウシンスケ,河合優実,でんでん,仲野太賀,真木よう子,柄本明他
 
仕事帰りにイオンシネマ茨木にて2本ハシゴの1本目。
 
芥川賞作家の作品はどうも難解な気がして及び腰になってしまいます。
だから本作の原作、平野啓一郎の同名ベストセラー小説も未読。
読むならこの石川慶監督による映画版を観てからにしたい。
 
離婚して故郷である宮崎県の田舎町に戻った里枝(安藤サクラ)は、
家業の文具店で店番をしていたある日、客としてやってきた谷口大祐(窪田正孝)と知り合う。
伊香保温泉の老舗旅館の次男坊でありながら家を飛び出したという大祐は、
この町で林業に携わることに決めたらしく、真面目な人柄で仕事に馴染んでゆく。
 
やがて里枝と結婚。前夫との間の子である悠人(坂元愛登)も「お父さん」のことが大好き。
妹も生まれて家族4人、穏やかで幸せな日々を送っていた。
 
ところが大祐が仕事中に事故死。
里枝が連絡したことにより一周忌の場に現れた大祐の兄・谷口恭一(眞島秀和)は、
遺影を見るなりこれは大祐ではない、まったくの別人だと言う。
ならばずっと大祐だと思っていたこの人はいったい誰なのか。
 
困った里枝は、以前離婚調停のさいに世話になった人権派弁護士・城戸章良(妻夫木聡)に相談。
自分の夫だった人物の身元調査を依頼するのだが……。
 
大祐を騙っていた人物のみならず、今の名前ではない人生を送れたらと思っている人はきっと多い。
本当の大祐もそう。息子をひとり失った過去のある里枝ももしかするとそう思ったことがあるかもしれない。
妻夫木聡演じる章良は在日3世で、裕福な妻の実家でも心ない言葉を浴びせられ続けています。
困ったことに、そういう言葉を発し続けている人に自分が差別主義者だという意識はない。
それどころか自分は物分かりがよくて頭の良い人間だと思っている。
 
大祐がなぜ他人を名乗っていたか、その理由は納得できるもの。
こんな境遇に生まれた辛さがわかるなんていうと、それこそ自分を賢い人間に思っているふう。
本人でなければ決してわからないことでしょうけれど、
世間から偏見の目で見られ続け、自身もあの血を受け継いでいると思い続け、
幸せに生きることが許されないように思っていたであろうことは想像できます。
 
辛い話でしたが、里枝の言うように、「わかってみれば、知る必要がなかったことかも。
あの人がここにいたことは事実なのだから」。幸せだったと思いたい。
 
それにしても、名優・柄本明大阪弁があまり上手じゃないですよね。
彼に大阪弁をしゃべらせる必要はなかったと思うのですけれど。
章良の事務所で相棒を務める小籔千豊551の豚まんについてチルドはアカンという台詞を
大阪人として絶対に言えないとして、チルドもイケるに変えた話、ご存じですか。

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