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『追憶』

2017年05月17日 | 映画(た行)
『追憶』
監督:降旗康男
出演:岡田准一,小栗旬,柄本佑,長澤まさみ,木村文乃,矢島健一,北見敏之,
   安田顕,三浦貴大,渋川清彦,りりィ,西田尚美,安藤サクラ,吉岡秀隆他

GW最終日、午後2時から箕面のメイプルホールで
マンドリンサークルのコンサートを聴く予定。
その前にTOHOシネマズ伊丹で2本ハシゴ。

あと3カ月ほどで83歳になる降旗康男監督と
昨年喜寿をお迎えになった木村大作カメラマンの御大コンビ。
このコンビの代表作は『駅 STATION』(1981)や『鉄道員(ぽっぽや)』(1999)など、
高倉健とは切っても切れない仲。
健さんの最後の出演作となった『あなたへ』(2012)も降旗監督でした。
一方の木村カメラマンは吉永小百合主演の『北のカナリアたち』(2012)も担当。
これを大御所と言わずしてなんとする、というようなコンビです。

岡田くんは健さんになれるのか、そもそもなりたいのかどうかは別として、
そんな監督が主演に据えたのですから、すでに認められているのでしょう。

さんざん予告編を観て良さそうだと思ったので、先に原作を読みました。
そのときの私が“ブクログ”に書いたレビューはこちら

著者は脚本家で、これが小説家としてのデビュー作。
鳴り物入りのデビューなわけですが、
これがオリジナル小説というよりはノベライズを読まされたような印象で。
真犯人なんて、いったいいつの時代のミステリーかと思うほどのショボさ。
しかしこれがこのキャストで映画化されたら私は泣くと思ったのですけれども。
……全然泣かれへんかったやんか(泣)。

原作の舞台は北海道だったのに、映画版ではなぜか北陸に。
29年前の話は若干前倒しになって25年前の話に。
事件が起きたのは夏の終わりのはずが、映画版では雪が舞う冬。
物語としての厚みのなさをカバーするために
背景を暗くして重さをプラスしました、みたいな感じ。
そんなことしたって厚みは変わらないんだってば。

少年時代のアツシ(岡田准一)、ケイタ(小栗旬)、サトシ(柄本佑)の身に起きたことが
原作ではずいぶん先まで伏せられて進みますが、
映画版では冒頭ですべて見せています。
ゆえにネタバレにはならないでしょうから書いちゃいます。

家庭環境に恵まれなかった3人は、少年時代のある冬休みに家出。
海辺の喫茶店の女主人・仁科涼子(安藤サクラ)のもとへと転がり込み、
束の間の明るく穏やかな日々を過ごす。

ところが涼子のヒモだった男(渋川清彦)が所在を突き止めてやってくる。
笑顔の途絶えた涼子、怯える毎日に、アツシは男の殺害を決意。
殴打に失敗して逆に殺されかけたところへケイタが飛び出し、男を刺殺する。
涼子と店の常連客・山形光男(吉岡秀隆)は3人を追い出すと、
後のことは何も心配するなと告げ、涼子が罪をかぶる。

それから25年が経過。
刑事となっていたアツシは、ある日偶然サトシと再会。
妻(西田尚美)の婿養子に入ったというサトシは、
会社の経営が上手く行かず、金に困っている様子で、
ケイタに金を借りに行くのだと自嘲気味に笑う。

ところが翌日、サトシが他殺体となって発見される。
被害者と面識があることを上司(矢島健一北見敏之安田顕他)に言い出せぬまま、
アツシはケイタに会いに行くのだが……。

アツシの妻役に長澤まさみ、母親役にはりりィ
ケイタの身重の妻に木村文乃。サトシの義妹に菜葉菜

これだけ演技派の若手が揃っていれば泣くだろうと思ったら、
みんな大げさなうえに、ここで泣けとばかりの音楽。
真犯人が明らかになるきっかけは原作よりもっと茶番でガクッ。

ついでに、原作では「傘を差し掛ける」という行為が
大事にしたいことのひとつに考えられていたと思うのです。
だから涼子の喫茶店の名前も“アンブレラ”だったのに、
映画版ではそれすらも“ユキワリソウ”に変更されていました。

原作者本人が脚本原案も担当しているのだから、
設定は原作そのままにすればよかったのでは。
いずれにしても、厚みに欠ける原作を映画化してもあかんということかと。
しょぼい原作を面白く変身させた『疾風ロンド』(2016)が特異なのね。たぶん。

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