時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

軍国化する日本(2)~ミサイル飛来を煽る裏での有事体制へのまい進~

2016-02-07 00:36:52 | 北朝鮮
日ごろは、いかにも平和を尊重しているかのように語りながら、
その実、大国による小国への陰湿な威嚇と制裁にはしたり顔でゴーサインを送る。

果たして、このような左翼や護憲勢力を平和主義の担い手と呼べるのだろうか?

旋風のごとく煽られる「ミサイル飛来」報道の裏側で何が起きているのかを伝えること。
これこそ、本来、左翼が市民に対して行うべき責務であるはずだ。

だが、実際には、北朝鮮は絶対悪であるという言説を拡散させて今に至っている。
人工衛星の打ち上げをミサイル実験と表現することで読者の恐怖を煽り体制に協力している。

その中で朝鮮新報の論説文は異色であり、それゆえに一読に値すると言えよう。
朝鮮新報といえば、総連傘下のメディア。まさに表現や言論の自由が奪われているはずのメディアだ。
(実際、金正恩に対しては礼賛一辺倒の記事を掲載し、帰国事業も偉業として書かれている)


常識で考えれば、このような新聞が正しい意見を書けるはずがないのだが、現実はどうなのか?
実際に読んでみよう。

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衛星打ち上げを利用した有事体制の実戦演習

朝鮮に向けられた日本の戦争挑発

日本政府は、朝鮮の人工衛星打ち上げ発射を利用して、有事態勢の実戦演習を行っている。

集団的自衛権の行使を前提とした日米ガイドラインの改定、安保関連法の制定など、
日本の軍国化、自衛隊の海外膨張を着々と進める安倍政権は、朝鮮が衛星打ち上げ計画を
国連機関に通告する以前から地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を
東京・市ヶ谷の防衛省敷地内や朝霞駐屯地、習志野駐屯地などに配備した。

「ミサイル飛来」の虚構をつくり「危機」を煽るための常套手段だ。

国際海事機関(IMO)などに対する朝鮮の通告によって
衛星運搬ロケットの飛行経路が明らかになると、PAC3を沖縄県に配備し、
海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載したイージス艦3隻を朝鮮東海などに展開した。


安倍首相は国家安全保障会議で「情報収集と警戒監視」を指示、
これを受けて中谷元・防衛相が自衛隊に破壊措置命令を出した。
大臣の許可を必要とせず、現場の判断で迎撃ミサイル発射を可能とするものだ。

平和目的のために打ち上げられる宇宙ロケットを「長距離弾道ミサイル」だと断定し、
臨戦態勢をとる狙いは、「北の脅威」を国民の中に浸透させ、
それに対応した軍事行動を既成事実化することで、
日本の軍国化、日米の軍事一体化を一段と推し進めること
にある。


政府は、ロケット発射と関連して、市町村の防災無線に音声で自動通知する
全国瞬時警報システム(Jアラート)などを活用することで、
有事体制の実戦演習を自治体の末端にまで広げている。


政府の世論扇動

現在、日本政府とそれに同調するマスコミによって行われていることは、
戦時態勢を国民に容認させるための集団催眠術である。



首相と閣僚、新聞やテレビが「長距離弾道ミサイル」だと騒ぎ立てることで、
他国の人工衛星打ち上げに対して迎撃ミサイルを準備することに国民が疑問を持たないようにする。

宇宙ロケットを迎撃すれば、日本が先制攻撃したことになるが、
そのような想像力は働かないように誘導される。


自衛隊に対する破壊措置命令は
「ミサイルが日本領域に落下する事態に備え、迎撃態勢を取る」との口実で出されている。

朝鮮が打ち上げる宇宙ロケットは、
大気圏外の衛星軌道を目指すもので、方向からしても日本に向けられてはいない。

しかし、PAC3やSM3が配備された物々しいい雰囲気がメディアを通じて拡大されることで、
「北朝鮮のロケットが日本に打ち込まれる」との錯覚が引き起こされている。

宇宙開発は主権国家の正当な権利であり、
朝鮮の人工衛星打ち上げを非難し、迎撃ミサイルを準備するのであれば、
日本を含む欧米の衛星打ち上げにも反対しなければならないという理性的判断は失われ、
朝鮮を敵視し、軍事対決を強めることが朝鮮半島と東北アジアの緊張を高めることになるという
危機感も希薄になっている。政府が主導する「北ミサイル騒動」に反対する勢力も見当たらない。

日本を「戦争できる国」に仕立て上げようとする首相は、
「騒動」のどさくさに紛れて、憲法9条改正の必要性に言及する国会答弁を行った。


日米の軍事一体化

兵器としての確実性が十分証明されていない
PAC3やSM3による迎撃態勢は、張子の虎と言われている。



仮に、沖縄県に配備されたPAC3が打ち上げに失敗したロケットの
「破片」を「破壊」するのだとしても、目的を達成できる可能性はほとんどない。

PAC3は、ほぼ垂直に落下するミサイルの弾頭部分を、
射程20~35キロの範囲で垂直に打ち上げて迎撃するのを想定しており、
風に流されやすい「破片」の「破壊」は想定外だ。



もしミサイルが命中したとしても、
「破片」をさらに細かくするだけで、むしろ被害範囲を拡大させるリスクがある。


日本政府も、落下してくる「破片」を打ち落とせるなどとは本気で考えていない。
「北のミサイル」を口実にした迎撃態勢は、日米一体で運営されるミサイル防衛(MD)の実戦演習だ。

自衛隊は、人工衛星を搭載した宇宙ロケットの発射
及び飛行状況に関する情報の多くを米軍に依存している。

朝鮮の人工衛星打ち上げに対する迎撃態勢は2009年と2012年にもとられたが、
日米ガイドラインの改定によって米軍と自衛隊の共同作戦の範囲を世界へと拡大させた安倍政権は、
「北の脅威」を煽ることで自衛隊と米軍の一体化を一気に加速化させようとしている。

朝鮮の人工衛星打ち上げと関連しては、米国と南も迎撃のための態勢をとっている。
このような迎撃の共助体制は、アジア覇権を狙った米国のリバランス政策の推進とも一致する。

米国は「北の脅威」を口実に
米・日・南の三角軍事同盟を強化し、
対中包囲網を形成しようとしている。


米・日・南の3者によるにMDシステムの構築も課題となっている。朝鮮の水爆実験後、
南への高高度迎撃ミサイル(THAAD=サード)配備が現実味を帯びているのは、偶然ではない。

日本は、宇宙ロケットを「弾道ミサイル」だと強弁し、
米国と手を組んで、有事の軍事行動を具体化した。
 

朝鮮から見れば、このような動きは戦争挑発以外の何ものでもない。

軍国化の道をまい進する日本は、地域の緊張を激化させ、
朝鮮が戦争抑止力を強化せざるを得ない状況を作り出している。

(金志永)

http://chosonsinbo.com/jp/2016/02/0006/
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私も先月末、沖縄の迎撃体制への移行は、
北朝鮮の脅威を利用した軍事演習に他ならないと主張した。


人工衛星の打ち上げと弾道ミサイルの発射では対処が全く違う。
にも関わらず、いかにもミサイルが降ってくるような報道を行うことは、
本来、行うべき安全対策を怠ることにつながることであり、逆に安全を損なわせる行為だ。


このようなミサイル防衛体制をすんなり受け入れる日本の左翼と比べて、
他国はどのような反応を示しているのか。これもあわせて読んでみようと思う。



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“配備反対”“朝鮮半島の非核化を”/南の市民団体が抗議

米国と南朝鮮が弾道弾迎撃ミサイル(THAAD)の朝鮮半島配備を交渉していると、
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが現地時間の1月28日、米国関係者の発言を引用して報じた。
同紙は、「翌週に発表する可能性が高い。裏では妥結に近接した」と伝えた。

これに対し、国防部のキム・ミンソク代弁人は29日の定例ブリーフィングで、
「政府は米政府から協議の要請を受けていない」としながらも、
「THAAD配備は、わが国の安保と国防に資するであろう」と肯定的な見解を示した。


南の統一ニュースによると、反戦平和連帯をはじめ38の市民社会団体は1日、
青瓦台付近の清雲洞事務所前で記者会見を開き、朴槿恵政権にTHAAD配備を断固拒否するよう求めた。



市民団体らは記者会見文を通し、
「中国を標的としたTHAADが南に配備された場合、有事に中国はこれを無力化するため、
 THAAD基地を攻撃目標とするだろう」と指摘したうえで、
「THAAD配備は、自らの安保を犠牲にする結果を招くだろう」と懸念を示した。

また、米国とのMD(ミサイル防衛)システムの連動は
すなわち、米国主導の南・米・日3角MDシステムの再構築を意味し、
THAAD配備は北東アジアにおける軍事的緊張と核軍拡競争を触発するばかりか、
朝鮮半島の平和と統一の障害となり、北東アジアの平和と安定を脅かす
ことになると批判。

「平和協定締結と朝鮮半島の非核化を通じて、平和を実現することを求める」と主張した。

http://chosonsinbo.com/jp/2016/02/20160205suk-2/
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韓国の市民団体も手放しに礼賛出来るかと言えば難しいところだが、
少なくとも彼らの中には現在進行中の自国の軍拡に対して強い危機感を覚えているらしい。


ところで、平和協定締結と朝鮮半島の非核化を求める意見は中国政府にも通じる。
以下の文は、中国外交部からのコメントである。


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【記者】ラッセル米国務次官補は、
弾道ミサイル技術を利用して打ち上げを行うのは国際的義務への重大な違反行為であり、
朝鮮に対して一層厳しい制裁を課すべきであることをさらに力強く証明するものだとした。
また、朝鮮の最新の声明は国連安保理、中国、国際社会に対する蔑視だとした。

これについてコメントは。

【陸慷報道官】現在の情勢下、国際社会の直面する最も差し迫った課題は、
いかにして朝鮮半島の非核化プロセスをしっかりと推進し、平和と安定を確実に維持するかであり、
それ以外の何ものでもない。

ケリー国務長官も先週の訪中時に制裁自体は目的でないことを公に表明した。

中国は6カ国協議の議長国として、朝鮮半島非核化プロセスの真の推進、
関係各国の合意形成のために極めて苦しい努力をしてきた。

6カ国協議が停滞したこの数年、関係国が
圧力や制裁をかけることをひたすら主張する中、朝鮮は核実験を行った。
この意味において、朝鮮は確かに関係国にびんたを食らわせた。
このびんたが誰の顔に食らわせられたかは、分っているはずだ。


中国側は関係国が交渉を通じて朝鮮半島の核問題を解決することを望んでいる。
緊張のエスカレートは望んでいない。だが関係国が執拗にそうするのなら、われわれも阻止できない。

だが中国側が厳粛に強調しなければならないのは、
朝鮮半島の近隣国として、混乱、戦争を断じて認めない。
朝鮮半島の非核化という大きな目標に
いかなる国が自国の利益を持ち込むことを断じて認めないということだ。

http://j.people.com.cn/n3/2016/0204/c94474-9013878.html
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あわせて、イランラジオの解説文も紹介する。



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北朝鮮に対する中国の要請

ガッファーリー解説員

北朝鮮の衛星打ち上げ計画の発表を受け、
中国はこれに関する懸念を表明するとともに、北朝鮮に自制を呼びかけました。

中国外務省の報道官は、「北朝鮮は宇宙空間を平和目的で使用する権利を有している」としながらも、
「北朝鮮は宇宙空間を利用するために、国連安全保障理事会が
 決議を採択することで生じる状況に身をゆだねざるをえない」としました。

衛星打ち上げに関する北朝鮮の動機について、
これは韓国のミサイル防衛システムの配備に反応したものだということができるでしょう。

このシステムの配備は、韓国も日本と同じように、中国や北朝鮮をけん制するための
アジアにおけるアメリカの防衛計画に積極的に参加していることを示しています。


日本もまたここ数日、衝突の可能性に対抗する目的で、
軍事的な流れを強化し、自衛隊を待機させています。



北朝鮮への圧力を増加するための日本と韓国の政府の合意も、
北朝鮮のミサイル打ち上げの動機になっている
ようです。

また同時に安保理の対北朝鮮決議の採択の圧力についても、ある方向で分析することができます。

アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、一部のアメリカの同盟国の
北朝鮮への更なる圧力は安保理も認めるところとなっています。

これに対して中国は北朝鮮への制裁を否定していませんが、はっきりと、
北朝鮮に対するあらゆる措置において、国家の独立した主権を損なうべきではない
という立場をとっています。

実際中国は、自らを朝鮮半島における共産主義システムの支持者であると見せたくないようです。
しかし中国はアジアの自由資本主義体制によって運営され、
軍事・治安面でアメリカに従っている他の国の指示を受け入れることはないでしょう。

なぜならこれらの国が最新鋭の戦争兵器を手にした場合、
共産主義システムよりはるかに危険なものとなるからです。



イラクの大量破壊兵器を調査した国連武器査察団の元委員長、ハンス・ブリックスは、
「アメリカはイラクへの軍事侵攻のあと、北朝鮮が世界最大の軍隊を有する国のひとつであり、
 自国が攻撃された場合に、韓国に多くの被害をもたらす可能性があることを良く知っていた。
こうした中、中国はどんな状況においても北朝鮮に対する軍事攻撃を認めることはないことを示した」
と語りました。

冷戦後のアメリカの一極主義政策や行動は、
この国が単独で世界の警察としての役割を果たしきれていないことを示しました。

一部の政治問題の専門家は、
「北朝鮮の核武装化は北朝鮮政府の野望ではなく、
 朝鮮半島におけるアメリカの敵対、脅迫政策の継続が理由だ」
としています。

もっとはっきりいえば、
アフガニスタンやパキスタン、イラクにおける
アメリカの行動は危機を発生させているだけです。


それは朝鮮半島に危機を発生させているものでもあります。

中国はこのような情勢に注目し、再度北朝鮮だけでなく、東アジア諸国全体に冷静さを求めたのです。

http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/62070

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事実、ガッファーリー解説韻が指摘するように、
中国は米韓日の強硬姿勢を強く非難し、北朝鮮の行為はそのリアクションであるとしながら、
水爆実験や人工衛星の打ち上げは同国の立場を危うくするだけと自粛を促している。

つまり、中国は北朝鮮だけでなく米韓日も非難した上で、
米朝間の平和協定の締結を伴う朝鮮半島の非核化を主張している。


北朝鮮に対して、より厳しい制裁を求めたアメリカに対して、
在米中国大使は「ミッション・インポッシブル」と毅然と答えたらしい。
ここぞという時に米日の権力者になびく日本の主流左翼と比べて、この毅然とした態度。

尖閣諸島や南シナ海を手中に収めようとしているのだと言われる中国のほうが
日本の左翼よりも冷静かつ現実的な評価と提案を行っている。凄まじい皮肉ではないだろうか?


本来、私たち左翼は中国政府やイラン政府、北朝鮮政府の監督下にあるであろうメディアよりも
さらに深い知見を持たなくてはならないはずなのに、言論と表現の自由があるはずの私たちのほうが
政府にベッタリと付き従い、他国を悪魔とみなす言説を拡散させながら自国の軍事化に目を瞑っている。


このような状態から覚醒し、安直な平和主義を克服し、
アジアを脅かすアメリカ軍国主義に対してNoの二文字を突きつけること。

それが今なすべきことなのだと私は思う。


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