goo blog サービス終了のお知らせ 

超心理マニアのためのブログ

マット・イシカワによる超能力研究の文献ガイド

今年のPAはイタリアで開かれた

2013-11-24 | 論文ガイド2
<PA2013(0)>

今年のPA(超心理学の国際会議)は、はじめての
イタリア開催となり、8月の8日から11日にかけて
歴史ある小都市ヴィテルボに、世界から超心理学者を
集めて盛況にもよおされた。

日本からは、明治大学意識情報学研究所の所長であり、
ロンドン滞在中の蛭川立氏、同研究所のメンバーでも
ある、小久保秀之氏および清水武氏らが参加した。

そこで発表された研究について、解説を交えて紹介
していこう。


過去遡及的記憶想起促進実験のメタ分析

2013-09-30 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(6)>

●過去遡及的記憶想起促進実験のメタ分析

これまでに19の実験が報告されているので、次の観点で
分類して、それぞれメタ分析した。

・当初の提案方式5実験
・改善方式14実験

・オンライン実験4
・実験室実験15

・ベムが作成したソフトによる11実験
・他の研究者が作成したソフトによる8実験

・未報告実験13
・既報告実験6

・肯定論実験者8実験
・否定論実験者11実験

・ベムが実験者2実験
・他の研究者が実験者17実験

以上の中で有意であったのは、「ベムが実験者」の場合
のみであった。ゆえに、過去遡及的記憶想起促進実験は、
ベムが実験者のときに限り、特異的に有意になっており、
追試はできていないことが、明らかになった。


過去遡及的記憶想起促進実験の第7追試実験

2013-08-18 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(5)>

●過去遡及的記憶想起促進実験の第7追試実験

社会科学研究ネットワークを介してオンライン実験参加を呼び
掛けた。1年4か月にわたり、なんと2469人の参加があった。

参加者は自由な時間に、オンライン実験を行なった。記憶単語
セットは、ベム論文と同じジャンルだが、異なる単語(第1追試
実験と同じ)を使用した。

結果:偶然平均とほぼ一致し、追試は失敗であった。

●新奇性追求尺度との相関

ベムの報告では、新奇性追求尺度が高い人ほど、過去遡及的
記憶想起促進が起きる有意な相関があった。今回の第1-7
追試実験でも新奇性追求尺度をとってあり、それぞれ相関を
調べた。

結果:7つの実験すべてで、新奇性追求尺度との相関は得られ
 なかった。この点において、追試は失敗であった。


過去遡及的記憶想起促進実験の第6追試実験

2013-08-17 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(4)>

●過去遡及的記憶想起促進実験の第6追試実験

消費行動研究所に登録されているモニターに対して100ドルの
商品券が当たるとして実験に参加を呼び掛けたところ、175人
の申し出(うち女性122人)があった。そのうち一部は対照群
に割り当てられ、実験群には106人が割当たった。(実験群が
100人を超えたところで参加打切りを決めており、結果として
その人数になった。)

参加者にはEメールが送られ、実験はオンラインで行なわれた。
記憶単語セットは、ベム論文と同じ単語を使用した。

結果:実験群は偶然平均を大きく下回り、追試は失敗であった。
 対照群では、練習が事前に行なわれており、練習単語の
 記憶想起は仮説通りに促進されていた。


過去遡及的記憶想起促進実験の第3‐5追試実験

2013-08-16 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(3)>

●過去遡及的記憶想起促進実験の第3追試実験

ニューヨーク大学の学部授業の一環として、学生に実験参加を
要請したところ、124人の申し出(うち女性55人)があった。
(100人を超えたところで参加打切りを決めており、結果として
その人数になった。)

参加学生は実験室に来訪し、所定のパソコンを使い自分のペース
で実験を進める。記憶単語セットは、ベム論文と同じ単語を使用
した。

結果:偶然平均をやや上回り(p=10%)、追試は成功に近かった。

●過去遡及的記憶想起促進実験の第4追試実験

カーネギメロン大学とUCバークレーの学部授業の一環として、
学生に実験参加を要請したところ、109人の申し出(うち女性53人)
があった。(学期末までに100人を超えることを目指したため、
2大学で連携し、結果としてその人数になった。)

参加学生は実験室に来訪し、所定のパソコンを使い自分のペース
で実験を進める。記憶単語セットは、ベム論文と同じ単語を使用
した。

結果:偶然平均を上回り(p=4%)、追試は成功した。

●過去遡及的記憶想起促進実験の第5追試実験

フロリダ大学の学部授業の付加単位取得条件として、学生に実験
参加を要請したところ、211人の申し出(うち女性116人)があった。
(200人を超えたところで参加打切りを決めており、結果として
その人数になった。)

参加学生は実験室に来訪し、所定のパソコンを使い自分のペース
で実験を進める。記憶単語セットは、ベム論文と同じ単語を使用
した。

結果:偶然平均を下回り、追試は失敗した。


過去遡及的記憶想起促進実験の第1第2追試実験

2013-07-07 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(2)>

●過去遡及的記憶想起促進実験の第1追試実験

消費行動研究所に登録されているモニターに対して100ドルの
商品券が当たるとして実験に参加を呼び掛けたところ、112人
の申し出(うち女性88人)があった。(100人を超えたところ
で参加打切りを決めており、結果としてその人数になった。)

参加者にはEメールが送られ、実験はオンラインで行なわれた。
記憶単語セットは、ベム論文と同じジャンルだが、異なる単語
を使用した。

結果:偶然平均を大きく下回り、追試は失敗であった。

●過去遡及的記憶想起促進実験の第2追試実験

上のモニターに対して新たな参加者を呼び掛けたところ、158人
の申し出(うち女性119人)があった。(150人を超えたところで
参加打切りを決めており、結果としてその人数になった。)

参加者にはEメールが送られ、実験はオンラインで行なわれた。
記憶単語セットは、台所用品、電子機器、身体部位、スポーツ
の4ジャンルの単語を使用した。

結果:ちょうど偶然平均であり、追試は失敗であった。


過去遡及的記憶想起促進実験の大規模追試

2013-05-16 | 論文ガイド2
<予感実験の追試(1)>

ベムの予感実験のうち、過去遡及的記憶想起促進実験について、
大規模な追試が行なわれ、昨年末に次の論文で発表された。

Galak, et al., Correcting the Past: Failures to Replicate Psi,
Journal of Personality and Social Psychology, 100(3) pp.407-425, 2012.

まず、追試の対象である、ベムが行なった過去遡及的記憶想起促進実験
を解説しよう。なお、有意確率pは0.05よりも小さく0により近いほど有意、
効果サイズdは0で偶然平均(効果なし)、0.5をこえるあたりから「大きな
効果」という、だいたいの目安である。

実験概要:
基本実験では、学生100人の参加者に対して48の単語(食品、動物、
職業、衣料品の各ジャンルから12単語ずつ選定)を固定した順番で
3秒ずつ呈示するので、それぞれイメージするように教示する。
その後、参加者は覚えている単語を思い出してタイプするように
求められる(覚えるように言われていないので驚く)。その作業が
終わったならば、各ジャンルから6単語ずつ無作為に選定した24単語
が画面にランダムな順番で3秒ずつ呈示される。次に、その24単語
がランダムに一度に表示され、参加者はその中から6つの食品単語を
クリックして(クリックすると文字が赤くなる)、6つの空欄にその
スペルを打ち込む。それが終わると画面の単語の順番が変わり、
こんどは6つの動物単語をクリックしてスペルを打ち込む。同じこと
を職業単語と衣料品単語でも繰り返す。
改良実験では、学生50人に対して、記憶時の単語をジャンルごと
順番に呈示することにしたうえ、作業時には、各単語をイメージして
タイプするように要求して行なった。
仮説:
一般に何度も見たり作業したりした、なじみある単語は覚えやすい。
過去遡及的記憶想起促進実験では、事後的であっても将来呈示される
作業単語の記憶想起が促進され、事前により多く想起されると考える。
結果:
基本実験は(p=0.029, d=0.19)で、有意な小さな効果であった。
新奇性追求尺度が高い人ほど、過去遡及的記憶想起促進が起きる有意な
相関があった。その高得点者にかぎった分析は(p=0.0003, d=0.57)で
きわめて有意で(やや大きな効果)、低得点者では偶然期待値であった。
改良実験は(p=0.002, d=0.42)で、きわめて有意(dが2倍)だった。
新奇性追求尺度が高い人ほど過去遡及的記憶想起促進が起きるという
相関はなかった(高得点者も低得点者もともに得点が高かった)。

本追試論文では、以上のベムの実験を、7つの実験で追試している。
また、これまで行なわれた追試を総合的にメタ分析している。


乱数発生器の多重測定が負の信頼性を示す

2013-04-09 | 論文ガイド2
<PA2012(26)>

●ポスター発表
乱数発生器の多重測定が負の信頼性を示す
清水、石川&蛭川(明治大学意識情報学研究所)

乱数発生器によるフィールド意識測定において、乱数発生機器を
並列に多数設置して測定すれば、全体のデータの信頼性が上がる
と見込まれる。78の野球試合にて、野球場にもちこんだ機器群
で、多重測定した。

その結果、仮説に反して信頼性は上がらず、同じ機種の機器間で
は、むしろ負の信頼性(互いに効果を打ち消すような現象)が
測定された。通常の物理測度のように扱えないようだ。


未来を感じる実験の追試

2013-04-08 | 論文ガイド2
<PA2012(25)>

●ポスター発表
未来を感じる実験の追試
ロウ、グライアーソン&ロマス(特異的心理過程研究所)

ベムの予感実験については、ベムの発表後に追試が相次ぎ
 成功:Batthyany 2010、Ryan 2011
 失敗:Ritchie, Wiseman & French 2012、Robinson 2011
と結果が分かれている。

そこで、ロウらも追試を行なった。
その結果は、失敗(偶然平均)であった。
誰もがベムのように安定して結果を残せるわけではない。


認知的・感情的共感と超常体験の関係

2013-04-07 | 論文ガイド2
<PA2012(24)>

●ポスター発表
認知的・感情的共感と超常体験の関係
アレジャンドロ・パラ(アルゼンチン・アメリカンオープン大学)

テレパシー体験者、オーラ視体験者、霊の体験者、ヒーラーなどが
他者理解(認知的共感)と、他者との感情共有(感情的共感)の
度合いが高いと仮説して、調査した。

その結果、一部には仮説通りの関係が見られた。


徹底した神秘主義に寄せて

2013-03-31 | 論文ガイド2
<PA2012(23)>

●ポスター発表
徹底した神秘主義に寄せて
デイヴィッド・モンクリーフ(JSE)

アリストテレスの4原因、カントの判断力批判、シュレーディンガー
の生命論をたどり、あらゆる現象が機械的に説明できるという
形而上学的前提に立つ世界観に問題があることを明らかにする。

超自然的な現象が、機械的な説明にあてはまらないからといって、
ありえないとするのは、誤りである。


ガンツフェルト研究の統計的再現性について

2013-03-30 | 論文ガイド2
<PA2012(22)>

●ポスター発表
ガンツフェルト研究の統計的再現性について
マックス・デラクシャニ

過去のガンツフェルト研究のデータから、今後標準的な
ガンツフェルト実験を行なったときに、どの程度の成果が
出ると予想できるか、統計的に分析した。

その結果、あらかじめESPが得意な被験者を選抜して
行なう実験では、偶然期待値が25%のところ、40%もの
正解が期待できるが、選抜しないで実験すると、正解は
27%ほどにとどまると算出できる。

すなわち、選抜被験者を使った標準的なガンツフェルト
実験の場合、8割以上の確率で有意な結果が得られる
見込みがある。


ロールの研究から心霊研究の歴史を振り返る

2013-03-29 | 論文ガイド2
<PA2012(21)>

●ポスター発表
ロールの研究から心霊研究の歴史を振り返る
カルロス・アルヴァラド(米アトランティック大学)

ウィリアム・ロールの60年代から70年代のポルターガイストの
研究論文・著書では、多くの過去の心霊研究が引用されており、
心霊研究の歴史を追うのに、かなり有効である。


ある超心理学者の唱歌:スタンリー・クリップナー

2013-02-14 | 論文ガイド2
<PA2012(20)>

●パネルディスカッション2

ある超心理学者の唱歌:スタンリー・クリップナー
・クリップナー:文化を横断する超越者(パラ)
・何がクリップナーを超心理学にいざなったか:ラインとの書簡(フェザー)
・45年間にわたるクリップナーの超自然とのかかわり(ヴァンデキャスル)
・逸脱体験における睡眠の役割をつきとめる(シモンズ=ムーア)
・ルネッサンスをもたらした男(ピルキントン)


ウィリアム・ロールを偲んで

2013-02-13 | 論文ガイド2
<PA2012(19)>

●パネルディスカッション1

ウィリアム・ロールを偲んで
・ロールの超心理学への貢献(アルヴァラド)
・ロールはいかにポルターガイストから霊を取り出したか(クリップナー)
・RSPKを名付けた男:ロールとポルターガイストの謎(オーバーバッハら)
・ロールのESP実験研究(パーマー)