RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

お菓子好き。F1好き。
美術館行くの大好き。
買い物も大好き。
休日に全力で生きるOLの日記(笑)

没後90年 鉄斎 TESSAI

2014-06-20 21:30:00 | 美術
見てきました

出光美術館

会期は2014年6月4日から2014年8月2日。

富岡鉄斎(1836-1924)
彼が生きたのは、幕末・明治・大正と激動の時代。
学問の道を志し、儒学者として大成する傍ら、書画の制作に勤しみました。
当時の東西画壇においては、西欧化が進んでいました。
その中で、鉄斎は先達文人たちが遺した想いに共感。
多くの書物を通じて学び得た世界観を、自らの絵筆により描き出しました。
若い頃から日中のさまざまな書画の優品に触れ、それらの画法に倣った鍛錬の成果が、最終的に見事に混ざり合って、独自の画境を築きました。
没後90年を迎えた近代文人画の巨匠・鉄斎。
今回は国内屈指の出光コレクション約70件の展示です。

《1.若き日、鉄斎の眼差し -学ぶに如かず》
鉄斎は石門心学を家学とする京都の法衣商・富岡家に次男として生まれました。
若い日から幅広く学問・文芸の道に親しみました。
鉄斎の学びの精神は、実学を基本とし、書物で知り得た世界を実感するために、たくさんの書画にもふれていきます。
中でも大田垣蓮月との出逢いは、若き鉄斎の人格に大いなる刺激を与えます。
老いた尼僧のお世話をする生活の中で、鉄斎は人生の享楽と悲哀の実相を学び、また和歌の情緒に、俳画風の素朴な絵で答えることも、この頃覚えました。

「富士山図」
墨の濃淡で描かれたもの。
鉄斎は明治8(1875)年、富士登頂。
天皇が東海地方へ巡遊されるにあたって御興の付き添ったときです。
すっと高くスタイルのいい富士山です。

「十二ヶ月図」
京都・北白川、心性寺の尼僧、大田垣蓮月と同居し、身の回りの世話をしながら学問に励んだ鉄斎。
これは蓮月の和歌に俳画風の簡略な絵を添えたもの。
展示されていたのは4月から9月。
シンプルながらに季節の美しさが表現されています。

「北山溪図巻」
巻物に描かれているのは北山渓谷の景観を描写したもの。
山の中の皮の流れ、そこに浮かぶ船などずらっと描かれています。
細部まで丁寧です。

「高賢図」
戦国・三国・普時代より明時代に至る高賢12人を12幅に描いたもの。
顔は精密に描かれ、服も彩り鮮やかです。

《2.清風への想い -心源をあらう》
俗世から離れて自娯適意の自由な人生を歩む文人の生き方に憧れた鉄斎。
本格的に学問の道を究めんと進んでいきます。
その中で"清風"、煎茶・喫茶の世界へと憧れを抱きます。
俗世からの離脱といっても容易なことではなかったため、居ながらにして精神のみを解き放つために、喫茶のこころに心酔してゆくのです。
その上で、単に自分一人の世界観だけにとどまらず、文人的営みを通じてたくさんの人々と語り合い、学ぶことの大切さを理解していきました。

「陽羨名壷図巻」
宜興窯に関する書物"陽羨茗壷系"に載っている明時代末頃の名工の名とそれぞれの急須を描いたもの。
茶を飲も楽しむ人物なども描かれています。

「墨竹図」
扇子の形をした中に、すーっと伸びる竹が描かれています。
しなやかで見ていて気持ちのいい作品です。

「高士煎茶図」
煎茶の起源、中国・唐の陸羽を鉄斎はしばしば描きました。
描かれているのは崖の岩間。
煎茶を入れる高士。
大自然の中でお茶を楽しむことは当時の文人たちのあこがれであったそう。
確かに、身も心もリラックスできそうですね。

「漁弟漁兄図」
日の暮れゆく漁村を描いたもの。
墨を荒々しく擦り付けるようにしてもやに包まれる情景を描いています。
漁をする者、終えて酒場へ行く者など自然の中に生きる人々が温かい視線で捕らえられています。

《3.好古趣味 -先人への憧れと結縁》
鉄斎の師は書物の中で出逢った敬愛すべき古人たち。
若いころから古人たちの古蹟を訪ねる旅をし。
先賢の遺愛品や縁の品々を見つけたならば、それを手元に置きたいと願い。
著名な画家の古画にふれては模写を試みたり。
このような"好古癖"が、鉄斎の書画、骨董を愛玩する蒐集癖へと転じていったようです。

「蘭亭曲水図」
同じテーマを描いたものが2つ並んでいます。
右は鮮やかで上流にも人がいて上から流れてきている様子が分かります。
左は細密で人物などは下流に集中しています。
「蘭亭曲水図」なんかはこれまでの鉄斎の作品やエピソードからもすごく好きそうな題材ですね。
このテーマ、様々な文人画家も描いていますから。

「米法山水図」
"米法山水"という名称で親しまれる山水画。
米点と呼ばれる楕円形の墨点を施し描かれています。
墨だけで描かれた山々は幻想的。

「口出蓬莱図」
仙人の口から煙のように蓬莱山が出てくるという不思議な作品。
毎日、日の暮れるころ。
北西に向かい目を閉じてこぶしを固く握り、崑崙山を思い続けること30年。
神仏のありさまをつぶさに思い描けるようになったそうです。
これはそれを表現したもの。
ユーモラスで思わず笑ってしまいます。

「明恵上人旧廬之図」
華厳宗の明恵の住んでいた高雄の山水。
高雄の山は紅葉の名所だそう。
紅葉で色づき明るくとても美しい。
そうした所に住めば仙人になれる素質が増す、と書かれています。
まさに理想の世界なのかもしれません。

《4.いざ、理想郷へ》
鉄斎の理想郷への抱く想いは高まるばかり。
江戸時代の文人が憩った奈良・月ヶ瀬渓谷の梅林。
中国画に倣った"青緑山水"など、虚実入り混じる不思議な空間が描かれるようになりました。

「月ヶ瀬梅溪図」
奈良・月ヶ瀬渓谷の梅林は江戸時代の文人たちも憩った景勝地。
梅の芳香が漂う世界はまさに桃源郷だったでしょう。
緑の山々の中にピンクの点が華やかです。

「放牛桃林図・大平有象図」
6曲1双の屏風。
草原に解き放された牛。
咲き乱れる桃。
水墨と濃淡で描かれた景色はこれまた不思議な癒しの世界。

「青緑山水図」
色彩がきれい。
"青緑山水"とは群青や青緑の顔料を使って描く着色山水画。
鮮やかでグラデーションなどもとてもきれい。
こちらは眩しいような理想郷です。

「看山清談図」
渓流が勢いよく注ぐ水辺で2人の高士が座っています。
優しい色使いです。

「杏華村暁図」
牛飼いの童が指さした方には杏子の花咲く村。
明るい色彩で人々の生活が描かれ、これも理想郷です。

〈特集〉 扇面を愛す
ここでいくつかの扇が展示されていました。
鉄斎は、お祝いや良縁、仏事や時節の交流などに扇子を送っていたそうです。
鉄斎にとって扇子は絵手紙のようなものだったそう。

「石榴果図」
色鮮やかな柘榴。
柘榴は子孫繁栄などを表しますから、お祝いごとでしょう。

「福内鬼外図」
おたふくが笑いながら鬼を追い払う場面。
かなりおもしろい作品です。
もらったら嬉しいだろうなぁ。

《5.奇跡の画業 -自在なる境地へ》
生涯にわたって描きつづけた理想郷の画は、80歳代を迎えて見事に大成。
"青緑山水"の色彩美から離れ、一面を水墨で覆う画風の実験を経て、これらが相互に融け合った鉄斎独自の瀟洒な画風を完成させました。

「佛鑑禅師図」
墨のみで描かれた世界。
山とその中腹には庵があります。
川が流れ穏やか。
これがたどり着いた理想郷なのかな。
のびやかです。

「蓬莱仙境図」
蓬莱山を描いた最晩年の大作。
大胆な墨の線が目をひきます。
その線は山が動き出しそう、生きているかのようです。

以上になります。
とても面白く、また不思議な世界が楽しめる展示でした。
追い求めた理想を順を追って私自身も追っていけて、その世界に入り込んで鑑賞できました。
癒しの世界です。



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ジャン・フォートリエ展

2014-06-19 21:30:00 | 美術
見てきました

東京ステーションギャラリー

会期は2014年5月24日から2014年7月13日。

ジャン・フォートリエ(1898-1964)
フランスの画家、彫刻家です。
第二次世界大戦後のフランスの芸術運動であるアンフォルメルの創始者とされています。
今年は没後50年。
初期から晩年までを紹介する日本初の本格的な回顧展です。
主要な6つの個展での出品作を中心に約90点で構成されています。

《1.レアリスムから厚塗りへ 1922-1938》
ジャン・フォートリエはパリ生まれ。
少年時代にロンドンに移住しています。
美術学校に入学し、テート・ギャラリーでターナーの作品に感銘を受け、生涯高く評価していたそう。
第一次大戦のため1917年に通訳・救急看護隊員として応召。
毒ガスで負傷しています。
ここでは復員したフォートリエが制作を再開するところからになります。
1922年には"サロン・ドートンヌ"に出品。
著名な画商とも契約し順風満帆でしたが、1929年に始まった世界恐慌のあおりを受け、契約は打ち切り。
キャリアは中断されます。
このとき、アルプスでスキーのインストラクターをするなどして暮らしました。
パリに戻るのは第二次世界大戦中の1940年ごろとなります。

「管理人の肖像」
灰色の壁を背景に顔が緑色の老婆が描かれています。
黒いドレスを着、両手は前で組んでいますが、紫色。。
なぜこの色を選んだのか……
色に目がとらわれがちですが、その描写力はすごいです。
圧倒的な存在感。
だからこそ色が気になる。。。
笑っているようにも見える老婆の表情も異様です。

「静物」
こちらはセザンヌ風とでも言うべきか。
テーブルの上にはフライパン、果物、魚、カゴ、瓶……
重厚な印象。

「森の中の男」
森の中の木々を背景にこちらを見ている男性が描かれています。
深い緑色の帽子をかぶり、茶色のコートを着、両手はポケットに入れています。
ちょっと遠くを見ているような視線。
深い洞察力が伺えます。
ここからは肖像画がいくつか続いていました。

「左を向いて立つ裸婦」
サンギーヌによる素描です。
これがすごい。
こんなにもしっかりした描写ができるなんて、と。
リアルすぎます。

ここからは『黒の時代』とよばれているときの作品。
1920年代後半、特に1926年から27年の1年を「黒の時代」とフォートリエは言っています。
また、プリミティブなものに関心のあったということで、アフリカの黒人芸術にも着想を得ています。
このあたりの一連の作品ではリアリズムから遠ざかっていく様子が伺えます。

「美しい娘(灰色の裸婦)」
黒というよりも灰色の背景。
描かれている裸婦は背景の色と溶け込むようで、体の線ははっきりしません。
表情もなく、どこが美しいのか、と聞かれたら分からない作品。

「黒人女性の頭部」
絵の具が厚く塗られた作品。
力強さを感じます。

「黒い花」
黒い背景に赤や黄色の花が溶け込むかのよう。
闇に咲く花、といった感じです。
絵の具を削ってできた線が花瓶や花の形を縁取ってます。

「鍋に活けた花」
こちらも黒い背景に大きな鍋。
そこには白とオレンジの花。
輪郭は彫られています。
暗い背景に明るい色彩が花火のようでもありはかなくも見えます。

「羊の頭部」
暗い背景に浮かぶのは羊の頭部。
大きい筆致で描かれ、赤い肉の繊維がこびりついているかのように見えます。

「兎の皮」
こちらは暗い背景に吊るされた兎が描かれている作品。
少ない筆致で大胆に描かれていますが、その対象はしっかり描かれています。
見ていて少し怖くなってくる気もします。

このあとは彫刻が数点ありました。
フォートリエは1927年から29年と1935年から43年の2つの期間に彫刻を約20点ほど制作したのだそう。

《2.厚塗りから「人質」へ 1938-1945》
1929年の世界恐慌のあおりを受け、フォートリエは画業を中断。
アルプスへ行き、スキーのインストラクターをしたり、ナイトクラブを経営するなどして生活しました。
第二次世界大戦でドイツに占領されたパリに戻ったのは1940年ごろ。
アトリエを構えて以前より色彩豊かな厚塗りのマチエールを太い輪郭線で囲う独特の作品を生み出します。
カンヴァスはより絵の具を吸収しやすい紙になりました。
1943年にはドゥルーアン画廊で最初の回顧展を開催。
しかし同年、レジスタンス活動を疑われ、ゲシュタポ(ドイツの秘密国家警察)に拘束されます。
なんとか逃げ、パリ郊外のシャトネ=マラブリーに匿われます。
近くのフレーヌ監獄ではドイツ軍によってフランス人レジスタンスの処刑が行われていました。
これが代表作「人質」誕生のきっかけとなったのです。

「醸造用の林檎」
かなり絵の具が残っています。
緑色の背景に白い色を丸く重ね、一部が赤くなっています。
うーん、確かに林檎のようにもみえますが。。

「梨と葡萄のある静物」
こちらのほうがまだ形がわかるかな。
青系でまとめられ爽やかな印象です。
白い色も明るく見せています。

さて、ここからはちょっと重い作品ばかりになってきます。
「人質」は1945年10月解放後数ヶ月のパリで発表されました。
極限状態における人間の存在をマチエールとたどたどしい線描によって残そうとした作品。
アンドレ・マルロー(後のフランス文化相)の序文が掲載されたカタログも制作されました。
拷問を受け、片目がない人、口のない人、鼻のない人……
それは衝撃を与えました。

「銃殺された男」
灰色の背景になにかの塊。
白とピンク色で彩られた塊。
人と見ようとして考えて。
仰向けに倒れているようにも見えます。

「人質 No.3」
これも塊。
左向きの顔、かな。。
重苦しい雰囲気が漂っています。

「悲劇的な頭部(大)」
ブロンズの彫刻。
人の頭部ですが、左半分顔がありません。
衝撃的です。

「人質の頭部」
ポスターにも使われている作品。
暗い背景に白い絵の具の厚塗りで表現されたのは人の頭部。
暗い部分は目でしょうか。
虚ろで絶望を見ている、、というか絶望しかないのでしょう。。

《3.第二次世界大戦後 1945-1964》
「人質」は解放直後のパリに衝撃を与えました。
そして1952年、批評家のミシェル・タピエはアンフォルメルの先駆者としてフォートリエを位置づけます。
1959年には来日し南画廊で個展も開催しました。
1960年にはヴェネチア・ビエンナーレ内で回顧展を開催し大賞を受賞。
1964年にはパリ市立近代美術館で大回顧展。
同年、66歳で亡くなりました。

「糸巻き」
淡い水色の背景に糸巻きを描いたもの。
戦後、と知ったからかもしれませんが穏やかに見えてきます。
ですが、絵の具は厚いです。

「籠」
薄い緑の背景に黒い塊。
マチエールで形を表現しています。

「オール・アローン」
フォートリエはジャズを好みました。
ホテルを経営していた際にはアメリカからジャズ奏者を紹介したりもしていたそうです。
この作品もジャズの曲名から。
色は茶色ですが軽やかな印象です。
ただしこの辺りからは何を描いているのか分からなくなってきました。
抽象的で、よく知られたアンフォルメルの画家としてのフォートリエの作品です。

ジャズを好んだフォートリエでしたが、制作時は静寂を好みました。
アトリエには誰も入れなかったそう。

「こちょこちょ」
これは名前の響きがかわいらしくて。
青い色が使われ爽やかな印象です。

「黒の青」
これ好き。
薄い灰色の地に、明るい青色が載せられ、ひっかいたような跡が入っています。
少し黄色も入っていて明るい世界が見えるような気がするのです。

以上になります。
とてもとても面白い展示でした。
もちろん、「人質」シリーズなど見るのも重い作品がありましたが、それらを含め画業を辿って見ることができ、勉強にもなりました。
初期のリアリズムからアンフォルメルへ至るまで。
大変興味深いものでした。



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神楽坂ランチ

2014-06-18 21:30:00 | 食べ物
先日久しぶりに神楽坂でランチしてきました。
ラビチュードというお店で1,500円のコースで前菜、メイン、デザートにドリンクというもの。

トップの写真はデザートの"フロマージュブランのムース"
フランボワーズとマンゴーのソースの色もかわいらしい。
コクがあっておいしい。


前菜は"ズワイガニとアボカドのマヨネーズ仕立て"
すっごくなめらかでおいしかった!!
これ食べた瞬間、「あぁ、この店正解!!」って思った。笑


"厚切り豚肩ロースのポワレ 黒コショウ風味"
粗めに砕かれたコショウがスパイシーな感じがしてとてもおいしい!!

写真見てもわかるように野菜たっぷりです。
これも嬉しい。
2,100円のコースもありましたが、1500円でお腹いっぱい。
2,100円だと温野菜で"ホワイトアスパラガス"があったのでそれ食べたかったけど……
うぅ。。ホワイトアスパラ……

13時ちょっと前に空席確認してから行ったのですが、1席空いていただけでした。
とても混雑しています。
味もいいし、値段も安い。
これはもう一度行きたい!!



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藤井達吉の全貌 野に咲く工芸 宙を見る絵画

2014-06-17 21:30:00 | 美術
見てきました

渋谷区立松濤美術館

会期は2014年6月10日から2014年7月27日。

今回は近代工芸の先駆者、藤井達吉(1881-1964)の全貌展。
後程触れますが、独学で大きな展覧会に出展することもなく制作を続けていたため記録も少なく、近代美術史で取り上げられることもありませんでした。
しかし、近年、その活動が見直されるようになり、展覧会の機会も増えてきました。
東京での藤井の展覧会は18年ぶりとのこと。

藤井の理想は「工芸家が同時にそれ自身が画家でもあり、建築家、彫刻家でもある」こと。
工芸は生活の中の存在であることを目指し、大衆へ向けた眼差しを持ちづつけました。
その活動は、七宝、刺繍、染色、金工、木工、陶芸、手漉き和紙。
日本画、墨画、油彩画、木版画、装丁など多岐に渡ります。
今回はそういった藤井の全盛期の作品を含め、全貌を展観する規模で構成された展示です。

まずは簡単に藤井について。
幼い頃から手先が器用だったそうで、"針吉"、"凧吉"とも呼ばれていたそうです。
1892(明治25)年に棚尾小学校を卒業すると、木綿問屋の尾白商会に奉公に出ます。
この会社では朝鮮半島に渡り砂金を金塊へ鋳造する仕事などをしました。
帰国後は美術学校への進学希望を父に伝えますが許されず、名古屋の服部七宝店に入社。
セントルイス万博で仕事をするために1904(明治37)年に渡米。
この際にボストン美術館で東西の美術品を目にする機会を得ます。
これが人生の転機だったかもしれません。
帰国後、服部七宝店を退社。
1905(明治38)年、上京し美術工芸家としてのキャリアをスタートさせるのです。

明治の終わりから大正時代にかけて、吾楽会、フュウザン会、装飾美術家協会、日本美術家協会、无型などの前衛的なグループに参加。
当時の気鋭の画家・彫刻家・工芸家と親しく交わりました。
型にとらわれない斬新な作品を生み出します。
また、家庭婦人向けの工芸の手引書を執筆。
更に官展に工芸部門を加えるための運動を行い、これは大正12年の帝国美術院への美術工芸部門設置という形で実を結びました。

昭和に入ると次第に中央から離れていきます。
大きな展覧会に出品することも、画商に作品を売り込むこともしなかったため、記録は少なく、近代美術史で取り上げられることは少なくなっていきました。
後半生は郷里での後進指導に重きを置き、特に、瀬戸の陶芸や小原の和紙工芸の現在の発展の基礎を築きます。
1964(昭和39)年、永眠。83歳でした。

「草木図屏風」
2曲1隻の屏風。
名前から見ればよくある作品。
ですが、これは木を彫ってあるもの。
そこに螺鈿の花などがちりばめられています。
変わっていておもしろい。

「うるし深山(裏:水辺の石)」
2曲1隻。
金色のように見える地に、白い水が流れる山の景色。
葉は色づき、山頂には金が施されています。
秋の景色。

「大島風物図屏風」
2曲1隻。
すごく素敵です。
藤井は1916(大正5)年川端龍子、鶴田吾郎らと伊豆大島へ旅行へ行きます。
この作品はその時の大島の記憶。
あらわされているのは椿の木々の間をあるく女と牛、そして海の見える景色。
金の布地の上に赤や青のビロード地の色布を、女の頭巾や前掛けには絣の布地をそのまま貼り付けています。
輪郭線は二重に細ひもを縫い付けて表現し、その上から着色も。
このような屏風があるなんて、という驚き。
とても温かみのある作品です。

「椿」
こちらも椿。
木に何かかかっているのですが(!?)寒さ除け!?
それとも、お祀りするみたいな感じなのかなぁ……
落ちた椿の花の色が鮮やかで美しいこと。
幻想的です。

「薊図」
チラシにも使われている作品。
2曲1双。
右隻が白い花。
左隻が赤い花。
これほどまでに大きくアザミを取り上げるとは。
その美しさにうっとりです。

「日光(朝)」「日光(昼)」「日光(夜)」
日光の景色を描いたもの。
(朝)は1本の白樺がすーっと伸び、若々しい印象です。
(昼)は紅葉の山。流れ落ちる滝の白さが眩しい。荘厳な空気感です。
(夜)は中禅寺湖畔。水面には山の影が映り込んでいます。手前には大きな枯れ木。空には星が輝き、これがまた素晴らしい。
静寂が漂うとともに、澄んだ空気も伝わってきそうです。

「草花図(裏表/表:藤井久和子)」
藤井にはは姉(篠)と二人の妹(くわ・ふさ)がいました。
また早くに母をなくした姪(悦子)を長く面倒見ていました。
この姉妹と姪はみな手芸を得意としていたそうで、藤井とともに制作し、当時の主要な展覧会にも出品していました。
そして賞を受賞するなどしていたそうです。
この作品も片面はくわの作品。
手先の器用さやセンスは遺伝なのでしょうか。
素晴らしいです。

「海辺の月」
なんだかマグリットを思い出しました。
竹のようなものが描かれ、空にはピンクの雲。
不思議な不思議な世界です。
色彩の組み合わせも面白く、大好きな作品。

「土星」
こんなにも変わった作品、見たことない。
掛け軸に描かれているのは土星。
暗い宙に浮かぶ輪のある土星。
周りには星が煌めいています。
星には金箔が使われているそうです。
すごく素敵な作品です。

藤井は日本画家としては1921(大正10)年に院展初入選。
院友にも推されたそうです。

「染付けあざみ模様ティーポット」「染付けあざみ模様小鉢」
藤井の初期の工芸作品。
これは絵付けのみだそうで、青であざみを描いています。
藤井作品、椿も多いけどあざみも多いなぁ……
可憐な花がかわいらしい。

「茶入(ゆめよ夢)」
楽焼で成形から絵付けまで手掛けたもの。
形も素朴です。
名前がいいな。

「草花図(茶室天井画)」
サクラソウなどの様々な花が、大きさ約40cmほどの板に描かれています。
藤井の後援者である、さる繊維会社の実業家の自宅に茶室を備えるにあたって、天井を飾るために描かれました。
この茶室は取り壊されてしまいましたが、天井画だけは残されました。
描かれているのは道端に咲いているような花たちばかり。
侘び寂びの茶室の中にはふさわしいのでしょう。
柔らかな線で描かれ、優しい印象です。

「創作染織図案集(限定50部のうち15号)」
1933(昭和8)年、文雅堂刊行。
図案は藤井、彫師は山岸主計、摺師は西村熊吉。
モチーフは草花で装飾的になっています。
おしゃれです。
紙は岐阜の"小原和紙"
このために特注で梳かせたものだそう。

「静物・花」
青い花瓶に不思議な花。
ルドンのグラン・ブーケを思い起こさせます。
色彩の組み合わせなど好みです。

2-15「大島遠望」
数少ない油彩です。
噴煙たなびく伊豆大島を描いています。
藤井は伊豆大島を甚く気に入っていたそうです。
私も行ってみたくなりました。
もちろん、椿の季節に。

このあたりには着物や帯などもありました。
親しい人たちに贈っていたそうです。
"使ってこそ工芸"と考えていた藤井の言葉どおり、贈られた人も使っていたそうで、その後もありました。

そこまで期待していた展示ではなかったのですが、とてもとてもおもしろい展示でした。
行ってよかった!!
おすすめの展示です。



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クールな男とおしゃれな女 -絵の中のよそおい-

2014-06-16 21:30:00 | 美術
見てきました

山種美術館

会期は2014年5月17日から2014年7月13日。

めまぐるしく移り変わるファッションの世界。
今回は、江戸絵画や浮世絵の粋なよそおい、近代・現代の日本画や洋画に描かれたモダンなよそおいまで、各時代の男女の着こなしに注目した展示です。

《第1章:クールな男》

安田靫彦「出陣の舞」
戦国時代のおしゃれ(奇抜!?)番長といったら信長でしょう。
右手には扇子を持ち、幸若舞「敦盛」を踊る信長。
桶狭間の戦いを前に清洲城でのこと。
着ている小袖は左右で色、模様が異なる片身替わりのもの。
これは戦国武将の間で流行ったのだそう。
穏やかな色彩で信長のイメージに対するパンチは足りない気分。
(何を求めているのか……笑)

猪飼嘯谷「楠公義戦之図」
この作品好き。
以前にも取り上げています。
何が好きって楠正成の顔。笑
すごく凛々しくてかっこいいのです。
岩の上で弓を持ち、崖下を見下ろしています。
かっこいいわ~。
本当にかっこいい。
え!?装い!?
戦の場面だもん、鎧着てたよ。

前田青邨「異装行列の信長」
描かれているのは16歳の信長。
妻となる濃姫とその父である斎藤道三に会いに行く場面です。
髪の毛は茶筅のよう。
腰には火打ち袋、瓢箪をぶら下げています。
そして袴は虎と豹の皮の半袴。
これぞ信長ですわ。
どう見てもあいさつに行く恰好ではありません。
ただ、対面場所に着くや正装に着替えたのだそう。

守屋多々志「慶長使節支倉常長」
これも以前に取り上げたかな。
4曲1双の屏風です。
柱の並ぶ宮殿内。
宮殿の壁際に腰掛け、外を眺める男性。
市松模様の床が目をひきます。
場所はローマ。
男性は支倉常長。
遠い日本を思い出しているのでしょうか。
紋付き袴姿で白に水玉模様の小袖がモダンな印象です。

《第2章:おしゃれな女》

磯田又一郎「花の中」
蘭や百合の花が咲く中、描かれているのは横向きの白いワンピースの女性。
幻想的で美しい。

伊東深水「婦人像」
描かれているのは映画界の大女優小暮美千代。
胸元が大きく開き、大きな白い襟のついた赤い花柄のドレスを着ています。
白い帽子に赤い長手袋を着け、黒いテーブルに左手を付け右手は肘を立てて頬に当てています。
そのテーブルには上半身が鏡のように映り込んでいます。
妖艶って感じです。
軽く手玉に取られそう。
(自分、女ですが……)
背景は金色でこれまたゴージャスな印象を与えています。

森田曠平「曲水の宴」
「曲水の宴」
水に流れてくる盃が自分の前を通りすぎる前までに詩歌を詠み、盃の酒を飲んで次に流し……
という行事。
王義之の蘭亭序なんかで有名ですね。
これはもともと男性のイベント。
それを女性のみで描いているのです。
様々な着物で着飾った女性たち。
華やかです。

鏑木清方「伽羅」
横になろうとする女性が描かれています。
枕は髪に香を焚くための伽羅枕。
中に香炉が入るのです。
女性の体はしなやかに曲線を描き美しい。

上村松園「杜鵑を聴く」
青色の着物が美しい女性が左手を耳の方に上げ、耳を澄ます仕草をしています。
杜鵑の声がこちらにも聞こえてきそう。
思わず自分も耳に手を当てたくなる作品。
松園は着物に季節感があり、どの作品も美しいです。

伊東深水「春」
西の松園、東の清方
美人画の2人の巨匠の少し後に活躍した深水。
上の2人に負けず劣らずとても素敵です。
描かれているのは2人の女性。
ほんのりウェーブした髪にモダンな着物を着て、顔を寄せ合いひそひそ話をしています。
可愛らしい。

《第3章:よそおう男女》

作者不詳「輪踊り図」
17世紀の作品です。
男女が屋外で輪になり踊っています。
手には扇や鼓を持ち楽しそう。
男女ともに小袖ですが、男性は無地、女性は鹿の子絞りなどの柄物。
それぞれ描き分けています。

池田輝方「夕立」
6曲1双の屏風。
突然の夕立。
神社の境内で雨宿りする人を描いた作品。
左隻は大きな木の下にある塀の陰に2人。
右隻は空を見上げたり、濡れてしまった着物を絞ったりする人が。
この着物を絞る仕草が素敵です。
袖を口にくわえ、裾をぎゅっと絞っているところ。
日常をお洒落で美しく描き出してます。

以上になります。
以前に見たことのある作品も多いのですが、とても素敵な展示です。
"よそおい"というテーマも面白かった。
見たことある作品でもいつもと違う視点で絞るとまた別の作品のように新しい発見がありました。



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たこ焼き

2014-06-15 21:30:00 | 食べ物
大阪のお土産にもらいました。

冷凍だよ~。
今日の夕飯はこのたこ焼きと生湯葉春巻き。


生湯葉春巻きはエビとアボカドさんです。
最近、食欲減ってきてつるっと食べれる豆腐とか湯葉が好きです。
あと揚げ浸しとかも好き。

あとアスパラのおひたしとメンマと豆もやしの胡椒和え。

どう見ても酒飲みなメニューです……笑

さて、たこ焼きは会津屋というお店のもの。
「元祖たこ焼き 会津屋」と書かれていますが、その始まりは昭和8年だそう。
某グルメ漫画にも登場した老舗です。
「大阪 たこ焼き 老舗」
で検索したら1番最初に出てきました。笑

ソースをつけないそうです。
生地に味がついているとか。

さっそくレンジでチン!!です。


うーん、けっこう小さい。。
見た目がそこまでよろしくないのは冷凍だから仕方ない。


出汁粉と大根おろしとねぎとポン酢も準備。
出汁粉は実家に帰ったときに買ったもの。
冷凍のお好み焼きやたこ焼きにかけてもおいしいし、焼きそばとかもおいしい。
ソースものとの相性がいいと思う。
母の地元、富士宮といえば富士宮焼きそば。
これは出汁粉かけるから私はまったく違和感なく食べるのです。
あと、静岡おでんも出汁粉かけるみたいだし。。(これ、静岡出身だけど食べたことない。笑)
シリコンスチーマーで蒸した野菜にかけてもおいしい。
今度おでんにもかけてみよう!!

あ、たこ焼きから逸れた。。
おいしかったです!!
生地はほんのりお醤油の味がします。
そのまま食べても、準備したものをつけてもおいしい。
あっという間に食べてしまいました。
うーん、今度は冷凍じゃなく、出来立て食べたい!!
大阪で草間展やらないかな。笑



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超絶技巧!明治工芸の粋 -村田コレクション一挙公開-

2014-06-14 21:30:00 | 美術
見てきました

三井記念美術館

会期は2014年4月19日から2014年7月13日。

今回は明治の工芸品。
ただの工芸品ではありません。
"超絶技巧"
精緻きわまりない作品たちです。
これらは海外輸出用の商品であったため、日本国内で目にする機会はほとんどありませんでした。
この展示では村田理如氏収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品から選りすぐりの七宝、金工、漆工、牙彫など、驚くべき技法が凝らされた約160点が展示されます。

村田氏は47歳の時、専務を務めていた村田製作所を辞めてまで、作品蒐集に専念。
明治工芸、、、
七宝、金工、漆工、薩摩、刀装具、自在、牙彫・木彫、印籠、刺繍絵画など、超絶技巧を凝らした作品を集めました。
輸出用として海外にあったものを買い戻し、明治工芸の驚くべき技術を日本人に知らしめたいと熱意をもって収集。
世界でも有数のコレクションとなりました。

さて、展示室1から順に書いていきます。

並河靖之「花文飾り壺」七宝
最初から素晴らしい。
この展示、来てよかった~と思える作品。
漆黒の釉薬に白、紫で藤の花。
赤や黄の菊が細かく散らされています。
なんと藤の花びらは1mmほどだとか。
造形も色彩もすべて美しい。
なに、このつやつやきれいで上品な壺。。。
欲しい、欲しい。。。

無銘「伊勢海老」自在
無銘でもこの出来栄え。
自在のなかでも一番多く作られたものが伊勢海老だそう。
本物そっくり、というか。。。
あの細かいとげとげとかもしっかり作られています。

赤塚自得「四季草花蒔絵提箪笥」漆工
小さな堤箪笥。
金地に四季の草花が施された蒔絵が華やか。
観音開きの扉を開けると蛍が飛び交う景色になっているのだそう。
見てみたい。

錦光山「花見図花瓶」薩摩
ちょっと変わった花瓶です。
口のあたりは透かし彫りで百合や桜、なでしこなどの花が施されています。
アールヌーヴォー風。
胴には観桜図。
和洋折衷というのでしょうか。
おもしろいです。

鹿島一谷 二代「花鳥図香炉」金工
もう、すごいの一言。
4つの側面に四季の花鳥図が描かれているのですが、金工ですから。
筆で描かずにここまでできるのか、と驚くのみ。
上は透かし彫りでこれまた繊細。

石川光明「羊」牙彫・木彫
作者は牙彫隆盛の時代に頭角を現し、帝室技芸員として活躍しました。
象牙の色を活かしたもので、親子の羊。
毛並や表情、その食べている草までもしっかり彫られています。

白山松哉「渦文蒔絵香合」漆工
小さな香合に漆で描かれた渦巻文。
漆による線描きは一方向にしか描けないそうで、物を回しながら描いたもの。
間隔が殆どないような細い曲線を等間隔に描いています。
ルーペで拡大して見れるようになっていたのですが、拡大しても細かい。
繊細ですごいの一言。
朱色に金の渦巻文という色彩も美しい。

正阿弥勝義「古瓦鳩香炉」金工
古瓦の上にハト、そのハトに睨まれた小さなクモが身をよじらせています。
おもしろい。
古びた瓦は実は鉄。
打ち出してその古い質感を表現しているのだそう。
小さなクモも本物のようです。
ハトの鋭い表情も素敵です。
正阿弥勝義は刀装具の職人から金工作家へ転身しました。
きっと刀装具も素晴らしいものだったんだろうな。

濤川惣助「藤図花瓶」七宝
背が高くすっきりとしたグレーの花瓶に青と白の藤の花が施された作品。
色彩も美しく幻想的です。
またつやつやした感じがガラスケース越しでもわかる。
触ってみたら気持ちいいんだろうな~。笑

精巧山「雀蝶尽くし茶碗」薩摩
器の外側には雀がぎっしり。
本当にぎっしり。
小さな小さな雀は羽毛まで丁寧に描かれています。
見込みに描かれているのは蝶。
これまたぎっしり。
小さな小さな蝶は3mm程度。
羽の上下で色を塗り分けているものもあります。
といっても拡大写真見ても分かりにくいほど小さいのです。

展示室2には安藤緑山の「竹の子、梅」牙彫・木彫
張り裂けた皮、そこからのぞく取れたての竹の子。
特有のピンクの根の色や竹の皮、そっくりすぎて本物じゃないことが信じられないレベルです。
これは象牙を彫って彩色したものだそうですが、本当に象牙なのか……
竹の子の横には黄色く熟した梅の実2つ。
もう信じられない技術です。

展示室3では《刺繍絵画》です。
ここから先はジャンルごとの展示となっていました。
それらがどういったものかなどの簡単な説明も書いていきます。

読んで字の如く、刺繍でモチーフをあらわした刺繍絵画。
工芸品の多くは明治維新の変革で転換を迫られました。
それは京都の染織界も同じ。
そこで、千総の西村総左衛門や高島屋の飯田新七ら呉服商が中心となり、衣服ではなく、屏風・壁掛・額面など、室内装飾を目的とする美術染織を生み出しました。
それらの中で盛んに輸出されたのが刺繍絵画。
デザインは日本画がベースとなっています。
紫外線や虫食いの影響を受けやすいことから現存している作品はわずか。
村田氏のコレクションは世界最大のものだそう。

無銘(飯田新七、高島屋)「雪中松鷹図」
刺繍絵画のデザインには画家が携わることもありました。
これは高島屋意匠部に勤務した竹内栖鳳のデザイン。
栖鳳による下絵も残されていて、これは国立近代美術館で開催された「竹内栖鳳展」でも見ました。
雪をかぶった松にとまる鷹。
日本画で残っていても素晴らしいものだったと思われますが、刺繍によって鷹の毛の感触まで表現されています。
素晴らしい。

続いて展示室4です。
《七宝》
幕末期に尾張で考案された有線七宝。
明治初期にドイツ人のお雇い外国人ゴッドフリート・ワグネルの指導によって進化を遂げます。
有線七宝とは、銅製の器胎に文様の輪郭線に沿って金属線を貼り、釉薬を筆でさして、窯で焼き付ける技法。
京都では並河靖之が、細密な文様表現を実現、高い水準を創り上げました。
海外の万国博覧会にも出品され、欧米でも高値で購入されました。
一方、東京では濤川惣助が無線七宝を完成させます。
これは色の境目を区切るための金属線を、釉薬をさした後で抜き、再度窯で焼き付ける手法。
線を取り除くため、色の境界がぼやけ、輪郭線を引かない絵画のような表現が可能となりました。

並河靖之「蝶に花の丸唐草文花瓶」
細い瓶。
側面を縦に八分割してそれぞれが違った地の色をしています。
緑に白、青に茶とモダンな配色。
なでしこ、竹、桔梗を排しています。
七宝の美しさ、デザインの緻密でモダンなところとか全て素敵です。

並河靖之「花鳥図飾り壺」
黒地に満開の桜が美しい。
ひまわりに菊、なでしこのほか、鳥も飛び交い華やかです。

並河靖之「鳥に紅葉図飾り壺」
黒地に赤く色づいた紅葉。
下にはピンクの芙蓉、そして桔梗。
紅葉の色づいていく過程のグラデーションが素晴らしい。
黒色透明釉による澄み切った深い黒地は並河七宝の特徴だそう。

並河靖之「蝶に竹図四方花瓶」
直線的なシルエットが印象的。
竹のすっきりしたラインも美しい。
竹の葉の葉脈まで表現されています。

並河靖之「山水図香炉」
霧に煙る水辺の景色。
幻想的で水墨画のような世界が広がっていました。

濤川惣助「菖蒲図皿」
長方形のお皿に描かれたのは菖蒲の花。
爽やかです。
色のグラデーションも優しく美しい。

粂野締太郎「蝶尽し香合」
小さな箱。
縦7cm、横9cm。
そこになんと1000匹もの蝶が描かれているのだそう。
パッと見では色の点にしか見えず「水玉だ~」と思ったのですが、ルーペを通してみてやっと分かる大きさ。
この技術……恐ろしい。

粂野締太郎「菊蝶尽し花弁形鉢」
こちらも恐ろしく細かい文様が施されています。
すごい技術なのはわかる。
どのような心境で作ったのか聞きたい。笑

林小伝治「四季草花図花瓶」
黒地に桜、菊などの花々が咲き誇っています。
この人のデザインはどれも素敵で私は惹かれました。

安藤七宝店(林喜兵衛)「花鳥図対大花瓶」
今回の出品作の七宝の中で最大の作品。
対となっています。
濃紺地の拝啓に胴上半分には白と青の藤の花。
下半分には百合やなでしこ、菊など。
繊細な文様がその大きな花瓶に存分に施されています。

《金工》
幕末期まで刀剣や刀装具、または甲冑・馬具などを制作していた金工師たち。
明治維新によって武士階級という後ろ盾を失います。
そのため、新しい需要層を求めて、新たな製品の開発や販路を模索することになりました。
ここで登場する正阿弥勝義、加納夏雄、海野勝らも、江戸時代には刀装具制作をしていましたが、明治期にはそこで培った高い技術を駆使して、置物や花瓶、皿、香炉、煙草箱など新たな金工品を手がけました。
これらは輸出工芸品の花形として大量に海を渡っていきました。

駒井「吉祥図飾壺」
全面に金銀の細い文様が施されています。
こちらもルーペが大活躍。
この文様は布目象嵌というそう。
細かく入れたヤスリ目に金銀の極薄箔を嵌入させる技法とのこと。
知っても理解できないけど……

川原林秀国「瓜形香炉」
つるつるのまくわ瓜。
その上にカタツムリが1匹。
こういった作品も素敵です。

海野勝「観音立像(厨子扉:四天王)」
観音開きの厨子を開けると中には観音様。
こんなにも小さく美しい観音様なら私も欲しい。
持ち歩いて扉開けて自慢するわ。笑

正阿弥勝義「群鶏図香炉」
銀地の本体で側面には鶏が彫られています。
それらは一羽一羽動きや羽根のいろが違うのです。
その表現力。
そして蓋にはびっしりと繊細な菊。
すごいです。

そして展示室中央には安藤緑山の作品たち。
先ほどの竹の子のようにどれも本物そっくり。
ナスにパイナップル、焼き栗や皮をむいたみかん。
パセリは蜂の巣などまであります。
どういった視線で題材を選んでいたのでしょうか……。
あと、パセリを作るのってすごく難しそう……
象牙が折れてしまったら終わりだし。。
緑山は弟子をとらず、一切の記録も残さなかったため技法などは未だ分かっていません。
というより、本人の生没年すらはっきりわかっていないのです。
そういったことも興味を惹きますね。

続いて展示室5は《自在》です。
江戸時代、甲冑師によって創始された自在。
甲冑の需要が激減した江戸時代末期以降に隆盛を迎えます。
そしてそれらは欧米諸国でも賞賛されました。
確かにすごい、欲しいですもん。
単なる金工の置物のように見えるのに、実は各部を自由自在に動かすことのできる"自在"
複数のパーツをつなぎ合わせることによって、動物や昆虫、魚などの複雑な動きが再現できるようになっています。

明珍「蛇」
見ているだけではつまらない……
"自在"というのに動かないなんて……
と思うのですが、こちらは動かしている場面の映像がありますので是非見てください。
とても面白いです。
やはり動かしてこそ自在。
金属の置物がこのように動くのか、と、とても面白いです。
展示室1には「伊勢海老」がありましたが、複雑な動きをもつ蛇や龍、伊勢海老などは格好の題材だったそう。

高瀬好山「鯉」
長さは約30cm.
銀製でぬるっとした感覚まで伝わってきます。
ヒゲまでしっかりと作られ、まさに本当の魚です。
口は本物と同じように開きますし、ヒレももちろん動きます。
胴体も滑らかに身をくねらせるのだそう。
しかも鱗は枚数も本物とほぼ同数なんだとか。
ヒゲも目玉も動き、動かない部分はほぼ無いそうで。
驚きの技術です。

そして《牙彫・木彫》
江戸時代以前から日本には根付など、象牙を彫る文化がありました。
明治時代に入ると象牙でできた輸出用の置物が生産され始めます。
それらは博覧会に出品され受賞を重ね、美術品としての地位を築きました。
高村光雲が"彫刻の世界は象牙で真ッ白になってしまいました"といったようにこのころの人気はすさまじいものでした。

高村光雲「法師狸」
こちらは木彫。
袈裟を着、法師姿の狸。
左手には数珠を持っています。
ちょっとユーモラスでかわいらしい。

旭玉山「葛に蜘蛛の巣図文庫」
桐の箱に象牙などの素材を嵌め込む彫嵌の技法で作られています。
蓋の大きなクモの巣が目を惹きますが、鉛でできた月と笹も素敵です。

展示室6には《印籠》と《刀装具》
わずか数センチの小さな空間に蒔絵や螺鈿などで装飾が施された印籠。
金属の表面を鏨で彫って文様をあらわすなどして作られた刀装具。
やはり職人技がひかります。

海野勝「布袋図鐔」刀装具
人を斬る道具である刀。
それに施されているのがふっくら優しそうな顔をした布袋様とはなんとも。

柴田是真「沢瀉片喰に蝶図蒔絵印籠」印籠
やっぱり是真の作品はかっこいい。
カタバミがシンプルながらに美しい曲線を描いています。
でタイトルには「蝶」と入っていますがどこに??
余白部分に漆の素彫で入れられています。
うーん、素敵だ。

さて、最後、展示室7.

《漆工》
約九千年の長い歴史を持つ我が国の漆工。
幕末から明治期には、それまでの技術が集約され、史上最高のレベルに達しました。
明治維新によって、将軍家や諸大名、公家などが衰退し、仕事を失った多くの蒔絵師や塗師たち。
政府主導の殖産興業政策のもと、欧米好みの輸出向け製品の制作に従事するようになりました。

柴田是真「青海波塗棗」
真っ黒な棗。
よく見ると、というか反射で分かりづらいのですが、よーく見ると表面に波のような模様。
こういった作品が粋なんだろうな。

白山松哉「日月烏鷺蒔絵額」
1対の作品。
右は満月の夜。木にとまり空を眺めるカラス。
左は朝日の当たる水辺。葦の生える水辺にいる3羽の白鷺。
毛並の質感まで伝わってきます。
空の色の美しいグラデーションは感動もの。
カラスは日本画などでも見かけますが、こうしてみると美しい鳥ですね。
朝、道ですれ違うときは怖くて仕方がないのですが。笑

最後は《薩摩焼》
鹿児島で朝鮮半島の陶工たちによって始められた薩摩焼。
幕末には金彩色絵の絢爛豪華なやきものが作られました。
万博に出品するなどし高い評価を得た薩摩焼は輸出工芸品の花形に育っていきました。

錦光山「菊唐草文ティーセット」
素敵だー。
すごく欲しい。
カップ、ソーサー、砂糖壷、ミルク壷、盆がセットになったもの。
金銀の菊に唐草文。
とても繊細です。
盆は藍色の地に金色の極細模様が浮かび幻想的。
いやー、本当に素敵。

こんなものがあったのか、と驚くばかり。
これらも村田氏の努力がなければ知ることもなかったのかもしれません。
その熱意、そして工芸に対する敬意に感服です。



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ゴッホの原点 オランダ・ハーグ派展 近代自然主義絵画の成立 (その2)

2014-06-13 21:30:00 | 美術
見てきました

損保ジャパン東郷青児美術館

会期は2014年4月19日から2014年6月29日。

今回は"ハーグ派"と呼ばれた画家たちの作品の展示です。
19世紀後半のオランダ。
ゴッホが「大物(マストドン)」とよんだ画家たちがいました。
彼らは活動の拠点であった都市の名にちなんで「ハーグ派」と呼ばれていました。
今回はハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会。

その1」で第1章から第2章の2つ目のテーマまでを書いたので、その残りを書いていきます。

《第2章:ハーグ派》
【家畜】
これまでにたくさん"牛"が出てきましたが、牛はオランダ経済の大黒柱だったそう。
単なるモチーフではなく、象徴的な意味合いもあったそうです。

ヴィレム・マリス「水飲み場の仔牛たち」
水飲む牛と少年たち。
柔らかい光が穏やかな印象を出しています。
ヴィレム・マリスはのどかな田園風景を多く描きましたが、
"私は仔牛を描かない。むしろその光の効果を描いているのだ。"
と言っていたそう。

ヴィレム・マリス「ロバの番をする少年」
少年たちとロバ。
右にいる少年がすごくかわいい。
雲の隙間から光が漏れています。

ヴィレム・マリス「泳ぎの練習」
自宅の庭の池で泳ぐアヒルの親子を描いたもの。
水の様子やアヒルの毛並、木の葉など質感の違いが的確に表現されていました。

【室内】
ハーグ派は農民、漁民の家族の日常を描きました。
これはミレーの影響がみられるそう。
室内画では窓からの光に照らされて作業する人々が多く描かれましたがこれは17世紀オランダの影響だそう。

ヨーゼフ・イスラエルス「日曜の朝」
椅子に座り、窓の外を眺める女性。
机の上には厚い本。
読んでいて一休み、なんでしょうか。

ヨーゼフ・イスラエルス「縫い物をする若い女」
窓際に椅子を置いて座り、一心に作業する女性。
真剣な表情です。
窓の外には緑と青空が見え、美しい景色といい光が入ってきていることが伺えます。

アルベルト・ヌウハウス「母と子どもたち」
簡素な室内で赤ちゃんをあやす母親とそれを後ろから覗き込む姉。
色彩は控えめですが、光が登場人物を照らしています。

ベルナルデュス・ヨハネス・ブロンメルス「室内」
窓際の食卓での親子の食事風景。
父は子を膝の上にのせ、母親はお茶を注ごうとしています。
光りは父と子を照らし、母親は逆光となっています。
落ち着いた作品。

アントン・ファン・ラッパルト「版画集を見る」
室内で版画集を見ている男の子と女の子。
床にはおもちゃが転がり、猫も数匹。
幸せそうな家族を思わせます。

【海景】
オランダの景色で欠かせないもの、海。
漁民の生活、漁の様子などが描かれています。

ヤコブ・マリス「漁船」
雲がもくもくと広がる空を背景に美しいシルエットのニシン漁の船。
船からはロープが伸びていますが、これは船を浜にあげるためのもの。
スヘフェニンゲンはハーグ郊外の漁村ですが、港がなかったそうで、馬がロープを引っ張って浜にあげていたのだそう。

アンドレアス・スヘルフハウト「スヘフェニンゲンの浜辺と船」
ハーグ派の先駆者でハーグ派の画家を育てました。
青い空を背景に船が描かれています。
傘をさす婦人なども描かれていました。

ヘンドリック・ヴィレム・メスダッハ「オランダの海岸沿い」
夕暮れの海岸。
空をおおう雲の隙間から光が漏れ、水平線は明るく染まっています。
帆船がいくつか海に。
シルエットで描かれ、光りを浴びて美しい姿となっています。
空や雲が大きく、なんだか壮大ですがすがしい気持ちになります。
メスダッハは海景画で知られた画家。
「その1」でも書きましたが、資産家でバルビゾン派、ハーグ派の作品を収集しました。

ヨーゼフ・イスラエルス「エビをとる人」「漁師の女」
日本的な印象も受けました。
道具を手にしエビをとる男と、海を背景にこちらを見る女。
力強さや素朴さが感じられます。

ベルナルデュス・ヨハネス・ブロンメルス「浜辺」
浜辺の水がたまったところで船のおもちゃを浮かべて遊ぶ子どもとそれを見守る母。
のどかな景色です。

フィリップ・サデー「貧しい人たちの運命」
漁の成果を馬車に詰め込む人々を後ろに、魚や貝を拾う人々が描かれています。
上空には魚を狙ったカモメたち。
なんだか切ない。
この画家はスヘフェニンゲンの漁民を多く描きました。

ハーグ派の画家たちは海をよく描きました。
中でもスヘフェニンゲンの海はもっとも人気だったそう。
しかし、当時、静かな漁村だったスヘフェニンゲンをリゾート地とする計画が持ち上がりました。
もちろん画家たちは猛反対。
スヘフェニンゲンの環境を守れと、デモンストレーションとして、メスダッハを中心に、49日間という短期間で径14m、総面積1,680㎡という世界一の大絵画を完成させました。
しかし、ここはカジノを有するリゾート地へ。
この作品だけは残り、現在もハーグのパノラマメスダッハ"Panorama Mesdag"と呼ばれる円形の建物内にあるそうです。

《第3章:フィンセント・ファン・ゴッホとピート・モンドリアン》
ハーグ派は19世紀終わりごろに求心力を失い終わりを迎えます。
ハーグ派にルーツを持つゴッホ、モンドリアンは伝統的造形を大胆に改変し、独自の表現を探っていきました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ジャガイモを掘る二人の農婦」
ゴッホは16歳から20歳までの間、ハーグの画商のもとで働いていたので、その際にハーグ派の画に接していたと思われます。
27歳で画家となる決意を固めたゴッホは従姉妹と結婚したハーグ派の画家マウフェに師事しました。
せっせと働く2人の農婦。
バルビゾン派のミレーのようです。
まぁ、ゴッホはミレー作品の模写を繰り返していたため不思議ではありません。

フィンセント・ファン・ゴッホ「雪原で薪を集める人びと」
薪を背負い、雪道を行く家族と思わしき集団。
空には大きく真っ赤な太陽。
力強く庶民の生活を描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ「白い帽子をかぶった農婦の顔」
画面いっぱいに描かれた浅黒い農婦の顔。
こちらも力強い。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ガシェ博士(5月25日)」
ゴッホによる唯一のエッチング作品とのこと。
ガシェはフランス、オーヴェールの精神科医。
ゴッホの健康回復のためにオーヴェールに招き、親しく交流します。
ゴッホはここで創作意欲がよみがえり、村の景色や村人、そしてガシェを描きました。
死去するまでの2か月間に、ゴッホはこの村で80点ほどの作品を残しています。
ガシェ自身も絵を描き、「死の床のファン・ゴッホ」という作品も残されています。

ピート・モンドリアン「アムステルダムの東、オーストザイセの風車」
抽象画家として知られるモンドリアンですが、1890年代、ハーグ派にもっとも強い影響を受けています。
運河と森と風車が描かれた作品です。
明るい色彩で穏やかな光のある風景画。
これがあのモンドリアンの作品なの!?と驚きです。
ハーグ派の画家、の作品です。

ピート・モンドリアン「ダイフェンドレヒトの農場」
だいぶ簡略化されています。
家と木々が描かれていますが、水面にもはっきりと映り込んでいます。
色彩も明るく素敵な作品です。

ピート・モンドリアン「ドンピュルクの風車」
さらに簡略化されています。
風車をアップで描いています。
シルエットで描かれていていて、情景ではなく、構成に関心があることが伺えます。

ピート・モンドリアン「夕暮れの風車」
これはすごく好き。
おもしろい。
シルエットで大きく風車が描かれています。
存在感、というか圧迫感というか、、、迫力があります。
空もおもしろくて鱗雲のような雲がもくもくと。
雲間から月がのぞいていて一部を照らしていますが、妖しさを増しているかのようです。

以上になります。
バルビゾン派、そしてハーグ派、そしてモンドリアン。
流れも分かりやすく面白い展示でした。
光の扱いがどれもよかったのはさすがオランダ、といった感じです。
そう考えると、17世紀オランダ絵画もポイントですね。
大満足です。



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ゴッホの原点 オランダ・ハーグ派展 近代自然主義絵画の成立 (その1)

2014-06-12 21:30:00 | 美術
見てきました

損保ジャパン東郷青児美術館

会期は2014年4月19日から2014年6月29日。

今回は"ハーグ派"と呼ばれた画家たちの作品の展示です。
19世紀後半のオランダ。
ゴッホが「大物(マストドン)」とよんだ画家たちがいました。
彼らは活動の拠点であった都市の名にちなんで「ハーグ派」と呼ばれていました。
今回はハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会。

"ハーグ派"はバルビゾン派の影響を受けながら、17世紀オランダ黄金時代の絵画を再評価。
屋外における自然観察を基盤とし、風車や運河、海景といったオランダならではの景色や漁業や農業に従事する人たち、室内の身近な風景などを描きました。
オランダのハーグ市立美術館の所蔵作品を中心に、ハーグ派の作品のみならず、クレラー=ミュラー美術館、ならびにバルビゾン派の作品。
そしてハーグ派の影響を受けたゴッホとピート・モンドリアンの初期作品など、約70点の展示です。

今回、かなりたくさんメモをとってきました。
そのため、閉館時間が……
(何度やっても学習しない……)
「その1」「その2」と2回に分けて書いていきます。
展示は1章から3章までの構成でしたが、2章が5つのテーマに分けられていました。
「その1」では第1章から第2章の2つ目のテーマまで。
「その2」では第2章の3つ目のテーマから第3章を書いていきます。

《第1章:バルビゾン派》
まずはハーグ派に影響を与えたとされるバルビゾン派の作品から。
1830年から70年にバルビゾン村に来た画家のことを指します。
自然と向き合い、それを忠実に表現しようとして屋外にあふれる光を画面に取り入れました。
森や川などの自然そのものや、森の小動物、家畜やたくましく生きる農民などを主題としています。

ジョルジュ・ミシェル「パリ近郊の風景」
風が吹き渡る道を親子が歩いています。
暗い雲も立ち込め、嵐の前のような印象です。

ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「浅瀬を渡る山羊の番人、イタリアの思い出」
バルビゾン派でコローが出ていないことはないでしょう。
画面右手には生い茂る木々。
1人の人が背を向けています。
日が沈みかけなのか、昇っているところなのか。。
空の色がきれいなグラデーション。

シャルル・エミール・ジャック「森はずれの羊飼いの女」
羊がくつろぐ、のんびりした光景。
かなりもこもこしている種類です。
光がきれいに輝きさすがバルビゾン派、と。
1849年、ミレーとともにバルビゾン村へ行った画家。
元々は地図の版画職人でした。

ジュール・デュプレ「森の中-夏の朝」
青空の色がとにかくきれい。
夏の朝の爽やかで澄んだ空気が伝わってきます。
森の中では牛が元気に動いています。

ジャン=フランソワ・ミレー「バター作りの女」
牛乳の入った桶をかき混ぜている女。
棒を握る手のたくましさ。
農民などの生活を描いたミレーらしい作品。
足元には猫がすり寄っています。
戸口には鳥の姿もありました。

ジャン=フランソワ・ミレー「羊毛をすく女」「手桶を空にする女」「母と子」「母の心遣い」
ミレーによる版画作品。
作業する女や家族を思う母など、ミレーらしい温かな視線で描かれたものが並んでいました。

シャルル=フランソワ・ドービニー「にわか雨」
突然雨が降ってきた、ということが伝わってきます。
羊を戻す犬とのんびりした羊。
雨の勢いが感じられ、音も聞こえてきそうな作品。

レオン=ヴィクトル・デュプレ「風景」
こちらも青空きれい、と思ったら「森の中-夏の朝」を描いたジュール・デュプレの弟なんだそう。
森の中、川で水を飲む牛が描かれています。
穏やか。

ヨハン・バルトルト・ヨンキント「セーヌ河の月明かり」
画家はハーグ美術アカデミーでハーグ派の先駆者であるスヘルフハウトに学びました。
オランダとフランスを行き来し、実際にバルビゾン派とも交友しています。
描かれているのは夜のセーヌ。
月の明かりが水面を照らし、幻想的で静かで明るい夜となっています。

ヨハン・バルトルト・ヨンキント「シャトー・ミーウング」
空は大きな筆遣い。
人物や木々は点描のように細かく描かれています。
明るい青空のもと、牛や人が道をゆきます。
光を感じる作品です。

ヨハン・バルトルト・ヨンキント「デルフトの眺め」
小さな作品です。
澄みきった水の色が美しい。
いつかこのデルフトの景色を自分の目で眺めたい。
数々の画家が描いた景色。

ギュスターヴ・クールベ「ルー川源流にかかる橋の水車小屋」
クールベはバルビゾン派ではありませんでしたが、そこと交流していたため作品が出ています。
が、この作品、今までのどかな景色が並んでいたため、はっとさせられました。
故郷オルナンの南を流れるルー川。
古い橋の向こう、滝のように勢いよく水が流れています。
動きが感じられる作品です。

《第2章:ハーグ派》
ハーグ派とは、オランダの古都ハーグにあって1870年頃から1900年に至るまでの約30年に渡りオランダ絵画に新風を吹き込んだ画家たちの総称。
王宮を有す歴史的に重要な都市で、街のすぐ背後には牧草地、そして運河の広がる開拓地です。
また森や砂丘を伴った海岸線を有します。
しかし描かれたのはここではなく、ハーグの近く、オランダのバルビゾンと呼ばれたオーステルベーグでした。
バルビゾン派に影響を受けた初期の画家たちはこの地を描きます。
ここの自然のありのままに魅了された画家たちがハーグへ募るようになったのです。

さて、ハーグ派におけるバルビゾン派の影響はよく知られています。
ハーグ派の画家たちはパリでバルビゾン派を知る、直接行く、展示で知るものなど様々でした。
バルビゾン派をオランダで広めるにあたって重要な人物がいます。
ヘンドリック・ヴィレム・メスダッハ
ハーグ派の指導的画家でしたが、元々資産家。
ハーグ派、バルビゾン派の収集に力を入れていました。
これらはメスダッハ・コレクションとして一般に開かれ、1996年国立美術館としてリニューアルしています。

第2章はハーグ派の画題となったものが5つのテーマで分けられて展示されていました。

【風景】
まずは風景から。

ヴィレム・ルーロフス「ノールデンの5月」
陽光きらめく川が美しく、明るい5月です。
鮮やかな色がいきいきとした印象を出しています。
この画家はテオドール・ルソーやドービニの影響を受けています。
そしてメスダッハ、ハブリエルなどの次世代ハーグ派の画家をブリュッセルで育てました。

ヨハン・バルトルト・ヨンキント「シャトー・ミーウング」
水辺の景色。
牛に鳥、小さな木製の風車。
空を覆う雲。
水がとてもきれいです。
ハーグ派の風景はオランダならではの開拓地や風車といったものが多いそうです。

ヴィレム・ルーロフス「虹」
まだ暗い雲が残る中、空には大きな虹。
影の濃い、細い道を牛たちが歩いていきます。
後ろに大きな虹が出ているよ、と教えてあげたい……

ヘラルト・ビルデルス「山のある風景(フランス、サヴォワ)」
青空にピンクに染まった雲。
山々のふもとには霞がかり、美しい景色です。
水辺には牛がいますが、柔らかい印象。
この画家は父も風景画家だったそうで、手ほどきをうけたのだそう。

マタイス・マリス「オーステルベーク、デ・オールスブロングの森の景色」
土が崩れ、根が見えます。
自然の強さ、そのままの姿が描かれています。
マタイス・マリスは兄ヤコブ・マリスと弟ヴィレム・マリスとともにハーグ派の画家として活躍しました。

マタイス・マリス「モンマルトルの近くの石切り場」
これは上のとは一気に画風が変わりました。
大きな筆致で作業する人とその風景を描いています。

ヤコブ・マリス「絵を描く画家」
屋外で制作する画家。
自画像か弟かと考えられるそう。
顔は描かれていないため分かりません。
こちらも大きめの筆致で描かれています。

【農民】
農民は田園生活へ敬意を払うハーグ派の中心的画題。
バルビゾン派の代表的な画家、ジャン=フランソワ・ミレーは農民を扱った作品が多く、重要な指導者でした。
マタイス・マリス「種をまく人(ミレーによる)」はもちろんミレーの「種をまく人」を元にしています。

マタイス・マリス「糸を紡ぐ女」
暗い背景の中に糸を紡ぐ、赤い帽子で白と青の服の少女を斜めから描いています。
顔をそむけたような状態で表情はわかりません。
こうやって働く・作業をする人々も恰好の画題でした。

以上になります。
まだまだ作品は続き、迫る閉館時間……
続きは「その2」で書いていきます。



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さくらんぼ大福とわらび餅

2014-06-11 21:30:00 | 食べ物
和菓子大好きな私。
ケーキとかも好きだけど同じくらい好き。
小さいころから母親と桜餅食べたり、お団子食べたりしていたからかも。。

さくらんぼ大福は珍しさから。
色もピンクでかわいいし。
わらびもちも好き。
だけど売っているものって1人で食べるには多すぎるんだよね……
少し食べれば満足だからこれぐらいの量で売っていると嬉しい。
お茶入れてのんびり食べたいけどその時間が最近なかなかとれないので……

今日は食後に寝ないで頑張りたいと思う!!笑



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