RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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超絶技巧!明治工芸の粋 -村田コレクション一挙公開-

2014-06-14 21:30:00 | 美術
見てきました

三井記念美術館

会期は2014年4月19日から2014年7月13日。

今回は明治の工芸品。
ただの工芸品ではありません。
"超絶技巧"
精緻きわまりない作品たちです。
これらは海外輸出用の商品であったため、日本国内で目にする機会はほとんどありませんでした。
この展示では村田理如氏収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品から選りすぐりの七宝、金工、漆工、牙彫など、驚くべき技法が凝らされた約160点が展示されます。

村田氏は47歳の時、専務を務めていた村田製作所を辞めてまで、作品蒐集に専念。
明治工芸、、、
七宝、金工、漆工、薩摩、刀装具、自在、牙彫・木彫、印籠、刺繍絵画など、超絶技巧を凝らした作品を集めました。
輸出用として海外にあったものを買い戻し、明治工芸の驚くべき技術を日本人に知らしめたいと熱意をもって収集。
世界でも有数のコレクションとなりました。

さて、展示室1から順に書いていきます。

並河靖之「花文飾り壺」七宝
最初から素晴らしい。
この展示、来てよかった~と思える作品。
漆黒の釉薬に白、紫で藤の花。
赤や黄の菊が細かく散らされています。
なんと藤の花びらは1mmほどだとか。
造形も色彩もすべて美しい。
なに、このつやつやきれいで上品な壺。。。
欲しい、欲しい。。。

無銘「伊勢海老」自在
無銘でもこの出来栄え。
自在のなかでも一番多く作られたものが伊勢海老だそう。
本物そっくり、というか。。。
あの細かいとげとげとかもしっかり作られています。

赤塚自得「四季草花蒔絵提箪笥」漆工
小さな堤箪笥。
金地に四季の草花が施された蒔絵が華やか。
観音開きの扉を開けると蛍が飛び交う景色になっているのだそう。
見てみたい。

錦光山「花見図花瓶」薩摩
ちょっと変わった花瓶です。
口のあたりは透かし彫りで百合や桜、なでしこなどの花が施されています。
アールヌーヴォー風。
胴には観桜図。
和洋折衷というのでしょうか。
おもしろいです。

鹿島一谷 二代「花鳥図香炉」金工
もう、すごいの一言。
4つの側面に四季の花鳥図が描かれているのですが、金工ですから。
筆で描かずにここまでできるのか、と驚くのみ。
上は透かし彫りでこれまた繊細。

石川光明「羊」牙彫・木彫
作者は牙彫隆盛の時代に頭角を現し、帝室技芸員として活躍しました。
象牙の色を活かしたもので、親子の羊。
毛並や表情、その食べている草までもしっかり彫られています。

白山松哉「渦文蒔絵香合」漆工
小さな香合に漆で描かれた渦巻文。
漆による線描きは一方向にしか描けないそうで、物を回しながら描いたもの。
間隔が殆どないような細い曲線を等間隔に描いています。
ルーペで拡大して見れるようになっていたのですが、拡大しても細かい。
繊細ですごいの一言。
朱色に金の渦巻文という色彩も美しい。

正阿弥勝義「古瓦鳩香炉」金工
古瓦の上にハト、そのハトに睨まれた小さなクモが身をよじらせています。
おもしろい。
古びた瓦は実は鉄。
打ち出してその古い質感を表現しているのだそう。
小さなクモも本物のようです。
ハトの鋭い表情も素敵です。
正阿弥勝義は刀装具の職人から金工作家へ転身しました。
きっと刀装具も素晴らしいものだったんだろうな。

濤川惣助「藤図花瓶」七宝
背が高くすっきりとしたグレーの花瓶に青と白の藤の花が施された作品。
色彩も美しく幻想的です。
またつやつやした感じがガラスケース越しでもわかる。
触ってみたら気持ちいいんだろうな~。笑

精巧山「雀蝶尽くし茶碗」薩摩
器の外側には雀がぎっしり。
本当にぎっしり。
小さな小さな雀は羽毛まで丁寧に描かれています。
見込みに描かれているのは蝶。
これまたぎっしり。
小さな小さな蝶は3mm程度。
羽の上下で色を塗り分けているものもあります。
といっても拡大写真見ても分かりにくいほど小さいのです。

展示室2には安藤緑山の「竹の子、梅」牙彫・木彫
張り裂けた皮、そこからのぞく取れたての竹の子。
特有のピンクの根の色や竹の皮、そっくりすぎて本物じゃないことが信じられないレベルです。
これは象牙を彫って彩色したものだそうですが、本当に象牙なのか……
竹の子の横には黄色く熟した梅の実2つ。
もう信じられない技術です。

展示室3では《刺繍絵画》です。
ここから先はジャンルごとの展示となっていました。
それらがどういったものかなどの簡単な説明も書いていきます。

読んで字の如く、刺繍でモチーフをあらわした刺繍絵画。
工芸品の多くは明治維新の変革で転換を迫られました。
それは京都の染織界も同じ。
そこで、千総の西村総左衛門や高島屋の飯田新七ら呉服商が中心となり、衣服ではなく、屏風・壁掛・額面など、室内装飾を目的とする美術染織を生み出しました。
それらの中で盛んに輸出されたのが刺繍絵画。
デザインは日本画がベースとなっています。
紫外線や虫食いの影響を受けやすいことから現存している作品はわずか。
村田氏のコレクションは世界最大のものだそう。

無銘(飯田新七、高島屋)「雪中松鷹図」
刺繍絵画のデザインには画家が携わることもありました。
これは高島屋意匠部に勤務した竹内栖鳳のデザイン。
栖鳳による下絵も残されていて、これは国立近代美術館で開催された「竹内栖鳳展」でも見ました。
雪をかぶった松にとまる鷹。
日本画で残っていても素晴らしいものだったと思われますが、刺繍によって鷹の毛の感触まで表現されています。
素晴らしい。

続いて展示室4です。
《七宝》
幕末期に尾張で考案された有線七宝。
明治初期にドイツ人のお雇い外国人ゴッドフリート・ワグネルの指導によって進化を遂げます。
有線七宝とは、銅製の器胎に文様の輪郭線に沿って金属線を貼り、釉薬を筆でさして、窯で焼き付ける技法。
京都では並河靖之が、細密な文様表現を実現、高い水準を創り上げました。
海外の万国博覧会にも出品され、欧米でも高値で購入されました。
一方、東京では濤川惣助が無線七宝を完成させます。
これは色の境目を区切るための金属線を、釉薬をさした後で抜き、再度窯で焼き付ける手法。
線を取り除くため、色の境界がぼやけ、輪郭線を引かない絵画のような表現が可能となりました。

並河靖之「蝶に花の丸唐草文花瓶」
細い瓶。
側面を縦に八分割してそれぞれが違った地の色をしています。
緑に白、青に茶とモダンな配色。
なでしこ、竹、桔梗を排しています。
七宝の美しさ、デザインの緻密でモダンなところとか全て素敵です。

並河靖之「花鳥図飾り壺」
黒地に満開の桜が美しい。
ひまわりに菊、なでしこのほか、鳥も飛び交い華やかです。

並河靖之「鳥に紅葉図飾り壺」
黒地に赤く色づいた紅葉。
下にはピンクの芙蓉、そして桔梗。
紅葉の色づいていく過程のグラデーションが素晴らしい。
黒色透明釉による澄み切った深い黒地は並河七宝の特徴だそう。

並河靖之「蝶に竹図四方花瓶」
直線的なシルエットが印象的。
竹のすっきりしたラインも美しい。
竹の葉の葉脈まで表現されています。

並河靖之「山水図香炉」
霧に煙る水辺の景色。
幻想的で水墨画のような世界が広がっていました。

濤川惣助「菖蒲図皿」
長方形のお皿に描かれたのは菖蒲の花。
爽やかです。
色のグラデーションも優しく美しい。

粂野締太郎「蝶尽し香合」
小さな箱。
縦7cm、横9cm。
そこになんと1000匹もの蝶が描かれているのだそう。
パッと見では色の点にしか見えず「水玉だ~」と思ったのですが、ルーペを通してみてやっと分かる大きさ。
この技術……恐ろしい。

粂野締太郎「菊蝶尽し花弁形鉢」
こちらも恐ろしく細かい文様が施されています。
すごい技術なのはわかる。
どのような心境で作ったのか聞きたい。笑

林小伝治「四季草花図花瓶」
黒地に桜、菊などの花々が咲き誇っています。
この人のデザインはどれも素敵で私は惹かれました。

安藤七宝店(林喜兵衛)「花鳥図対大花瓶」
今回の出品作の七宝の中で最大の作品。
対となっています。
濃紺地の拝啓に胴上半分には白と青の藤の花。
下半分には百合やなでしこ、菊など。
繊細な文様がその大きな花瓶に存分に施されています。

《金工》
幕末期まで刀剣や刀装具、または甲冑・馬具などを制作していた金工師たち。
明治維新によって武士階級という後ろ盾を失います。
そのため、新しい需要層を求めて、新たな製品の開発や販路を模索することになりました。
ここで登場する正阿弥勝義、加納夏雄、海野勝らも、江戸時代には刀装具制作をしていましたが、明治期にはそこで培った高い技術を駆使して、置物や花瓶、皿、香炉、煙草箱など新たな金工品を手がけました。
これらは輸出工芸品の花形として大量に海を渡っていきました。

駒井「吉祥図飾壺」
全面に金銀の細い文様が施されています。
こちらもルーペが大活躍。
この文様は布目象嵌というそう。
細かく入れたヤスリ目に金銀の極薄箔を嵌入させる技法とのこと。
知っても理解できないけど……

川原林秀国「瓜形香炉」
つるつるのまくわ瓜。
その上にカタツムリが1匹。
こういった作品も素敵です。

海野勝「観音立像(厨子扉:四天王)」
観音開きの厨子を開けると中には観音様。
こんなにも小さく美しい観音様なら私も欲しい。
持ち歩いて扉開けて自慢するわ。笑

正阿弥勝義「群鶏図香炉」
銀地の本体で側面には鶏が彫られています。
それらは一羽一羽動きや羽根のいろが違うのです。
その表現力。
そして蓋にはびっしりと繊細な菊。
すごいです。

そして展示室中央には安藤緑山の作品たち。
先ほどの竹の子のようにどれも本物そっくり。
ナスにパイナップル、焼き栗や皮をむいたみかん。
パセリは蜂の巣などまであります。
どういった視線で題材を選んでいたのでしょうか……。
あと、パセリを作るのってすごく難しそう……
象牙が折れてしまったら終わりだし。。
緑山は弟子をとらず、一切の記録も残さなかったため技法などは未だ分かっていません。
というより、本人の生没年すらはっきりわかっていないのです。
そういったことも興味を惹きますね。

続いて展示室5は《自在》です。
江戸時代、甲冑師によって創始された自在。
甲冑の需要が激減した江戸時代末期以降に隆盛を迎えます。
そしてそれらは欧米諸国でも賞賛されました。
確かにすごい、欲しいですもん。
単なる金工の置物のように見えるのに、実は各部を自由自在に動かすことのできる"自在"
複数のパーツをつなぎ合わせることによって、動物や昆虫、魚などの複雑な動きが再現できるようになっています。

明珍「蛇」
見ているだけではつまらない……
"自在"というのに動かないなんて……
と思うのですが、こちらは動かしている場面の映像がありますので是非見てください。
とても面白いです。
やはり動かしてこそ自在。
金属の置物がこのように動くのか、と、とても面白いです。
展示室1には「伊勢海老」がありましたが、複雑な動きをもつ蛇や龍、伊勢海老などは格好の題材だったそう。

高瀬好山「鯉」
長さは約30cm.
銀製でぬるっとした感覚まで伝わってきます。
ヒゲまでしっかりと作られ、まさに本当の魚です。
口は本物と同じように開きますし、ヒレももちろん動きます。
胴体も滑らかに身をくねらせるのだそう。
しかも鱗は枚数も本物とほぼ同数なんだとか。
ヒゲも目玉も動き、動かない部分はほぼ無いそうで。
驚きの技術です。

そして《牙彫・木彫》
江戸時代以前から日本には根付など、象牙を彫る文化がありました。
明治時代に入ると象牙でできた輸出用の置物が生産され始めます。
それらは博覧会に出品され受賞を重ね、美術品としての地位を築きました。
高村光雲が"彫刻の世界は象牙で真ッ白になってしまいました"といったようにこのころの人気はすさまじいものでした。

高村光雲「法師狸」
こちらは木彫。
袈裟を着、法師姿の狸。
左手には数珠を持っています。
ちょっとユーモラスでかわいらしい。

旭玉山「葛に蜘蛛の巣図文庫」
桐の箱に象牙などの素材を嵌め込む彫嵌の技法で作られています。
蓋の大きなクモの巣が目を惹きますが、鉛でできた月と笹も素敵です。

展示室6には《印籠》と《刀装具》
わずか数センチの小さな空間に蒔絵や螺鈿などで装飾が施された印籠。
金属の表面を鏨で彫って文様をあらわすなどして作られた刀装具。
やはり職人技がひかります。

海野勝「布袋図鐔」刀装具
人を斬る道具である刀。
それに施されているのがふっくら優しそうな顔をした布袋様とはなんとも。

柴田是真「沢瀉片喰に蝶図蒔絵印籠」印籠
やっぱり是真の作品はかっこいい。
カタバミがシンプルながらに美しい曲線を描いています。
でタイトルには「蝶」と入っていますがどこに??
余白部分に漆の素彫で入れられています。
うーん、素敵だ。

さて、最後、展示室7.

《漆工》
約九千年の長い歴史を持つ我が国の漆工。
幕末から明治期には、それまでの技術が集約され、史上最高のレベルに達しました。
明治維新によって、将軍家や諸大名、公家などが衰退し、仕事を失った多くの蒔絵師や塗師たち。
政府主導の殖産興業政策のもと、欧米好みの輸出向け製品の制作に従事するようになりました。

柴田是真「青海波塗棗」
真っ黒な棗。
よく見ると、というか反射で分かりづらいのですが、よーく見ると表面に波のような模様。
こういった作品が粋なんだろうな。

白山松哉「日月烏鷺蒔絵額」
1対の作品。
右は満月の夜。木にとまり空を眺めるカラス。
左は朝日の当たる水辺。葦の生える水辺にいる3羽の白鷺。
毛並の質感まで伝わってきます。
空の色の美しいグラデーションは感動もの。
カラスは日本画などでも見かけますが、こうしてみると美しい鳥ですね。
朝、道ですれ違うときは怖くて仕方がないのですが。笑

最後は《薩摩焼》
鹿児島で朝鮮半島の陶工たちによって始められた薩摩焼。
幕末には金彩色絵の絢爛豪華なやきものが作られました。
万博に出品するなどし高い評価を得た薩摩焼は輸出工芸品の花形に育っていきました。

錦光山「菊唐草文ティーセット」
素敵だー。
すごく欲しい。
カップ、ソーサー、砂糖壷、ミルク壷、盆がセットになったもの。
金銀の菊に唐草文。
とても繊細です。
盆は藍色の地に金色の極細模様が浮かび幻想的。
いやー、本当に素敵。

こんなものがあったのか、と驚くばかり。
これらも村田氏の努力がなければ知ることもなかったのかもしれません。
その熱意、そして工芸に対する敬意に感服です。



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