見てきました
損保ジャパン東郷青児美術館
会期は2014年4月19日から2014年6月29日。
今回は"ハーグ派"と呼ばれた画家たちの作品の展示です。
19世紀後半のオランダ。
ゴッホが「大物(マストドン)」とよんだ画家たちがいました。
彼らは活動の拠点であった都市の名にちなんで「ハーグ派」と呼ばれていました。
今回はハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会。
"ハーグ派"はバルビゾン派の影響を受けながら、17世紀オランダ黄金時代の絵画を再評価。
屋外における自然観察を基盤とし、風車や運河、海景といったオランダならではの景色や漁業や農業に従事する人たち、室内の身近な風景などを描きました。
オランダのハーグ市立美術館の所蔵作品を中心に、ハーグ派の作品のみならず、クレラー=ミュラー美術館、ならびにバルビゾン派の作品。
そしてハーグ派の影響を受けたゴッホとピート・モンドリアンの初期作品など、約70点の展示です。
今回、かなりたくさんメモをとってきました。
そのため、閉館時間が……
(何度やっても学習しない……)
「その1」「その2」と2回に分けて書いていきます。
展示は1章から3章までの構成でしたが、2章が5つのテーマに分けられていました。
「その1」では第1章から第2章の2つ目のテーマまで。
「その2」では第2章の3つ目のテーマから第3章を書いていきます。
《第1章:バルビゾン派》
まずはハーグ派に影響を与えたとされるバルビゾン派の作品から。
1830年から70年にバルビゾン村に来た画家のことを指します。
自然と向き合い、それを忠実に表現しようとして屋外にあふれる光を画面に取り入れました。
森や川などの自然そのものや、森の小動物、家畜やたくましく生きる農民などを主題としています。
ジョルジュ・ミシェル「パリ近郊の風景」
風が吹き渡る道を親子が歩いています。
暗い雲も立ち込め、嵐の前のような印象です。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「浅瀬を渡る山羊の番人、イタリアの思い出」
バルビゾン派でコローが出ていないことはないでしょう。
画面右手には生い茂る木々。
1人の人が背を向けています。
日が沈みかけなのか、昇っているところなのか。。
空の色がきれいなグラデーション。
シャルル・エミール・ジャック「森はずれの羊飼いの女」
羊がくつろぐ、のんびりした光景。
かなりもこもこしている種類です。
光がきれいに輝きさすがバルビゾン派、と。
1849年、ミレーとともにバルビゾン村へ行った画家。
元々は地図の版画職人でした。
ジュール・デュプレ「森の中-夏の朝」
青空の色がとにかくきれい。
夏の朝の爽やかで澄んだ空気が伝わってきます。
森の中では牛が元気に動いています。
ジャン=フランソワ・ミレー「バター作りの女」
牛乳の入った桶をかき混ぜている女。
棒を握る手のたくましさ。
農民などの生活を描いたミレーらしい作品。
足元には猫がすり寄っています。
戸口には鳥の姿もありました。
ジャン=フランソワ・ミレー「羊毛をすく女」「手桶を空にする女」「母と子」「母の心遣い」
ミレーによる版画作品。
作業する女や家族を思う母など、ミレーらしい温かな視線で描かれたものが並んでいました。
シャルル=フランソワ・ドービニー「にわか雨」
突然雨が降ってきた、ということが伝わってきます。
羊を戻す犬とのんびりした羊。
雨の勢いが感じられ、音も聞こえてきそうな作品。
レオン=ヴィクトル・デュプレ「風景」
こちらも青空きれい、と思ったら「森の中-夏の朝」を描いたジュール・デュプレの弟なんだそう。
森の中、川で水を飲む牛が描かれています。
穏やか。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「セーヌ河の月明かり」
画家はハーグ美術アカデミーでハーグ派の先駆者であるスヘルフハウトに学びました。
オランダとフランスを行き来し、実際にバルビゾン派とも交友しています。
描かれているのは夜のセーヌ。
月の明かりが水面を照らし、幻想的で静かで明るい夜となっています。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「シャトー・ミーウング」
空は大きな筆遣い。
人物や木々は点描のように細かく描かれています。
明るい青空のもと、牛や人が道をゆきます。
光を感じる作品です。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「デルフトの眺め」
小さな作品です。
澄みきった水の色が美しい。
いつかこのデルフトの景色を自分の目で眺めたい。
数々の画家が描いた景色。
ギュスターヴ・クールベ「ルー川源流にかかる橋の水車小屋」
クールベはバルビゾン派ではありませんでしたが、そこと交流していたため作品が出ています。
が、この作品、今までのどかな景色が並んでいたため、はっとさせられました。
故郷オルナンの南を流れるルー川。
古い橋の向こう、滝のように勢いよく水が流れています。
動きが感じられる作品です。
《第2章:ハーグ派》
ハーグ派とは、オランダの古都ハーグにあって1870年頃から1900年に至るまでの約30年に渡りオランダ絵画に新風を吹き込んだ画家たちの総称。
王宮を有す歴史的に重要な都市で、街のすぐ背後には牧草地、そして運河の広がる開拓地です。
また森や砂丘を伴った海岸線を有します。
しかし描かれたのはここではなく、ハーグの近く、オランダのバルビゾンと呼ばれたオーステルベーグでした。
バルビゾン派に影響を受けた初期の画家たちはこの地を描きます。
ここの自然のありのままに魅了された画家たちがハーグへ募るようになったのです。
さて、ハーグ派におけるバルビゾン派の影響はよく知られています。
ハーグ派の画家たちはパリでバルビゾン派を知る、直接行く、展示で知るものなど様々でした。
バルビゾン派をオランダで広めるにあたって重要な人物がいます。
ヘンドリック・ヴィレム・メスダッハ
ハーグ派の指導的画家でしたが、元々資産家。
ハーグ派、バルビゾン派の収集に力を入れていました。
これらはメスダッハ・コレクションとして一般に開かれ、1996年国立美術館としてリニューアルしています。
第2章はハーグ派の画題となったものが5つのテーマで分けられて展示されていました。
【風景】
まずは風景から。
ヴィレム・ルーロフス「ノールデンの5月」
陽光きらめく川が美しく、明るい5月です。
鮮やかな色がいきいきとした印象を出しています。
この画家はテオドール・ルソーやドービニの影響を受けています。
そしてメスダッハ、ハブリエルなどの次世代ハーグ派の画家をブリュッセルで育てました。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「シャトー・ミーウング」
水辺の景色。
牛に鳥、小さな木製の風車。
空を覆う雲。
水がとてもきれいです。
ハーグ派の風景はオランダならではの開拓地や風車といったものが多いそうです。
ヴィレム・ルーロフス「虹」
まだ暗い雲が残る中、空には大きな虹。
影の濃い、細い道を牛たちが歩いていきます。
後ろに大きな虹が出ているよ、と教えてあげたい……
ヘラルト・ビルデルス「山のある風景(フランス、サヴォワ)」
青空にピンクに染まった雲。
山々のふもとには霞がかり、美しい景色です。
水辺には牛がいますが、柔らかい印象。
この画家は父も風景画家だったそうで、手ほどきをうけたのだそう。
マタイス・マリス「オーステルベーク、デ・オールスブロングの森の景色」
土が崩れ、根が見えます。
自然の強さ、そのままの姿が描かれています。
マタイス・マリスは兄ヤコブ・マリスと弟ヴィレム・マリスとともにハーグ派の画家として活躍しました。
マタイス・マリス「モンマルトルの近くの石切り場」
これは上のとは一気に画風が変わりました。
大きな筆致で作業する人とその風景を描いています。
ヤコブ・マリス「絵を描く画家」
屋外で制作する画家。
自画像か弟かと考えられるそう。
顔は描かれていないため分かりません。
こちらも大きめの筆致で描かれています。
【農民】
農民は田園生活へ敬意を払うハーグ派の中心的画題。
バルビゾン派の代表的な画家、ジャン=フランソワ・ミレーは農民を扱った作品が多く、重要な指導者でした。
マタイス・マリス「種をまく人(ミレーによる)」はもちろんミレーの「種をまく人」を元にしています。
マタイス・マリス「糸を紡ぐ女」
暗い背景の中に糸を紡ぐ、赤い帽子で白と青の服の少女を斜めから描いています。
顔をそむけたような状態で表情はわかりません。
こうやって働く・作業をする人々も恰好の画題でした。
以上になります。
まだまだ作品は続き、迫る閉館時間……
続きは「その2」で書いていきます。
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損保ジャパン東郷青児美術館
会期は2014年4月19日から2014年6月29日。
今回は"ハーグ派"と呼ばれた画家たちの作品の展示です。
19世紀後半のオランダ。
ゴッホが「大物(マストドン)」とよんだ画家たちがいました。
彼らは活動の拠点であった都市の名にちなんで「ハーグ派」と呼ばれていました。
今回はハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会。
"ハーグ派"はバルビゾン派の影響を受けながら、17世紀オランダ黄金時代の絵画を再評価。
屋外における自然観察を基盤とし、風車や運河、海景といったオランダならではの景色や漁業や農業に従事する人たち、室内の身近な風景などを描きました。
オランダのハーグ市立美術館の所蔵作品を中心に、ハーグ派の作品のみならず、クレラー=ミュラー美術館、ならびにバルビゾン派の作品。
そしてハーグ派の影響を受けたゴッホとピート・モンドリアンの初期作品など、約70点の展示です。
今回、かなりたくさんメモをとってきました。
そのため、閉館時間が……
(何度やっても学習しない……)
「その1」「その2」と2回に分けて書いていきます。
展示は1章から3章までの構成でしたが、2章が5つのテーマに分けられていました。
「その1」では第1章から第2章の2つ目のテーマまで。
「その2」では第2章の3つ目のテーマから第3章を書いていきます。
《第1章:バルビゾン派》
まずはハーグ派に影響を与えたとされるバルビゾン派の作品から。
1830年から70年にバルビゾン村に来た画家のことを指します。
自然と向き合い、それを忠実に表現しようとして屋外にあふれる光を画面に取り入れました。
森や川などの自然そのものや、森の小動物、家畜やたくましく生きる農民などを主題としています。
ジョルジュ・ミシェル「パリ近郊の風景」
風が吹き渡る道を親子が歩いています。
暗い雲も立ち込め、嵐の前のような印象です。
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー「浅瀬を渡る山羊の番人、イタリアの思い出」
バルビゾン派でコローが出ていないことはないでしょう。
画面右手には生い茂る木々。
1人の人が背を向けています。
日が沈みかけなのか、昇っているところなのか。。
空の色がきれいなグラデーション。
シャルル・エミール・ジャック「森はずれの羊飼いの女」
羊がくつろぐ、のんびりした光景。
かなりもこもこしている種類です。
光がきれいに輝きさすがバルビゾン派、と。
1849年、ミレーとともにバルビゾン村へ行った画家。
元々は地図の版画職人でした。
ジュール・デュプレ「森の中-夏の朝」
青空の色がとにかくきれい。
夏の朝の爽やかで澄んだ空気が伝わってきます。
森の中では牛が元気に動いています。
ジャン=フランソワ・ミレー「バター作りの女」
牛乳の入った桶をかき混ぜている女。
棒を握る手のたくましさ。
農民などの生活を描いたミレーらしい作品。
足元には猫がすり寄っています。
戸口には鳥の姿もありました。
ジャン=フランソワ・ミレー「羊毛をすく女」「手桶を空にする女」「母と子」「母の心遣い」
ミレーによる版画作品。
作業する女や家族を思う母など、ミレーらしい温かな視線で描かれたものが並んでいました。
シャルル=フランソワ・ドービニー「にわか雨」
突然雨が降ってきた、ということが伝わってきます。
羊を戻す犬とのんびりした羊。
雨の勢いが感じられ、音も聞こえてきそうな作品。
レオン=ヴィクトル・デュプレ「風景」
こちらも青空きれい、と思ったら「森の中-夏の朝」を描いたジュール・デュプレの弟なんだそう。
森の中、川で水を飲む牛が描かれています。
穏やか。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「セーヌ河の月明かり」
画家はハーグ美術アカデミーでハーグ派の先駆者であるスヘルフハウトに学びました。
オランダとフランスを行き来し、実際にバルビゾン派とも交友しています。
描かれているのは夜のセーヌ。
月の明かりが水面を照らし、幻想的で静かで明るい夜となっています。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「シャトー・ミーウング」
空は大きな筆遣い。
人物や木々は点描のように細かく描かれています。
明るい青空のもと、牛や人が道をゆきます。
光を感じる作品です。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「デルフトの眺め」
小さな作品です。
澄みきった水の色が美しい。
いつかこのデルフトの景色を自分の目で眺めたい。
数々の画家が描いた景色。
ギュスターヴ・クールベ「ルー川源流にかかる橋の水車小屋」
クールベはバルビゾン派ではありませんでしたが、そこと交流していたため作品が出ています。
が、この作品、今までのどかな景色が並んでいたため、はっとさせられました。
故郷オルナンの南を流れるルー川。
古い橋の向こう、滝のように勢いよく水が流れています。
動きが感じられる作品です。
《第2章:ハーグ派》
ハーグ派とは、オランダの古都ハーグにあって1870年頃から1900年に至るまでの約30年に渡りオランダ絵画に新風を吹き込んだ画家たちの総称。
王宮を有す歴史的に重要な都市で、街のすぐ背後には牧草地、そして運河の広がる開拓地です。
また森や砂丘を伴った海岸線を有します。
しかし描かれたのはここではなく、ハーグの近く、オランダのバルビゾンと呼ばれたオーステルベーグでした。
バルビゾン派に影響を受けた初期の画家たちはこの地を描きます。
ここの自然のありのままに魅了された画家たちがハーグへ募るようになったのです。
さて、ハーグ派におけるバルビゾン派の影響はよく知られています。
ハーグ派の画家たちはパリでバルビゾン派を知る、直接行く、展示で知るものなど様々でした。
バルビゾン派をオランダで広めるにあたって重要な人物がいます。
ヘンドリック・ヴィレム・メスダッハ
ハーグ派の指導的画家でしたが、元々資産家。
ハーグ派、バルビゾン派の収集に力を入れていました。
これらはメスダッハ・コレクションとして一般に開かれ、1996年国立美術館としてリニューアルしています。
第2章はハーグ派の画題となったものが5つのテーマで分けられて展示されていました。
【風景】
まずは風景から。
ヴィレム・ルーロフス「ノールデンの5月」
陽光きらめく川が美しく、明るい5月です。
鮮やかな色がいきいきとした印象を出しています。
この画家はテオドール・ルソーやドービニの影響を受けています。
そしてメスダッハ、ハブリエルなどの次世代ハーグ派の画家をブリュッセルで育てました。
ヨハン・バルトルト・ヨンキント「シャトー・ミーウング」
水辺の景色。
牛に鳥、小さな木製の風車。
空を覆う雲。
水がとてもきれいです。
ハーグ派の風景はオランダならではの開拓地や風車といったものが多いそうです。
ヴィレム・ルーロフス「虹」
まだ暗い雲が残る中、空には大きな虹。
影の濃い、細い道を牛たちが歩いていきます。
後ろに大きな虹が出ているよ、と教えてあげたい……
ヘラルト・ビルデルス「山のある風景(フランス、サヴォワ)」
青空にピンクに染まった雲。
山々のふもとには霞がかり、美しい景色です。
水辺には牛がいますが、柔らかい印象。
この画家は父も風景画家だったそうで、手ほどきをうけたのだそう。
マタイス・マリス「オーステルベーク、デ・オールスブロングの森の景色」
土が崩れ、根が見えます。
自然の強さ、そのままの姿が描かれています。
マタイス・マリスは兄ヤコブ・マリスと弟ヴィレム・マリスとともにハーグ派の画家として活躍しました。
マタイス・マリス「モンマルトルの近くの石切り場」
これは上のとは一気に画風が変わりました。
大きな筆致で作業する人とその風景を描いています。
ヤコブ・マリス「絵を描く画家」
屋外で制作する画家。
自画像か弟かと考えられるそう。
顔は描かれていないため分かりません。
こちらも大きめの筆致で描かれています。
【農民】
農民は田園生活へ敬意を払うハーグ派の中心的画題。
バルビゾン派の代表的な画家、ジャン=フランソワ・ミレーは農民を扱った作品が多く、重要な指導者でした。
マタイス・マリス「種をまく人(ミレーによる)」はもちろんミレーの「種をまく人」を元にしています。
マタイス・マリス「糸を紡ぐ女」
暗い背景の中に糸を紡ぐ、赤い帽子で白と青の服の少女を斜めから描いています。
顔をそむけたような状態で表情はわかりません。
こうやって働く・作業をする人々も恰好の画題でした。
以上になります。
まだまだ作品は続き、迫る閉館時間……
続きは「その2」で書いていきます。
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