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ゴッホの原点 オランダ・ハーグ派展 近代自然主義絵画の成立 (その2)

2014-06-13 21:30:00 | 美術
見てきました

損保ジャパン東郷青児美術館

会期は2014年4月19日から2014年6月29日。

今回は"ハーグ派"と呼ばれた画家たちの作品の展示です。
19世紀後半のオランダ。
ゴッホが「大物(マストドン)」とよんだ画家たちがいました。
彼らは活動の拠点であった都市の名にちなんで「ハーグ派」と呼ばれていました。
今回はハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会。

その1」で第1章から第2章の2つ目のテーマまでを書いたので、その残りを書いていきます。

《第2章:ハーグ派》
【家畜】
これまでにたくさん"牛"が出てきましたが、牛はオランダ経済の大黒柱だったそう。
単なるモチーフではなく、象徴的な意味合いもあったそうです。

ヴィレム・マリス「水飲み場の仔牛たち」
水飲む牛と少年たち。
柔らかい光が穏やかな印象を出しています。
ヴィレム・マリスはのどかな田園風景を多く描きましたが、
"私は仔牛を描かない。むしろその光の効果を描いているのだ。"
と言っていたそう。

ヴィレム・マリス「ロバの番をする少年」
少年たちとロバ。
右にいる少年がすごくかわいい。
雲の隙間から光が漏れています。

ヴィレム・マリス「泳ぎの練習」
自宅の庭の池で泳ぐアヒルの親子を描いたもの。
水の様子やアヒルの毛並、木の葉など質感の違いが的確に表現されていました。

【室内】
ハーグ派は農民、漁民の家族の日常を描きました。
これはミレーの影響がみられるそう。
室内画では窓からの光に照らされて作業する人々が多く描かれましたがこれは17世紀オランダの影響だそう。

ヨーゼフ・イスラエルス「日曜の朝」
椅子に座り、窓の外を眺める女性。
机の上には厚い本。
読んでいて一休み、なんでしょうか。

ヨーゼフ・イスラエルス「縫い物をする若い女」
窓際に椅子を置いて座り、一心に作業する女性。
真剣な表情です。
窓の外には緑と青空が見え、美しい景色といい光が入ってきていることが伺えます。

アルベルト・ヌウハウス「母と子どもたち」
簡素な室内で赤ちゃんをあやす母親とそれを後ろから覗き込む姉。
色彩は控えめですが、光が登場人物を照らしています。

ベルナルデュス・ヨハネス・ブロンメルス「室内」
窓際の食卓での親子の食事風景。
父は子を膝の上にのせ、母親はお茶を注ごうとしています。
光りは父と子を照らし、母親は逆光となっています。
落ち着いた作品。

アントン・ファン・ラッパルト「版画集を見る」
室内で版画集を見ている男の子と女の子。
床にはおもちゃが転がり、猫も数匹。
幸せそうな家族を思わせます。

【海景】
オランダの景色で欠かせないもの、海。
漁民の生活、漁の様子などが描かれています。

ヤコブ・マリス「漁船」
雲がもくもくと広がる空を背景に美しいシルエットのニシン漁の船。
船からはロープが伸びていますが、これは船を浜にあげるためのもの。
スヘフェニンゲンはハーグ郊外の漁村ですが、港がなかったそうで、馬がロープを引っ張って浜にあげていたのだそう。

アンドレアス・スヘルフハウト「スヘフェニンゲンの浜辺と船」
ハーグ派の先駆者でハーグ派の画家を育てました。
青い空を背景に船が描かれています。
傘をさす婦人なども描かれていました。

ヘンドリック・ヴィレム・メスダッハ「オランダの海岸沿い」
夕暮れの海岸。
空をおおう雲の隙間から光が漏れ、水平線は明るく染まっています。
帆船がいくつか海に。
シルエットで描かれ、光りを浴びて美しい姿となっています。
空や雲が大きく、なんだか壮大ですがすがしい気持ちになります。
メスダッハは海景画で知られた画家。
「その1」でも書きましたが、資産家でバルビゾン派、ハーグ派の作品を収集しました。

ヨーゼフ・イスラエルス「エビをとる人」「漁師の女」
日本的な印象も受けました。
道具を手にしエビをとる男と、海を背景にこちらを見る女。
力強さや素朴さが感じられます。

ベルナルデュス・ヨハネス・ブロンメルス「浜辺」
浜辺の水がたまったところで船のおもちゃを浮かべて遊ぶ子どもとそれを見守る母。
のどかな景色です。

フィリップ・サデー「貧しい人たちの運命」
漁の成果を馬車に詰め込む人々を後ろに、魚や貝を拾う人々が描かれています。
上空には魚を狙ったカモメたち。
なんだか切ない。
この画家はスヘフェニンゲンの漁民を多く描きました。

ハーグ派の画家たちは海をよく描きました。
中でもスヘフェニンゲンの海はもっとも人気だったそう。
しかし、当時、静かな漁村だったスヘフェニンゲンをリゾート地とする計画が持ち上がりました。
もちろん画家たちは猛反対。
スヘフェニンゲンの環境を守れと、デモンストレーションとして、メスダッハを中心に、49日間という短期間で径14m、総面積1,680㎡という世界一の大絵画を完成させました。
しかし、ここはカジノを有するリゾート地へ。
この作品だけは残り、現在もハーグのパノラマメスダッハ"Panorama Mesdag"と呼ばれる円形の建物内にあるそうです。

《第3章:フィンセント・ファン・ゴッホとピート・モンドリアン》
ハーグ派は19世紀終わりごろに求心力を失い終わりを迎えます。
ハーグ派にルーツを持つゴッホ、モンドリアンは伝統的造形を大胆に改変し、独自の表現を探っていきました。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ジャガイモを掘る二人の農婦」
ゴッホは16歳から20歳までの間、ハーグの画商のもとで働いていたので、その際にハーグ派の画に接していたと思われます。
27歳で画家となる決意を固めたゴッホは従姉妹と結婚したハーグ派の画家マウフェに師事しました。
せっせと働く2人の農婦。
バルビゾン派のミレーのようです。
まぁ、ゴッホはミレー作品の模写を繰り返していたため不思議ではありません。

フィンセント・ファン・ゴッホ「雪原で薪を集める人びと」
薪を背負い、雪道を行く家族と思わしき集団。
空には大きく真っ赤な太陽。
力強く庶民の生活を描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ「白い帽子をかぶった農婦の顔」
画面いっぱいに描かれた浅黒い農婦の顔。
こちらも力強い。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ガシェ博士(5月25日)」
ゴッホによる唯一のエッチング作品とのこと。
ガシェはフランス、オーヴェールの精神科医。
ゴッホの健康回復のためにオーヴェールに招き、親しく交流します。
ゴッホはここで創作意欲がよみがえり、村の景色や村人、そしてガシェを描きました。
死去するまでの2か月間に、ゴッホはこの村で80点ほどの作品を残しています。
ガシェ自身も絵を描き、「死の床のファン・ゴッホ」という作品も残されています。

ピート・モンドリアン「アムステルダムの東、オーストザイセの風車」
抽象画家として知られるモンドリアンですが、1890年代、ハーグ派にもっとも強い影響を受けています。
運河と森と風車が描かれた作品です。
明るい色彩で穏やかな光のある風景画。
これがあのモンドリアンの作品なの!?と驚きです。
ハーグ派の画家、の作品です。

ピート・モンドリアン「ダイフェンドレヒトの農場」
だいぶ簡略化されています。
家と木々が描かれていますが、水面にもはっきりと映り込んでいます。
色彩も明るく素敵な作品です。

ピート・モンドリアン「ドンピュルクの風車」
さらに簡略化されています。
風車をアップで描いています。
シルエットで描かれていていて、情景ではなく、構成に関心があることが伺えます。

ピート・モンドリアン「夕暮れの風車」
これはすごく好き。
おもしろい。
シルエットで大きく風車が描かれています。
存在感、というか圧迫感というか、、、迫力があります。
空もおもしろくて鱗雲のような雲がもくもくと。
雲間から月がのぞいていて一部を照らしていますが、妖しさを増しているかのようです。

以上になります。
バルビゾン派、そしてハーグ派、そしてモンドリアン。
流れも分かりやすく面白い展示でした。
光の扱いがどれもよかったのはさすがオランダ、といった感じです。
そう考えると、17世紀オランダ絵画もポイントですね。
大満足です。



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