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没後90年 鉄斎 TESSAI

2014-06-20 21:30:00 | 美術
見てきました

出光美術館

会期は2014年6月4日から2014年8月2日。

富岡鉄斎(1836-1924)
彼が生きたのは、幕末・明治・大正と激動の時代。
学問の道を志し、儒学者として大成する傍ら、書画の制作に勤しみました。
当時の東西画壇においては、西欧化が進んでいました。
その中で、鉄斎は先達文人たちが遺した想いに共感。
多くの書物を通じて学び得た世界観を、自らの絵筆により描き出しました。
若い頃から日中のさまざまな書画の優品に触れ、それらの画法に倣った鍛錬の成果が、最終的に見事に混ざり合って、独自の画境を築きました。
没後90年を迎えた近代文人画の巨匠・鉄斎。
今回は国内屈指の出光コレクション約70件の展示です。

《1.若き日、鉄斎の眼差し -学ぶに如かず》
鉄斎は石門心学を家学とする京都の法衣商・富岡家に次男として生まれました。
若い日から幅広く学問・文芸の道に親しみました。
鉄斎の学びの精神は、実学を基本とし、書物で知り得た世界を実感するために、たくさんの書画にもふれていきます。
中でも大田垣蓮月との出逢いは、若き鉄斎の人格に大いなる刺激を与えます。
老いた尼僧のお世話をする生活の中で、鉄斎は人生の享楽と悲哀の実相を学び、また和歌の情緒に、俳画風の素朴な絵で答えることも、この頃覚えました。

「富士山図」
墨の濃淡で描かれたもの。
鉄斎は明治8(1875)年、富士登頂。
天皇が東海地方へ巡遊されるにあたって御興の付き添ったときです。
すっと高くスタイルのいい富士山です。

「十二ヶ月図」
京都・北白川、心性寺の尼僧、大田垣蓮月と同居し、身の回りの世話をしながら学問に励んだ鉄斎。
これは蓮月の和歌に俳画風の簡略な絵を添えたもの。
展示されていたのは4月から9月。
シンプルながらに季節の美しさが表現されています。

「北山溪図巻」
巻物に描かれているのは北山渓谷の景観を描写したもの。
山の中の皮の流れ、そこに浮かぶ船などずらっと描かれています。
細部まで丁寧です。

「高賢図」
戦国・三国・普時代より明時代に至る高賢12人を12幅に描いたもの。
顔は精密に描かれ、服も彩り鮮やかです。

《2.清風への想い -心源をあらう》
俗世から離れて自娯適意の自由な人生を歩む文人の生き方に憧れた鉄斎。
本格的に学問の道を究めんと進んでいきます。
その中で"清風"、煎茶・喫茶の世界へと憧れを抱きます。
俗世からの離脱といっても容易なことではなかったため、居ながらにして精神のみを解き放つために、喫茶のこころに心酔してゆくのです。
その上で、単に自分一人の世界観だけにとどまらず、文人的営みを通じてたくさんの人々と語り合い、学ぶことの大切さを理解していきました。

「陽羨名壷図巻」
宜興窯に関する書物"陽羨茗壷系"に載っている明時代末頃の名工の名とそれぞれの急須を描いたもの。
茶を飲も楽しむ人物なども描かれています。

「墨竹図」
扇子の形をした中に、すーっと伸びる竹が描かれています。
しなやかで見ていて気持ちのいい作品です。

「高士煎茶図」
煎茶の起源、中国・唐の陸羽を鉄斎はしばしば描きました。
描かれているのは崖の岩間。
煎茶を入れる高士。
大自然の中でお茶を楽しむことは当時の文人たちのあこがれであったそう。
確かに、身も心もリラックスできそうですね。

「漁弟漁兄図」
日の暮れゆく漁村を描いたもの。
墨を荒々しく擦り付けるようにしてもやに包まれる情景を描いています。
漁をする者、終えて酒場へ行く者など自然の中に生きる人々が温かい視線で捕らえられています。

《3.好古趣味 -先人への憧れと結縁》
鉄斎の師は書物の中で出逢った敬愛すべき古人たち。
若いころから古人たちの古蹟を訪ねる旅をし。
先賢の遺愛品や縁の品々を見つけたならば、それを手元に置きたいと願い。
著名な画家の古画にふれては模写を試みたり。
このような"好古癖"が、鉄斎の書画、骨董を愛玩する蒐集癖へと転じていったようです。

「蘭亭曲水図」
同じテーマを描いたものが2つ並んでいます。
右は鮮やかで上流にも人がいて上から流れてきている様子が分かります。
左は細密で人物などは下流に集中しています。
「蘭亭曲水図」なんかはこれまでの鉄斎の作品やエピソードからもすごく好きそうな題材ですね。
このテーマ、様々な文人画家も描いていますから。

「米法山水図」
"米法山水"という名称で親しまれる山水画。
米点と呼ばれる楕円形の墨点を施し描かれています。
墨だけで描かれた山々は幻想的。

「口出蓬莱図」
仙人の口から煙のように蓬莱山が出てくるという不思議な作品。
毎日、日の暮れるころ。
北西に向かい目を閉じてこぶしを固く握り、崑崙山を思い続けること30年。
神仏のありさまをつぶさに思い描けるようになったそうです。
これはそれを表現したもの。
ユーモラスで思わず笑ってしまいます。

「明恵上人旧廬之図」
華厳宗の明恵の住んでいた高雄の山水。
高雄の山は紅葉の名所だそう。
紅葉で色づき明るくとても美しい。
そうした所に住めば仙人になれる素質が増す、と書かれています。
まさに理想の世界なのかもしれません。

《4.いざ、理想郷へ》
鉄斎の理想郷への抱く想いは高まるばかり。
江戸時代の文人が憩った奈良・月ヶ瀬渓谷の梅林。
中国画に倣った"青緑山水"など、虚実入り混じる不思議な空間が描かれるようになりました。

「月ヶ瀬梅溪図」
奈良・月ヶ瀬渓谷の梅林は江戸時代の文人たちも憩った景勝地。
梅の芳香が漂う世界はまさに桃源郷だったでしょう。
緑の山々の中にピンクの点が華やかです。

「放牛桃林図・大平有象図」
6曲1双の屏風。
草原に解き放された牛。
咲き乱れる桃。
水墨と濃淡で描かれた景色はこれまた不思議な癒しの世界。

「青緑山水図」
色彩がきれい。
"青緑山水"とは群青や青緑の顔料を使って描く着色山水画。
鮮やかでグラデーションなどもとてもきれい。
こちらは眩しいような理想郷です。

「看山清談図」
渓流が勢いよく注ぐ水辺で2人の高士が座っています。
優しい色使いです。

「杏華村暁図」
牛飼いの童が指さした方には杏子の花咲く村。
明るい色彩で人々の生活が描かれ、これも理想郷です。

〈特集〉 扇面を愛す
ここでいくつかの扇が展示されていました。
鉄斎は、お祝いや良縁、仏事や時節の交流などに扇子を送っていたそうです。
鉄斎にとって扇子は絵手紙のようなものだったそう。

「石榴果図」
色鮮やかな柘榴。
柘榴は子孫繁栄などを表しますから、お祝いごとでしょう。

「福内鬼外図」
おたふくが笑いながら鬼を追い払う場面。
かなりおもしろい作品です。
もらったら嬉しいだろうなぁ。

《5.奇跡の画業 -自在なる境地へ》
生涯にわたって描きつづけた理想郷の画は、80歳代を迎えて見事に大成。
"青緑山水"の色彩美から離れ、一面を水墨で覆う画風の実験を経て、これらが相互に融け合った鉄斎独自の瀟洒な画風を完成させました。

「佛鑑禅師図」
墨のみで描かれた世界。
山とその中腹には庵があります。
川が流れ穏やか。
これがたどり着いた理想郷なのかな。
のびやかです。

「蓬莱仙境図」
蓬莱山を描いた最晩年の大作。
大胆な墨の線が目をひきます。
その線は山が動き出しそう、生きているかのようです。

以上になります。
とても面白く、また不思議な世界が楽しめる展示でした。
追い求めた理想を順を追って私自身も追っていけて、その世界に入り込んで鑑賞できました。
癒しの世界です。



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