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コロナ禍で苦境 イギリス演劇界

2020-11-23 07:01:16 | 報道/ニュース

10月29日 NHKBS1[キャッチ!世界のトップニュース」


シェークスピア以来
演劇が盛んなイギリス。
その中心地がロンドンの劇場街ウエストエンドである。
「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」など
世界各地で公演され人気を集めている名作ミュージカルはこのウエストエンドで生まれた。
ミュージカルの本場として多くの観光客を魅了してきただけでなく
最高の舞台を目指して世界中から俳優やダンサー 脚本家などが集まっていた。
しかし今年3月以降
イギリス全土で新型コロナウィルスが猛威を振るい
劇場は一斉に休演が余儀なくされている。
影響は長引いていて
舞台に関わってきた人たちはかつてない苦境に立たされている。

9月 ロンドン中心部で行われたデモ。
舞台などで働く人たち100人ほどが参加した。
感染拡大によってミュージカルなど舞台の休演が続くなか
政府に対し
さらなる休業補償や劇場再開に向けた支援を求めた。
(デモ参加者)
「舞台のパフォーマンスは人を集めて成り立つので
 今は苦しいです。」
「22年間舞台で生きてきました。
 私には単なる仕事でなく
 血と汗と涙です。
 この業界はイギリス経済に大きく貢献してきました。」
ニューヨークのブロードウェイと並ぶミュージカルの本場ロンドンのウエストエンド。
年間1,500万人超の観客が訪れていた。
約2年の制作期間を費やした大作ミュージカル「プリンス・オブ・エジプト」。
今年2月 華々しくオープニングを迎えた。
(プロデューサー レイドローさん)
「オープニングの夜はすばらしかったです。
 レッドカーペットが敷かれ
 セレブが次々やってきました。」
しかしわずか3週間後
イギリス全土で厳しい外出制限の措置が取られ
休演に追い込まれた。
半年以上が経つが再開のめどはたっていまい。
(プロデューサー レイドローさん)
「ソーシャルディスタンスは舞台にとって現実的ではありません。
 距離を取る必要がなくなるまで待たなくてはいけません。
 業界全体に影響が広がっています。」
このミュージカルの出演者の1人
ドイツ出身のビラクマンさん。
ドイツではネットで動画を見るなどして自己流で踊っていた。
奨学金を得てロンドンの専門学校へ留学してからダンスを本格的に学んだ。
(ダンサー ビラクマンさん)
「昔はつま先も伸びてないし
 見ていて恥ずかしいです。」
あこがれだったウエストエンドの舞台に立ったビラクマンさん。
今回の作品のオーディションでもダンサーとしての卓越した技量が評価された。
(ダンサー ビラクマンさん)
「オーディションでは才能がある人が多く神経質になっていました。
 電話で結果を聞いたときは本当にうれしかったです。」
出演が決まってからは公演に向けて練習を重ねてきた。
しかし3月に休演してからは出演者同士で集まることも難しくなった。
オンラインで近況を話し合い励まし合っているという。
ビラクマンさんは毎日体を動かして
公演の再開に備えている。
政府からの支援に加え
ドイツでテレビの仕事をこなすなど
何とかやりくりだきているが見通しは立っていない。
30才という年齢もあって
ダンサーとして舞台に立てる大切な時間を失うのではと焦りも感じている。
(ダンサー ビラクマンさん)
「年齢を考えると長くはできないと思います。
 でもウエストエンドでやっていきたい。
 ウエストエンドがなくなるなんて考えたくもないです。
 ウエストエンドは芸術の場で
 みんなの夢なんです。」

イギリスは舞台産業が盛んで
ウエストエンドを含む国内の劇場を訪れた観客は
一昨年は3,400万人にのぼっている。
これはイギリスの国民的なスポーツであるサッカーの観客数を上回る人数である。
また舞台関係で働く人は29万人にのぼるとみられている。
イギリス議会の委員会が夏には発表した報告書によると
国内の約1,100の劇場では少なくとも1万5,000以上の公演がキャンセルになり
損失は約6億3,000万ポンド(約860億円)にのぼる見通しだとしている。
政府は一部規制を緩和していて
出演者や観客同士が距離をあけるなどの対策をきちんととれば公演の再開は可能ではある。
ただ日本でも人気の「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」など有名なミュージカルは
莫大な制作費がかかっていて
距離を空けるために観客の数を制限すれば採算をとるのは難しくなる。
このままではイギリスの舞台産業そのものが壊滅的な打撃を受け
存続できなくなるのではないかと危ぶむ声さえ上がっている。
イギリス全土で感染が急速に広がっていて
ロンドンは3段階のうち2番目の感染レベルとなっている。
ウエストエンドには海外からの旅行客も数多く訪れていたが
渡航そのものが制限されている今
厳しい状況に変わりはない。
劇場周辺のパブやレストランなども大きな打撃を受けている。
多くのミュージカルは年内の公演再開は基本的に断念し
来年以降の再開を目指すとしている。
そんな中で少しずつ新たな動きも出てきている。
たとえば1人
あるいはごく少人数の出演者による小規模な舞台は一部で公演を始めているし
ウエストエンドで上演されてきた「SIX」というミュージカルは11月から公演を再開する。
舞台に登場するのは6人の役者だけなので距離を取りやすいということもある。
ミュージカルのプロデューサー レイドローさんもダンサーのビラクマンさんも
厳しい状況にあることは認めながらも
イギリスの舞台芸術の文化をなくしてはいけない
絶対にあきらめない
という強い思いを持っていた。
安心して舞台を再開できる日が1日でも早く来ることを誰もが願っている。



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