11月2日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
トルコでは古くから猫を大切にしていて
最大都市のイスタンブールでは
市民がノラ猫にエサを与える様子がよく見られる。
街角でくつろぐ猫たち。
その数は市全域で約12万5,000匹と推計されている。
イスタンブールでは人々がノラ猫の世話をする光景が日常的である。
市民の多くが信じるイスラム教の預言者ムハンマドは猫を大切にしていたと言い伝えられている。
そのせいもあり
猫たちは人々に可愛がられ
飢えることもなく暮らしてきた。
しかし3月
トルコで初めて新型コロナウィルスの感染者が確認されると状況は一変。
外出や商業活動は制限され
市民は外出を控えるようになった。
その影響を受けたのはノラ猫たち。
人々は猫たちを気にかける余裕もなくなり
路上ではやせ細った猫が見られるようになった。
こうした状況を受けて行政が動いた。
イスタンブール県知事は
“われわれの友人を支えよう”と題したメッセージを発表。
“イスタンブールではすべての命が尊い”
“この困難なとき
どうか路上の動物たちに1杯の水と食べ物を置いてほしい”
このメッセージは瞬く間にトルコ各地に広がった。
これに呼応して地域住民も動き出す。
トゥトゥクスさん。
以前は自宅近くの猫を世話するだけだったが
いまは朝と夕方の2回
7か所を回ってエサや水を補充している。
(トゥトゥクスさん)
「猫のエサの世話をしないと
私の心は安らげません。」
しかしノラ猫の世話には毎回1時間半ほどかかってしまう。
このためトゥトゥクスさんは有志20人を集めてグループを結成。
交代で世話することにしたのである。
グループに参加したススレルさん。
この日は夕方の登板を引き受け
約20匹分のエサを購入した。
ススレルさんの勤めている会社は感染拡大で開店休業状態となり給料は支払われていない。
そうしたなか貯金を切り崩してでも猫の世話をしたいという。
(ススレルさん)
「私たちも動物もコロナで苦しんでいます。
出来るだけのことをしてあげたいです。」
活動を続けるなかトゥトゥクスさんたちを悩ませているのが
ペットとして飼われていた猫が捨てられるケースが増えたことである。
7歳のときに母親を亡くしたトゥトゥクスさんは
そんな猫を目にすると平静ではいられない。
(トゥトゥクスさん)
「こどものころ“ママは戻って来ないの?“とつぶやいていました。
捨て猫と私が重なるんです。」
グループでは路上での生活に適応できず弱った猫をたびたび保護している。
この日衰弱した子猫を見つけたトゥトゥクスさんは
行政に助けを求めることにした。
駆けつけたのは動物衛生センターのスタッフ。
子猫の命に別状はないものの
健康状態を観察するためしばらくセンターで預かることになった。
センターでは通報を受けるたびに動物専用の救急車で直ちに駆けつける。
住民からの相談は多い日で1日80件にのぼり
約200匹の猫や犬を預かっているという。
センターでは必要に応じてX線検査や手術などの治療も行われる。
緊急の場合は救急車の中で応急処置もできるようになっている。
(動物衛生課長)
「午前9時から午後9時まで休みなく働いてます。
予算も限界に達していますが
何とか継続していきたいです。」
終息が見えない新型コロナウィルス。
トゥトゥクスさんは
人も動物たちも置き去りにされることなく
この危機を乗り切れるよう祈っている。
(トゥトゥクスさん)
「私は人や動物が食べ物で困っているのを見たくありません。
悲しくなりますから。
分け与える気持ちは大切だと思います。」