9月10日 NHKBS1「国際報道2020」
UAEアラブ首長国連邦のドバイで
伝統衣装の“トーブ”の生地を販売するアドバニさん。
トーブは中東の湾岸地域の男性が着用するもので
王族の正装としても使われている。
イスラム教の行事の前などによく新調するそうだが
今年は新型コロナウィルスの影響で客が激減している。
若者からお年寄りまで広く愛用されているトーブ。
風通しが良く
気温や湿度が高い中東の湾岸に適している。
ドバイ中心部の通りにはトーブの生地を扱う専門店が数十軒集まっていて
毎年行われるイスラム教の大祭
「犠牲祭」の前には新調する客でにぎわうのだが
今年はどの店も売り上げが激減している。
(トーブ生地店 店員)
「客が全然来ません。
新型コロナの影響です。」
店長を務めるアドバニさん。
店には数千種類の生地が並んでいる。
通常なら好みの生地を選ぶ客でいっぱいなのだが
アドバニさんの店も売り上げが例年の7割減少。
その中でも従業員の雇用を守りながらなんとか店を続けている。
(アドバニさん)
「新型コロナの影響で客はトーブ作りに出かけることも怖がっています。
3か月商売ができなければ
閉める店も出てくるでしょう。」
18才でインドからドバイにやって来たアドバニさん。
以来30年余
今では業界団体の代表も務め
湾岸の文化を支えるトーブ作りに誇りを感じている。
(アドバニさん)
「私はこの仕事が好きです。
ここの人々は伝統衣装に誇りを持っています。」
現在の危機を切り抜けトーブ作りの伝統を守るため
アドバニさんは感染のリスクを抑える新たなサービスを考えた。
(店のPR動画)
好みのデザインを選んだらスタッフが自宅で採寸します。
新しいトーブで家族と幸せな祭日を迎えられます。
客が店に来なくても
スマートフォンのアプリで好みのデザインや生地を注文できるシステムを導入。
スタッフを増やして
生地の販売だけでなく仕立てまで請け負うようにした。
注文が入ると消毒した採寸道具や生地のサンプルを持って客の自宅まで出向いて採寸する。
注文は月10件程度だが
手ごたえを感じているという。
さらに新型コロナに対応した新しい生地の取引も始めた。
「これが抗菌
これは抗ウィルスです。
9月には届く予定です。
とても人気があります。」
抗菌や抗ウィルス作用をうたう生地。
アプリから注文した客に新商品として売り込みをかけていく。
(アドバニさん)
「新型コロナは問題だけどビジネスチャンスでもあります。
ドバイはこれまで何度も経済危機に直面したけれど
そのたびに乗り越え強くなりました。
UAEの経済に引き続き貢献していきます。」
危機を乗り越えた時こそ強くなれる。
新型コロナの終息と経済の回復を願い
模索を続けるアドバニさんの思いである。