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ロンドンから徒然に

アダム

2009-08-11 | 映画・演劇
 先日、Gary McKinnonというイギリス人の元コンピュータ・プログラマーが、ハッキングの嫌疑によるアメリカへの身柄引き渡しに異議を申し立てていたのですが敗訴したというニュースが、かなり大きく扱われました。
 
 彼は2001年から2002年にかけてNASAやペンタゴンを含むアメリカ政府機関の計97台ものコンピュータに不正侵入していたと言われています。(こんなセキュリティの厳重なところに入り込めること自体が驚きですが)
 アメリカではこういう政府機関へのハッキングに対して厳罰を課しているので、このままの量刑だと60年以上になるそうです。

 で、どうしてこれが特異なニュースになるかというと、彼がアスペルガー症候群の患者であり、ハッキングの目的もアメリカ政府の隠しているUFOに関する事実を知りたかったということだからなのです。

 アスペルガー症候群、と言っても耳慣れない言葉かもしれません。

 ・・・・・・実はさっきからどう説明しようかと考えあぐねています。こんなブログで簡単にコメントするには語弊がありそうで、自閉症と対比しようとしても、今度は自閉症の説明が舌足らずになりそうです。

 ある一面だけを捉えて言うのなら、例えば他人の表情や仕草から相手の感情を読み取ったりすることが困難で、きちんと言葉で出てくるメッセージでしか理解できないとか、自分の興味のあることに異様に熱中して、相手の困惑も構わずにしゃべり続けてしまうとか、そういった面で他人とのコミュニケーションに難が生じ、誤解を生むこともあるようなのです(もしかしたら、僕のこういった知識も当人にしたら間違いなのかもしれませんので了承下さい)

 実は僕が書きたかったのはこのニュースのことではなかったんです。ある映画を紹介するための導入部にしようかと思ったのですが、ここまでで非常に悩んでしまいました。

 で、その映画の名前は『Adam』。ヒュー・ダンシー演じるアスペルガー症候群のアダムと、ローズ・バーン演じるベスのNYでの恋物語です。
 “良い映画”かどうかは、ここで表現される病気の内容に対しての掘り下げや、恋に落ちる二人の心理のリアリティとかに対して、辛口の人から厳しい言葉も聞かれるかもしれませんが(その面でも僕は良くできていたと思うし、特にヒュー・ダンシーの熱演には感心しました。ローズ・バーンも魅力的です)僕は非常に“好きな映画”です。



 人とのコミュニケーションに困難を覚えるのは、何も病気の人に限ったわけではなく、普通の人でも分かる感情だと思います。
 ふたりの恋愛のシーンなんて、もう表情を見ているだけで、こちらも泣きそうになってしまいます。White Lieも許すことのできないアダムの頑なな心理世界が、だんだんと溶けていってのラスト・シーンは、ふたりが愛おしくてたまりませんでした。

 綺麗事だと切り捨てることはできるでしょうが、それでもいいじゃないですか。こんな純粋な恋愛って貴重です。

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