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ロンドンから徒然に

ロダンのバルザック像

2008-10-03 | アート
 こちらで画廊や展覧会に行くと、絵画と並んで彫刻もとても人気があります。多分これは住環境の違いによるもので、庭の造りや家の構造(それに何よりも広さ)にしっくりくるからでしょう。時々日本で凄い(?)彫刻を置いているうちを見かけますが、やっぱりどこか似合いませんもんねぇ。

 彫刻というと誰もがまずロダンを思い浮かべるんじゃないでしょうか。『考える人』なんて子供でも知っている有名な作品だと思います。



 でも当時はロダンほど異端の彫刻家だった人もいないのです。何しろ貴族のための神々しい彫刻が主流の時代に“鼻のつぶれた男”を出品するのですから。
 もちろんこの作品は落選してしまいます。昨日書いた話のように、本当の天才を判断できる審査員たちは存在しなかったのでしょう。



 エッフェル塔やオルセー美術館などのあるパリ7区にロダン美術館があります。かつてのアトリエとして使われた館には彼の数々の作品が収められていますが、僕がけっこう気に入っているのは『バルザック像』です。
 フランスを代表する文豪ゆえ、周囲はある種の権威と優雅さに満ちた姿を期待したようですが、出来上がったロダンの彫刻は、正装ではなく部屋着でそのずんぐりした体を包み、 “深夜に想を練る姿”として表現されていました。



 これは世間的には失敗作と評され、依頼を出した仏文芸家協会も引き取りを拒否してしまうのです。結局再評価がなされてラスパイユ大通りにブロンズ像が設置されるのは彼の死後のことです。

 僕が感動したのは、(今は展示の仕方が変わっているのですが、昔は)ここに並べられた習作の数の多さでした。
 ロダンは依頼を受けてから、バルザックの作品を始めとした資料を読み漁り、彼の生誕の地ほかゆかりの土地にも旅し、夥しい数のデッサンと習作を残し、作品が出来上がったのは7年後のことだったのです。

 ロダンほどの天才でも、ひとつの作品を生むのにこれほど苦しんでいるんだと知って、何だか偉人の伝記を読んで感動する小さな子供のような気分になったのです...
 なんて書きましたが、子供の頃には伝記なんて嫌いで殆ど読んだことがありません。むしろこういった本物の彫刻や絵画を見る機会を早く作ってあげたら、子供たちも素直に感動するんじゃないかと思うのですが、これも日本ではなかなか難しいですよね。

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