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ロンドンから徒然に

あのころの未来に...

2017-10-21 | 映画・演劇
何につけても続編の難しさはあると思うけれど、特に映画の場合はそうなのか「ゴッドファーザー」のような数少ない例外を除いて、大抵は失敗しているような気がする。
その意味で注目されるのは35年ぶり(!)の続編となる「ブレードランナー 2049」。オリジナルがあれだけカルト的な存在感を醸し出していると、その要素を受け継いだままメジャーな映画館で上映するに耐える(つまりコアな作品的評価だけでなく、興行成績も要求される)映画にするには相当な知恵と技術とセンス(そしておそらく情熱)が必要になるだろう。

で、結論だけれど、僕は大成功だったと思う。
今回リドリー・スコットは製作総指揮に回り、替わってメガホンを取ったのがドゥニ・ヴィルヌーヴ。前作の「メッセージ」でもありきたりでないSF感覚を発揮していたけれど、今回の演出も素晴らしい。ひとつひとつの場面は緊張感に溢れていながら、全体を通奏低音のように覆う澄んだ悲しみに満ちた透明感が(矛盾した感覚かもしれないが)おおらかに包み込んでくれているようにも感じた。それを象徴しているのがオリジナルにはなかった雪のシーンかな。

それはアカデミー賞“ノミネート”常連(なんと12回。だのに受賞なし。今回こそ取ってほしい)の撮影監督ロジャー・ディーキンスに負うところも大きいと思う。とにかくヴィジュアルが尋常でなく美しい。オリジナルを引き継いだ猥雑な街を切り取っても、延々と続く荒涼な地を描写しても、どこか浄化された神秘的な感覚が宿る。

そしてまたもや脇を固めるキャラクターの魅力的なこと。敢えて女性陣だけに絞って言及しても、必ずしも世界的に名を知られているわけでもないアナ・デ・アルマスやシルヴィア・フークスの存在感が圧倒的だ。それは丁度オリジナルで殆ど無名だったショーン・ヤングやダリル・ハンナが放っていたオーラと同じものを感じる。
ちなみに、今回のラヴシーンもすごくいい。通常の形では結ばれない互いの気持ちを思うととても切なくなる。



まだまだ書きたいことはあるが、ストーリーに触れずにいるのが難しくなるので、ここらでやめておくとして、出来の良い作品ということが分かると、次に気になるのは興行成績だ。そこでニュースを見ると、なんと全米で大コケと騒がれている。
??? Box Officeを覗いてみたら、ちゃんとアメリカでも初登場1位だ。それで大コケというのは欲張り過ぎでは?まぁ、間違いなく莫大な制作費をつぎ込んでいるだろうから、求められる数字のハードルも相当高いんだろうとは思うけれど。
しかし振り返ってみたら、オリジナルの時も(同年の「ET」の大ヒットがあったせいか)最初の上映で大ヒットだったという印象はない。さて、今回はどんな形に昇華されて行くんだろう?

それにしてもオリジナル上映の時には果てしない未来に思えた2019年という設定が、実際もうすぐそこにある。いや、その前に既に21世紀に踏み込んでいるという事実に愕然となる。
子供の頃から21世紀という概念はとても特別だった。それは何十年という時の経過が徐々にもたらす“量的”な変化というのではなく、何かある境界線を飛び越えて一気に異次元の世界をもたらすような “質的”な変化の予感だった。
子供の頃のように科学の進歩=美徳というシンプルな図式では捉えられないだけに、そこに求める形は変わらざるを得なかったけれど、それでもやっぱり諦めずにいたい理想はある。

有名な歌の一節が繰り返し浮かぶ。♪あのころの未来に…♪

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