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ロンドンから徒然に

BAFTA

2016-02-18 | 映画・演劇
日曜日の出来事の続き;
新春に沸く中華街を通り抜けた後、小雨まじりの寒さに震えながらCovent Gardenへ。ここも相変わらずの混雑ぶり。
ただ、その一角にあるRoyal Opera Houseの裏側の賑わいはちょっと種類が違っていて、黄色い歓声があちこちから。もっとも僕の歩いた通路側には高い壁があって、肝心の歓声を浴びている主の姿ははっきりとは見えないんだけれど。

実はこれBAFTA(英国アカデミー賞)の発表式。記憶にある限りではいつもこの日の天候は非常に悪く、タキシード姿の男性陣はともかく、肌も露わな大胆なドレスの女性陣には気の毒なことしきり(別に僕が心配することじゃないけれど)。

別の用事で前日ここを通りかかった時の入口設営中のスタッフが愛想よくて好印象。旅行客や近くのお店のスタッフとかも記念写真を撮っていた。



さて、最優秀映画賞にノミネートされたのが次の5本。映画館で観た順番に僕のごく個人的な短い感想を書いておこうかな。タイトルの後の( )には書きながら調べて、分かる範囲で邦題を。


Carol(キャロル)
好きなタイプの映画。50年代のNY というセッティング自体がもうたまらなく良い雰囲気で、さりげないながら衣装も凝っており、ひとつひとつのカットが絵のように綺麗。ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのヘアメイクはきっとそれぞれキャサリン・ヘプバーンとオードリー・ヘプバーンへのオマージュなんだろうな。ラストシーンのふたりの表情から「卒業」のラストシーンを思い出したのは僕だけかな?




Bridge of Spies(ブリッジ・オブ・スパイ)
一言でいうなら「職人芸」。スティーヴン・スピルバーグの監督、コーエン兄弟の脚本(共作)、トム・ハンクス主演、という隙の無い組合せで、予想通りのどっしりとした安定感。その分ハラハラ感に欠ける気もしたけれど、そこまで望むのは贅沢?「職人芸」という意味ではロシアのスパイを演じたマーク・ライランスの演技が絶妙で、なんと今回の助演男優賞に。




The Revenant(レヴェナント:蘇えりし者)
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウの初監督作品「アモーレス・ペロス」を観た時に打ちのめされて、それ以来彼の作品は全部観ているけれど、最近はあの頃の暴走感・疾走感に加えて、もの凄く計算され尽くした演出がなされているような気が。特に昨年アカデミー賞を取った「バードマン」の長回し(と思わせた構成)なんか凄い!これを支えた撮影のエマニュエル・ルベツキが今回も担当となると、その出来はもう保証されたようなもので、そこに持ってきてレオナルド・ディカプリオとトム・ハーディの熱演。勢いは今年も止まらなくて、ここでも映画賞、監督賞、撮影賞、主演男優賞…と軒並み取ってしまった。色んな意味で身体がこわばる映画(観ているだけで凍えてしまうし)。




Spotlight(スポットライト 世紀のスクープ)
これ、もの凄く良い映画!演出・脚本・演技という映画の骨格がどれも皆正攻法でぐいぐいと攻めてきて圧倒される。カトリック教会の一大スキャンダルを暴くボストン・グローブ紙の5人の記者の奮闘を描く(どの俳優も満点の演技)。真実を暴くことにより人を(自身や身近な人も含めて)傷付けることになる苦悩もきちんと丁寧に描いていて奥が深い。それにしても、つい十数年前の記者達って、文字通り足で取材して、タブーや権威に体当たりしていたんだなぁ。




The Big Short(マネー・ショート 華麗なる大逆転)
Spotlightがストレートを主体とした剛速球投手とすると、この映画はテクニック多彩な変化球投手の攻めかな。どちらも現実の事件を素材にして、複数の素晴らしい主演級俳優で固めながら、こちらの方は一癖も二癖もある演出と演技で、まだ記憶に新しいリーマン・ショックの背景とその破綻にいち早く気付いていた複数のトレイダー達の動きを描く。これもまた彼等の単なる痛快な行動だけではなく、その痛みとバンカー達への皮肉たっぷりの演出で厚みのある仕上がり。




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