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ロンドンから徒然に

(ミュージカルの)ロード・オブ・ザ・リング

2008-07-09 | 映画・演劇


 最近映画を観ると必ず予告編で“Mamma Mia!”をやっています。今週末から始まるメリル・ストリープ主演の映画ですが、ご存じのように1999年からずっと上演されているロンドン・ミュージカルがベースになっています。
 他にも『オペラ座の怪人』のように人気ミュージカルが映画化されたという例はたくさんありますが、逆に映画がミュージカル化された例ももちろんあります。その中でも特異なのが『ロード・オブ・ザ・リング』でしょう。CGや特撮を駆使した世界的な大ヒット映画をどう舞台化するのかが注目されて、一昨年からロンドンで上演されていました。
 映画は面白かったですが、特別なファンというわけでもなかったので、舞台でまで観たいとも思わずに放っていました。ところが、来週で閉幕になるという話です。そうなると話のネタにでも観ておこうと今晩半額チケットを買って出かけました。

 その前に余談ですが、“Mamma Mia!”は昔『ママ・ミア!』と表記されていましたが、今は『マンマ・ミーア!』に統一されたんですね。それから『ロード・オブ・ザ・リング』の原題は“THE LORD OF THE RINGS”で、前にTheが付き、Ringは複数形です。ちなみにロードをRoadだと思っている人も案外多いようですので、気を付けて下さい。と言っても、もうチケットを買う機会もなくなるから関係ないかな。

 

 さて、夜の7時半開演ですが、それより少し前に会場に入って下さい、とのアドバイスの意味は?
 実は開演の15分くらい前から小人のホビット族に扮した役者さんたちが、舞台や客席でホタル狩りに興じているのです。劇場全体をホビットの国に見立ててそこから雰囲気を作っていこうという、『キャッツ』と同じような仕掛けでした。

 舞台が始まって次々に現れるキャラクターを見ていると、殆どが映画のイメージをそのまま受け継いでいます。昔、制作前に聞いた話では、映画にこだわらず原作に忠実にやるとのことでしたが、やはり大ヒット映画におもねた感が強いです。結論から言うと、このことがもう象徴的なのです。
 ワンシーン終わる度に拍手喝采とはなりますが、殆どがその見慣れたキャラクターの活躍と30億円もかけたと言われる大仕掛けな装置への拍手です。つまりは映画を観た人が、舞台ではどうなっているんだろうという好奇心の確認と感動なのです。

 多分ミュージカル・ファンは納得しない出来でしょう。第一印象的な歌が全然ありません。大抵ミュージカルを観た帰り道なんて、使われた曲が頭の中をぐるぐると何回も回るものなのに、どの曲も印象に残っていません
 これならむしろ“ミュージカル”なんてことに拘らずに、商業演劇として立派なものを作ったら良かったのにと思います。何だか無理やり歌をくっつけたような感じで、必然性を感じないのです。必然性と言えば、その大がかりなセットもやたらと使われて意味がないように思えました。
 こんなところが、ずっとロングランを続けて、事実何回観ても飽きの来ない『オペラ座の怪人』なんかとの差なんでしょうね。

 一旦その世界にのめり込めたら、単なる熱の入ったファンでいられるのですが、ちょっと粗が見えてくると、つい制作側の立場にたってものを考えるようになって、どこか頭が醒めてしまいます。あぁ、我ながら嫌な観客かも。

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