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ロンドンから徒然に

安全なNYの地下鉄

2009-01-30 | 旅・イベント
 最初にNYを訪れたのが80年代の初めでした。地下鉄に乗ろうとすると駅の壁は落書きだらけ。止まった車両の外側にも落書きがびっしり。中に入るとこれまた落書きで目が痛くなるほど。
 それだけなら我慢できるのですが、同じ車両にいるのが僕の他には2人だけ。図体の大きな若い黒人男性と、ぼろぼろの服を身にまとっている中年の白人男性です。窓が少し開けられていたこともあって、車両の轟音が車内に満ちてきます。これじゃピストルで撃たれても外に聞こえないな、なんて本気で考えてしまいました。

 そのうち白人男性の方がこちらを向いてにやにやしていたかと思うと、突然服を脱ぎ始めたのです。よく見ると目付きもおかしく、どうやらアルコールかドラッグかをやっているのは間違いないようです。さすがに我慢できなくなって、目的地まであといくつか残しながら一旦外に出ました。

 これが僕のNYの地下鉄初体験でした。実際その頃は地下鉄での犯罪発生件数が多く、利用者数は過去最低にまで落ち込んでいたようです。今考えると無事で何よりでした。
 それに比べて現在の地下鉄の安全なこと。朝昼はもちろんのこと、以前は避けていた夜の乗車にも危険な雰囲気はありません。子供連れも平気で乗ってきます。



 1984年、今では有名な“割れ窓理論”に基づいて、まず地下鉄の落書きを消すということに重点を置いた政策が、当時の交通局長デビッド・ガン氏によって取られました。すると増える一方だった凶悪犯罪が本当に減少したのです。
 そこで第2弾として、今度は軽犯罪の取り締まり。落書きはもちろん、無賃乗車や車内での喫煙までもを厳しく取り締まりました。
 この方法をNY市警察に応用したのが、1994年から8年間、市長の座に着いたルドルフ・ジュリアーニ氏。今のNYの治安の良さはこの時代に築かれたと言ってもいいでしょう。

 2~3年前のニュースを見ると、大抵の予測が次のアメリカ大統領はヒラリーかジュリアーニかと騒いでいました。同時多発テロ事件後の対応でも人気を得たジュリアーニ氏が共和党候補の本命と見られていたのに、本人の健康問題もあって、あれよあれよと言う間に選挙の表舞台から消えてしまいました。
 そしてその頃はまだ一般人に知られてはいなかったであろうオバマ氏が大統領に。まったくアメリカはスピードが速い。

 もっともスピードという意味では、日本は政治の首長の替わる速さにおいて、どこの国にも負けていませんが、これはあまり自慢にはなりませんよね(笑)