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ロンドンから徒然に

『朗読者』の映画化

2009-01-03 | 映画・演劇
 イギリスにはかつてthe Polytechnicと呼ばれる大学レベルの統合制高等教育機関がありましたが、1992年には大学に再編成されました。これらのpolytechnicをuniversityよりは一段低く見る人も多かったようです。
 ところが、論文などをもとに大学の格付けをするRAE(the Research Assessment Exercise)のランキングで、かつてのpolytechnicだった大学がオックスフォードやケンブリッジなどの名門大学を脅かすような位置を占めていることが分かりました。
 これらの大学の中にはユニークな研究をしているところも多く、文学が映画化される時にその文体がどう変わるかなんて研究もありました。

 このところの映画は、人気の本や漫画やミュージカルを元に脚本が書かれることが多く、その意味ではオリジナリティに欠けてつまらなくなってしまっていますね。ただ、個人的にこの本の映画化には興味を持っていました。世界的なベストセラーになった『朗読者』です。しかも監督が『リトル・ダンサー』や『めぐりあう時間たち』のスティーヴン・ダルドリーなのです。
 “The Reader”というタイトルで映画が今日封切られました。



 映画の予告編が語りすぎてしまって、本編がつまらなくなることがあるように、どんな本でも映画でも、こんなブログで下手な紹介はしない方がいいと思うのですが、特にこの本に関しては注意が必要です。
 というのも、物語のテーマは非常に重く、何度読んでも得られるものが大きいと思うのですが、主人公の“朗読”の相手となる彼女の隠しているある事実が、この話をある種のミステリーとしても読み進む面白さを与えてくれるからなのです。その楽しみのためにはむしろ予備知識なしに読むか観るかした方が間違いなく面白みは増すと思います。
 
 ということで内容のことは詳しくは語りませんが、この映画は公開日を巡るトラブルだとか色んな興味深いエピソードがあります。そのうちのひとつを。
 最初ケイト・ウィンスレットにオファーがあった時は他の映画のスケジュールの関係で彼女は断って、代わりにニコール・キッドマンで撮影が進んでいました。ところが今度はニコールの妊娠が発覚して降板、その頃にはスケジュールが空いたケイトが戻ってきたということなのです。
 しかし、この映画を観終わった後では彼女以外の女優は考えられないくらいぴったり役柄にはまった素晴らしい演技でした。

 もう原作を読んだのは何年も前なので細部までは覚えていません。英語でもいいからもう一度読もうかと思わせてくれた映画化でした。