植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

知らないことを恥じる

2022年04月13日 | 書道
書道の基本は臨書(摸書)、篆刻の練習も摸刻にあります。数千年前から先人たちが作り上げてきた書の文化は、名筆・書聖などの模倣とそれからの発展によって今があります。楷書、行草書、篆書、隷書それぞれの書体の習得にふさわしい法帖や書典を選んで臨書するのです。

 ところが、書道団体というものや流派があって、その学ぶ対象になる教材(古典)がだいぶ違っていることがわかってきました。例えば、ワタシが書道教室に通い出した時、師匠から渡された法書は「九成宮禮泉銘」という歐陽詢が書いた楷書の最高傑作でした。ワタシはてっきりこれが習字のA、誰もが楷書をこれで習得するものと信じていたのです。

 実際は、楷書の教典としてはこれ以外に「雁塔聖教序」「 孔子廟堂碑 」が有名です。ワタシもいくらか書道が分かるようになって、追加でその臨書をいたしました。

 そこで最近知ったのが「造像記」であります。北魏時代 の楷書で彫られた石刻書法の原典で、仏教関連の記録を石に刻んだものなのです。不特定多数の人たちとチャットする オープンチャットで書道をテーマにしたチャットに参加しているのですが、さかんにこの造像記の書法・摸書が取り上げられてきました。聞いたこともない、書いたこともないものでしたが、どうやら中高生あたりから楷書の教材に用いられ、また書道団体でもこれをメインに学ばせているところがあるらしいのです。

 楷書は九成宮しかない、と思っていたワタシは不明を恥じるのみであります。技量はともかく研究心旺盛を自負するワタシはこのまま見過ごせず、造像記臨書用に中古の本を取り寄せました。
このところ篆刻に傾注し書道をおろそかにしておりましたので、書の基本、楷書を「造像記」臨書によってブラシュアップいたそうと思います。

 もう一つ、ごく最近の発見が「サンドペーパー」の用法であります。使用済み印材を平らに潰したり、印面をより滑らかにして傷を無くすためにサンドペーパーを使います。#120位の粗いものから#1000以上(極細目)まで5段階くらいのペーパーを順に使うのです。ワタシは以前から丈夫で長持ち、表面の研磨成分が剥落しにくい耐水ペーパーを使っています。しかし、粗削りはともかく、いくら丁寧に細目のペーパーで磨いても「すり傷」が取れず、「鏡面」のような真っ平で磨いたような面が出来ないことに悩んでいたのです。

 ところが最近、篆刻の古い雑誌をぼんやり眺めていたら、女性が濡らしたサンドペーパーを使って印材を磨いているという写真に出くわしたのです。こういうのを「目からうろこ」と言いますな。なんで耐水なのか、そこに考えが行かなかったのです。ちょっと調べると「水研ぎ 」という言葉が出てきました。サンドペーパーに水を落として、磨いてみたらこれが素晴らしい。細かい硬い粒子が水によって緩和され、印面に新たに傷が入らない、水を得た表面はなめらかに石を研いでくれたのです。

 印面が歪の無い平面で、かつ細かなすり傷やざらつきがないものなら、印刀の線が美しく出るし、印泥の「のり」が良くなって鮮やかでムラの無い印が捺せるのです。それからというもの、篆刻する石を選んだら、台所に行って、平らな人工大理石の上に置いたサンドペーパーで水研ぎするのが習慣となり、篆刻をさらに楽しく、そしてワンランク上の出来上がりにさせてくれました。

 知らないことは恐ろしいものです。この世で知らないことは限りなくあり、それ自体を恥じることは無いのです。大事なのは、知らないままで終わらせない、知ることを止めないことだろうと思います。何歳になっても勉強し、常に自問自答しながらよりよい結果を求め模索する、これが正しい高齢者の一つの理想であります。

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