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原題のThe sessions は「研修」でしょうか。
ポリオを患ったマイクは、首から下は麻痺して動かすことが出来ず、また自力呼吸も長時間は出来ないので、
一日の多くは「鉄の肺」と言われる人工呼吸器で生活しています。
詩人でジャーナリストの彼は、障害者の性について記事を書くことになります。
彼のペニスは勃起し射精するのですが、手足が麻痺しているのでオナニーしたことも女性との性体験も全くありません。
彼はセックス・サロゲートを雇い、彼女からセックスの手ほどきを受けます。
セックス・サロゲートの適当な日本語訳がありませんが、6回のセックス・セッション(研修)で、
「愛撫・挿入・射精・オーガニズム」が出来るような訓練を受けることのようです。
セラピスト、シュリルを演じるのは、大女優、ヘレン・ハントです。
深刻になりがちな問題をとてもさりげなく表現するのがとても良いのです。
出演を決意し、役作りに苦労したと思いますが、本当に自然な感じです。
ハントの脱ぎっぷりは大胆と言うより自然です。彼女のヘアーは何度も写ります。
この映画で彼女はアカデミーの助演女優賞を受賞したそうですが、納得です。
彼の筋肉は麻痺して動きませんが、感覚はあり、触られたり愛撫されれば気持ちいいのです。
第一回のセッションでは、彼はシュリルに触られただけで射精してしまいます。
挿入のセッションでは、5秒間でした。笑い声が起きても良いのですが映画館はシーンとしていました。
セッションは6回まで出来るのですが、4回で終わることを選びます。
このセッションで、二人はオーガニズムを体験し、恋愛感情が抜き差しならぬほど大きくなって来てしまったからです。
最後のセッションの報酬をシュリルが部屋の中に忘れるシーンは印象的でした。
映画に登場する、四人の女性と四人の男性は皆魅力的でした。
四人の女性とは、マイクが初めて好きだと告白した看護人の女性、次の看護人で中国系の女性、シュリル、
そしてその後マイクと生活を共にするスーザン、
男性は、マイク、マイクが懺悔する教会の牧師、シュリルの夫、モーテルのスタッフの中国系男性。
つまり、登場人物は"良い人"ばかりです。世間ではそんなことは決してあり得ないことですが、これが良かったです。
障害者差別者が登場すると、テーマが"障害者問題"になってしまいます。
映画は、障害者と性が話題ですが、それは決してテーマではありません。
そうなると、"障害者差別は良くない"とか、「お説教」になってしまいます。
あくまで喜劇チックなエンターテイメントであって、決してシリアスな啓蒙番組では無いのです
笑える場面の連続なのですが、観客からはほとんど笑い声は上がらないのが不思議でした。
この種の映画は、シリアスにしないで、喜劇チックにするのが良いと僕は思います。
多くの人にとって、性は興味深い刺激的なことで、そうであるから深刻にもなりかねないのですけど……。
停電でマイクの鉄の肺が動かなくり、彼は生死を彷徨いますが、患者を励ますボランティアのスーザンに彼は言います。
「僕は、童貞じゃ無いんだ。」
彼の、自信にあふれた表情は素敵でした。
蛇足ですが、シュリルはユダヤ教に改宗しますが、その儀式のほんの一部が描かれました。
キリスト教牧師も、ちょい悪風の長髪で、ビールを飲んだりタバコを吸ったり、良い味でした。
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素敵なイタリア映画に、「人生、ここにあり」があります。
イタリアは、1978年、世界初の精神科病院廃絶法(バザーリア法)で、精神病院を画期的に廃絶しました。
それで問題が解決した訳では決してありませんし、私はそれらの事情をほとんど知ってはいないのですが、
イタリアのこの試みは実に多くの示唆を与えていることは間違いないと思います。
この映画は、バザーリア法にまつわるエピソードを描いた映画(喜劇)で、明るく彼らの性を取り上げています。
私のブログは、「人生、ここにあり」 です。
また、メル・ギブソンが鬱を演じた映画、「それでも、愛してる」も、同じように喜劇でした。
私のブログは、「それでも、愛してる」 です。
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【3月17日鑑賞】