まさおっちの眼

生きている「今」をどう見るか。まさおっちの発言集です。

人生の失敗は外にあるのではなく、その人の性格にある(2)

2008-08-20 | 随筆
もうひとりはオカドさんだ。相模原でトラック100台を持ち引越しを手がける運送会社の社長だった。丁度ぼくが前の出版社を辞めて、家にいた時、広告代理店の知人から「広告を手がけている得意先のオカドという会社が傾きかけている。お前の力ならできる。立て直してくれ」という依頼があった。ぼくも子供二人を抱え、失業中だったので、オカド社長に会い、企画室長という肩書きで、仕事をするようになった。最もぼくは雑誌生活が長くサラリーマン気質ではないので、勤めるというのではなく経営コンサルタントとして週5日常勤の請負仕事という形をとってもらった。中に入って調べてみると、まず、常用といわれる物流の仕事より、引越しのほうが5倍も粗利が出ることがわかった。まず、方針としては引越し部門を伸ばし、収益を上げること。次に現状の引越し受注を見ると、チラシ配布、電話帳広告が主軸だった。受付でお客のアンケートを実施させ調べた結果、引越しの売り上げに占める広告料はそのどちらも25%を占めていた。広告料を減らして、売り上げを上げる方法はないか。今でこそスーパー、コンビニのサービスカウンターは多サービスを取り上げているが、今から25年前は、ほとんどサービスカウンターを設置しただけで、各流通業も模索状態だった。一方引越し顧客を調査すると、市から同じ市に引っ越すのが3割、隣の県なり市に引っ越すのが3割、他県に引っ越すのが3割という状況だった。そうするとほぼ6割は地域密着の流通業とサービスとして提携できる素地があった。ぼくは、プレゼンテーションの資料を作り、スーパー、コンビニ、ホームセンターなどを回り、どんどん提携を進めていった。パンフレットを店に置かしてもらい、各流通業の店のチラシにも「引越し承ります」と広告を入れてもらい、受ける電話はオカドに置いて、成約できれば10%の手数料を支払うというシステムだ。
オカドの売り上げは瞬く間に伸びた。次に考えたのは新聞の勧誘である。大手新聞社は新規購読者獲得にしのぎを削っていた。特に引越しで購読が切れるので、ぼくはそこに目をつけて、またプレゼンを作り、読売、朝日など回った。乗ってきたのが読売である。東京本社の読売新聞は広域だったので、ぼくの構想は神奈川を中心としたオカド一社ではムリなので、関東全域に読売の引越しを扱う運送会社を募り、読売には引越しの広告を出してもらう。そして受注した引越しの顧客には、引越し翌日から読売新聞が読めますよと各運送会社に勧誘をしてもらう、大まかに言えばこういうシステムだった。読売からGOのサインが出て、このシステムを完成させたら、なんと読売新聞の新規購読が年間1万件も取れた。さらに読売ルートで引越し受注が大幅に増えたことはいうまでもない。しかしその間、オカドさんは、浮気をしたり、当時不要と思われたコンピュータを一千万円も掛けて導入したり、地獄の特訓という社員研修に膨大な金を掛けて社員全員を行かせたりしていた。ぼくは、儲かった金で財務体質を強化すればいいのにと思っていたが、人から薦められると何でもOKを出す人のよさが、脇の甘さとなっていた。ぼくは四年弱やって、また雑誌社に戻っていった。
その後、時々オカドさんとは付き合っていたが、ぼくが開発した顧客ルートは、ひとつもホローせず、他社に取られたり、消滅したりしていた。「谷さん、もうだめだよー」。それから20年も経った去年、オカドさんから電話がきた。
国税庁が入って、消費税等累積の未納の税金を全部払えということだった。どうも市役所にも社員の厚生年金を納めていなかったが、こちらはなんとか分割で話がついたが、国税は潰しにかかっているという。税金を納めるなど基本なのに、オカドさんは甘く見ていたようだ。数ヵ月後、年商25億円もあったオカドさんの会社はあっけなく倒産した。家も全部担保にとられたに違いない。携帯も通じなくなり、オカドさんは行方不明になった。


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