まさおっちの眼

生きている「今」をどう見るか。まさおっちの発言集です。

高校時代に唯一覚えたのが「千曲川旅情の歌」。

2017-09-27 | 随筆
千曲川旅情の歌      島 崎 藤 村


   一
小諸なる古城のほとり 
雲白く遊子(いうし)悲しむ
緑なす繁蔞(はこべ)は萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡邊
日に溶けて淡雪流る

あたゝかき光はあれど
野に滿つる香(かをり)も知らず
淺くのみ春は霞みて
麥の色わづかに靑し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ

暮れ行けば淺間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む

   二
昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわづらふ

いくたびか榮枯の夢の
消え殘る谷に下りて
河波のいざよふ見れば
砂まじり水巻き歸る

嗚呼古城なにをか語り
岸の波なにをか答ふ
過(いに)し世を靜かに思へ
百年(もゝとせ)もきのふのごとし

千曲川柳霞みて
春淺く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて
この岸に愁(うれひ)を繋(つな)ぐ



一番多感な高校時代に、ふっと、この歌がココロに入り込んだ。
古希になった未だ、一字違えず、そらんじることができる。
人生の悲哀がよく出た歌だ。
元気な時も、不元気な時も、俺のココロの根底には、いつもこの歌のような悲哀があった。

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