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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

サルバドール・ダリに告ぐ#7・・・ミレー《晩鐘》の悲劇的神話/ダリ

2006-12-27 | サルバドール・ダリ
~ダリ展を観た。そしてダリを感じダリを知るために~

昨日触れたミレーの《晩鐘》に偏執狂的批判的アプローチを明らかにしたダリの著作「ミレー《晩鐘》の悲劇的神話」。その抜粋。


⇒1932年6月、近い過去のいかなる記憶とも無関係に、また直接に説明を与えうるいかなる意識的な連想も伴わずに、ミレーの《晩鐘》イメージが突然に私の精神のなかに立ち現れた。このイメージには色がついており、きわめて明確な視覚表象を構成していた。それはほとんど瞬時のことで、他のイメージがあとに続いてきたわけでもはない。私はひじょうに大きな印象を受け、またひじょうに当惑した。なぜならヴィジョンに現れたイメージは、私の知っているこの絵の複製にすべてにおいて正確に「対応」していたのだが、にもかかわらず完全に作り直され、何か潜在的な志向性を担わされているように「私には思われた」のである。その志向性の強さは、ミレーの《晩鐘》が「突然」私にとって、かつて存在したもっとも惑乱的な、もっとも謎めいた、もっとも濃密な、もっとも豊かに無意識の思考を含んだ絵画作品になってしまうほどのものだった。

⇒絵画の中で、夕暮どきの砂漠のような空間に、「立ったまま」で「動かない」「垂直」な姿勢のまま向かい合った男女が配置されるなどということは(いかなる口実のもとであれ)ありえなかった。男女は語り合っているのではなく、何らかの仕種によって意味のあるコミュニケーションを取っているのでもなく、また片方が他方を迎えに行こうとしているのでもない。

⇒客観的世界における一定数の状況や偶然の一致、オブジェが「重なり合い」衝突するようなある種の状態は、各個人にそれと「類推関係にある」表象の重なり合いをもたらす要因となりうる。そしてこのとき、ほんの一瞬ではあれ、現実的なものと想像的なものの混同が引き起こされるが、その混同は解釈しようとする洞察力を伴っているので、このことが「既知なるもの」幻想を導き出す

⇒客観的世界の本質的変化であった。この変化は突如として現れ、瞬時の連想作用によって私たちのあらゆる注意と情動を呑み込んでしまう。私たちの注意と情動は、他のすべてを犠牲にする形で、「ある一定数の」事実と対象の上に否応なく固定化されるのであった。

⇒パラノイア現象とは、あらゆる「体系的連想」の要因がすぐれて要約されている現象というだけでなく、より多くの「同一性」を与えるような、「心的=解釈的」な例証をも体現している。

⇒広く知られた、あの崇高なる「解剖台の上におけるミシンと蝙蝠傘の偶然の出会い」と肩を並べられる絵画と言えば、それはまさしく誰もが知る《晩鐘》だと私は思う。

※「ミレー《晩鐘》の悲劇的神話/サルバドール・ダリ」鈴木雅雄・訳/人文書院より抜粋


■■たそがれ時の隔世遺伝(1933-34年)■■■■■■■■■■■■■■■■■■


本の表紙にもなっているダリ版《晩鐘》は、男が骸骨となっていて黄昏時の陽射しもミレーの絵とは逆になっている。そして舞台は田園ではなく荒涼とした岩山の広場。骸骨の頭から出ているのは手押し車(性的な舞台となる)、女から伸びている1本の竿のようなものは何だろうか。ダりによるとミレーの《晩鐘》の男の帽子の下には性的に興奮している性器がかくされているという。であれば骸骨から出ている手押し車は、男の無意識な性的な欲望と妄想の世界を象徴しているとも見れる。しかし、一方で女は雄を交尾の後に食べてしまうカマキリであるともダリは述べており、男=骸骨は彼の未来を予感しているのかな?



(ダリ「ミレーの頌歌」/手押し車で後背位で交わっている。「たそがれ時の隔世遺伝」の手押し車にも二つのズタ袋がある。)

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1 コメント

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Unknown (ダリ)
2010-01-23 10:30:21
いつも楽しみにしています。元気をありがとう!
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