「からゆきさん」(1973年)
成人前10代そこそこの女性が、うまい話に乗せられて船底に押し込められ異国の地へと運ばれてしまい、そこで売春を強要される人生とは?
本日も引き続き、5月に東京国立フィルムセンターで観た今村昌平のテレビ用ドキュメンタリー、棄民シリーズの「からゆきさん」の感想を書いていこうと思う。
当時といっても、ほんのつい最近なのだが、先のような人買いが行われていたことにはびっくりさせられる。それは江戸時代とかの話ではなく近代化された日本の話なのである。女性の人権問題を考えると、今でこそ携帯電話片手に電車の中で化粧や飲食とこちらが赤面してしまうほど、わがもの顔でいる現代女性ではあるが、その人権が問題視され回復していったのはごく最近のことであったとこのドキュメンタリーを観ていると認識されうるのである。
さてこのドキュメント作品のメインとしてスポットがあてられた善道菊代さんの話を聞いていると、まずはその力強さに感心させられる。人間はどんな環境下に置かれても生きていかねばならない、いつしか異国地でしっかりと根をのばしていくのだ。
しかし、この作品がさらに深みを増してくるのが、今村昌平が取材を終えて帰国し、彼女の故郷をたずね幼馴染に会いに行くシーンだ。菊代さんは被差別の出身であることがわかってくる。不自由辛い異国の地で生活しながら、彼女が特に帰国を熱望しない理由もそこから見えてくる、そんな展開があった。そういえば別の今村監督のドキュメンタリー作品「にっぽん戦後史」に登場するマダムも被差別の問題を匂わせていた。マダムは日本を捨てアメリカに旅立つラストの展開であった。
今村監督がつけた棄民シリーズ、見棄てられたのか見棄てたのか、これまで観てきた3つのドキュメンタリー作品は少なくとも自力の及ばぬ国家と時代に巻き込まれ、犠牲になっていった人間らの物語であることは間違いない。
そして今村監督にとって、このからゆきさんの問題はのちに女性を売り買いした商売人を描いた「女衒」へと昇華されてゆくのだろうか・・・。
とにかく、けして蓋をすることなく人間を真摯に真正面から見つめてきた今村昌平の仕事には深い感銘を憶えるし、その徹底振りは誰も真似が出来ないほどの凄みをもっているのでる。
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当時といっても、ほんのつい最近なのだが、先のような人買いが行われていたことにはびっくりさせられる。それは江戸時代とかの話ではなく近代化された日本の話なのである。女性の人権問題を考えると、今でこそ携帯電話片手に電車の中で化粧や飲食とこちらが赤面してしまうほど、わがもの顔でいる現代女性ではあるが、その人権が問題視され回復していったのはごく最近のことであったとこのドキュメンタリーを観ていると認識されうるのである。
さてこのドキュメント作品のメインとしてスポットがあてられた善道菊代さんの話を聞いていると、まずはその力強さに感心させられる。人間はどんな環境下に置かれても生きていかねばならない、いつしか異国地でしっかりと根をのばしていくのだ。
しかし、この作品がさらに深みを増してくるのが、今村昌平が取材を終えて帰国し、彼女の故郷をたずね幼馴染に会いに行くシーンだ。菊代さんは被差別の出身であることがわかってくる。不自由辛い異国の地で生活しながら、彼女が特に帰国を熱望しない理由もそこから見えてくる、そんな展開があった。そういえば別の今村監督のドキュメンタリー作品「にっぽん戦後史」に登場するマダムも被差別の問題を匂わせていた。マダムは日本を捨てアメリカに旅立つラストの展開であった。
今村監督がつけた棄民シリーズ、見棄てられたのか見棄てたのか、これまで観てきた3つのドキュメンタリー作品は少なくとも自力の及ばぬ国家と時代に巻き込まれ、犠牲になっていった人間らの物語であることは間違いない。
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私も今度フィルムセンターに行ってみます
ノラさんの方も精力的に宝塚歌劇を観ておられますね。