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乱歩を巡る言葉15・・・広告・ゴシップの乱歩像―怪奇・猟奇・エログロの時代/築山尚美

2006-07-26 | 江戸川乱歩



広告・ゴシップの乱歩像―怪奇・猟奇・エログロの時代/築山尚美
「江戸川乱歩と大衆の二十世紀」(国文学解釈と鑑賞)至文社刊

築山尚美という方が江戸川乱歩の広告から見たイメージ像を分析されています。それをまとめました。


●広告、あるいはそれに類したものから見た乱歩像として3つに分類
①国産探偵小説家の乱歩
②エログロ猟奇の変態性作家乱歩
③少年探偵団の乱歩おじさん

●国産探偵小説家の乱歩としてスタート
雑誌『新青年』編集長・森下雨村による広告
「二銭銅貨」⇒「創作探偵小説」
「心理試験」⇒「日本に唯一の探偵小説家」
これによって“日本で最初に探偵小説を書いたのは乱歩”という概念の形成がなされる(決して日本初の探偵小説ではなかった”が)

●国産探偵小説家の乱歩のコピー
「一寸法師」⇒「新しい探偵小説」(朝日)
「孤島の鬼」⇒「怪奇探偵長編」(朝日)
「蜘蛛男」⇒「奇々怪々!素敵に面白い大探偵小説」(講談倶楽部)
「魔術師」⇒「日本空前の大探偵小説」(講談倶楽部)

●エログロ猟奇の変態性作家乱歩へのイメージの転換
「死に絵と『死の島』怪奇な装飾品に囲まれて」1930年11月26日報知新聞
報知新聞の広告記事は“潜在的に存在した乱歩”を“蝋燭の光で執筆するという”内容に仕上げ読者の乱歩イメージへの“期待を、見事に結晶させた”



●エログロの乱歩イメージの氾濫へ
「猟奇の果」⇒「猟奇耽美文学と探偵小説の一大錯綜篇/日本探偵小説界の王者/日本一の変態性作家/江戸川乱歩が/驚嘆すべき鬼才振りを発揮せる名品!」(単行本広告)
「陰獣」⇒「犯罪を猟る空想的犯罪生活者、情痴に耽る残虐性変態性欲者、戦慄と情痴との交錯せる陰惨甘美なる物語」(17版広告)

●横溝正史の平凡社江戸川乱歩全集の内容見本(1931年)
“江戸川乱歩氏の探偵小説は血と泥で塗りつぶされた地獄絵巻だ。其処に盛られた奇怪なる犯罪と、異常なる変態的性欲は、読者を夢幻の境に誘ひ込まずには措かない”

●ところで乱歩自身は
報知新聞の広告記事“への反応から見ると嫌がっているようだが、行動から見るとそうでもなさそうだ”と分析し“全集作りでは、本の装丁、編集から宣伝法にいたるまで、様々なアイデアを出している。”つまり、“商売人乱歩の関心はものを作って売ることではなく、広告をして売ることにあったようだ”としている。

●エログロへのイメージの転換はなぜ起こったか
“1930年は、前年ウォール街に始まった世界恐慌が日本に上陸した年”で“30年代エログロ文化が、不況による閉塞感を背景にしたもの”であることとしながらも、乱歩作品の質を問題にすべきとし、“徴兵検査を通じた身体の規格化と、性の均質化”および乱歩が自然主義文学に対して“ひどく性的な小説という印象”を持っていること、つまり“身体や性の近代化に対する抵抗というのは本質的なテーマだろうが、そのテーマが市場に共有されるのに1930年代をまたねばならなかった”と結論づけている。


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