
■製作年:1973年
■監督: シドニー・ポラック
■出演:ロバート・レッドフォード、バーブラ・ストライサンド、他
この映画で覚えているところは、確かラストシーンだったと思うけどヒロインのバーブラ・ストライサンドが街頭でビラを配布しているところ、そこで流れる有名な主題歌くらいしかなく、印象としては音楽からの影響があるのかもしれませんが、切ない恋愛映画だったということが強いです。いい映画だったなあという印象は残っていても細部はすっかり忘れてしまっています。今回、ホントに久しぶりに「追憶」を見ることにしましたが、その感想たるやどうなんだろうと。
見終えて思うことはこの映画はまずヒロインのバーブラ・ストライサンドの魅力に尽きるということです。ロバート・レッドフォードはいい男なんだけどちょっと影が薄い。というか自身の主義を変えないで理想に生きようとするバーブラ・ストライサンド演じるケイティという女性の個性や気性が際立ち激しすぎるため、レッドフォードが演じるハベルがあまりにノンポリというか、ことなかれ主義に見えてしまいどうもバランスが悪い。ハベルは政治よりも人間が大切なんだと主張するのですが、そこには豪奢な生活を楽しむというスタイルが根底にあり、マルクス主義に傾倒しているケイティを説得させるのには弱すぎます。そもそも住む世界が違いすぎる二人が愛し合うという点において無理があるんじゃないか?と言いたくなる部分があるのですが、そこが逆にこの物語においてドラマチックになり感情を移入させやすくしている要素なのかもしれません。つまり、相容れない二人が愛し合う、どうなの?と言いたくなるぶん、別れと再会の場面では見る側の心を揺り動かす振幅度が高くなるということだからです。
この物語はスペイン内戦、第二次世界大戦、ハリウッド赤狩り、原爆実験など政治に翻弄される社会的事件を背景に、一組の男女を通して描いた世相史のような側面も感じられ、監督のシドニー・ポラックはさりげなくケイティの発言を通して政治批判を試みているように思います。確かに、ケイティの過激な姿勢ばかりでは、生活という点からすれば疲れてしまうし、彼女の行動がベストとは言えない部分はあるのですが、だからといって無関心では何も変化は起こりません。何事も行動なくして変化は起こらないのですから。私が、昔、この映画を見て記憶に残っている部分、ラストのビラをまいてあの有名な音楽が流れるシーン、そこの記憶しかなかったのですが、その前には離婚を後、街角で偶然二人が再会する場面がありました。
ケイティはアイロンで引き延ばしたセレブ系ではない自然な学生時代の髪型に戻り、ハベルは学生時代の彼女と再婚していました。二人は懐かしさから抱擁し、二人の間に生まれた子供のことを話します。そして、お互いの幸福を祈り、別れる二人。ケイティは毅然として直ぐに原爆実験反対のビラを配りはじめます。そこにあの音楽(♪メーモリー…♪)が流れます。音楽の効果によって青春の美しい思い出というのが強調されますが、私はすっかり忘れていたのですが、その前の展開があったのでした(私はハベルが遠目で彼女がビラを配る姿を発見するという風に勝手に思い込んでいました)。過去は過去として自分の信念を貫いて今を生きようとするケイティの毅然とした姿勢に感動しました。そして同時に、彼女の姿に託された監督の批判精神も強く見てとることができるのでした。
意志の強い女性といいながらも、恋する男を見つめるバーブラ・ストライサンドの瞳がなんとも言えず憂いを含んでおり、吸い込まれていくような感じになり、いいのでした。それだけでファンになりました。
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