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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「グラン・トリノ」(監督:クリント・イーストウッド/2008年)

2014-10-22 | Weblog

■製作年:2008年
■監督:クリント・イーストウッド
■出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、他

これまで何故かほとんど見ることがなかったクリント・イーストウッド監督の映画、実際見てみるとどれも秀作ばかりで、心に響く素晴らしい作品が多いことに気がつきました。現代の映画作家と呼ばれる人物の中でクリント・イーストウッドは間違いなくトップに位置する大監督なのでした。ということでまたまた彼の作品を見ることにしました。作品名は「グラントリノ」です。この映画は老齢のクリント・イーストウッドが自らも出演し、超いぶし銀の演技を見せてくれます。

クリント・イーストウッドの役どころは、朝鮮戦争経験者で戦場で人を殺したことがある男。フォードで働き今は現役引退の身で、最近の日本車の台頭を苦々しく思っている。妻を亡くした独り身で、口は悪く偏見の塊で、差別主義者であり、息子からもその頑固さに嫌われている。ただ一本筋が通っており、姿勢もそれを象徴するかのようにシャキとしている。声はしゃがれてそれが雰囲気があり、まさに時代遅れのいぶし銀の男というイメージなのである。その男はまた、朝鮮戦争で仕方がないと思っていても人を殺した過去に苦しんでいる。家の隣は、その朝鮮戦争から逃れてきたラオスのモン族が住んでおり、偏見に満ちた男はイエローと侮蔑的な言葉を浴びせたりする。そのモン族の家族には引きこもった青年がいて、彼が同じ民族の不良たちに絡まれていたのを見てられないと助けたことから、男は徐々に彼らと交流するようになる。相変わらずイエロー呼ばわりしているものの、彼らのヒューマンな関係により、彼の偏見の心は少しづつほぐれていくようになっていく。そして、モン族の家族の願いにより、男は引きこもった青年に家の雑務の仕事をさせることになるのですが、そのことにより青年と不器用ながらも意志の疏通が始まり、はっきり描いていないものの、男故に分かる年齢差を越えた男の友情のようなものが生まれてきます。男のぶっきらぼうな指導?はこの引きこもりの若い青年にとっては大人への通過儀礼 ( イニシエーション ) なのでありました。

しかし、こうしたことを快く思っていない同じモン族の不良は、青年の口うるさい姉をレイプしてしまいます。この姉の言っていることは、まともなことをはっきりと発言しているだけでおかしなことを言ってません。この理不尽で非道な仕打ちに怒りがこみ上げてくる男は、単身丸腰で、モン族の不良たちの元へ乗り込んで行きます。そして銃撃を浴びて死んでしまうのでした。これまで不死身の男を演じてきたクリント・イーストウッドのこの展開にはビックリしました。あまりにもあっさりと大地に横たわってしまったからです。暴力の映画で名を成したクリント・イーストウッドによる非暴力のスタイル。過去に朝鮮戦争で人を殺した経験を持つ男が、丸腰で臨んだのはそれなりの意味を伝えたかったに違いありません。モン族の不良たちは逮捕されてしまいます。死んだ男の遺書には彼のオールドなスタイルのシンボル的な存在であったグラン・トリノ ( アメ車 ) を、イエローと下げずみながらも最後は心を通わせたモン族の青年にその車をプレゼントしたのでした。

ほとんど粗筋のようになってしまいましたが、とても心に響きグッとくる映画でした。意外性もありメッセージ色も強いこの映画ですが、クリント・イーストウッドが演じた男の良くも悪くもそのキャラクターがとにかく魅力的で、その静かな変化に泣けてしまいました ( ちなみにクリント・イーストウッド自身も朝鮮戦争に参加していることも書いておかねばならないでしょう )。いい映画を見たという満足感が残る作品でした。
 

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