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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「チェンジリング」(監督:クリント・イーストウッド/2008年)

2014-10-26 | Weblog

■製作年:2008年

■監督:クリント・イーストウッド

■出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、コルム・フィオール、他

実話を元にしたという映画「チェンジリング」は、子供が失踪した1人の女性を通して腐敗したロサンゼルス市警のずさんさを描いています。監督はクリント・イーストウッド、正義をテーマにしつつもこの映画は暗くどんよりとした空気が流れ、映画を見て気が晴れるということはありません。むしろ、気が滅入ってしまう類いの映画であります。とはいいながら、この映画は他のイーストウッド映画と同様非常にレベルが高く秀逸であり、映画としては良質な素晴らしい作品であるといえます。映画とは楽しくてワクワクするだけではない、こうした告発的でシビアなものも映画の持ち味で必要なのです。

ということでこの映画は同じクリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」に連なるような幼児虐待のテーマを持った作品です。この幼児虐待をしでかす犯人は、複数もの幼く弱いものの命を絶つという嗜好を持った快楽殺人者であり、許しがたき人物です(映画ではふてぶてしく描かれていました)。それは見ていて気持ちのいいものではありません。さらに、この虐待による幼児失踪に対して母親の訴えを無視して市民の信頼を裏切るようなでっち上げの解決というひどい行動をする警察と、見ていて怒りに震えてしまう展開となります。主人公はその事件に巻き込まれ行方不明となった子供の母親で、こうした理不尽さに勇気を持って立ち上がる感動的な女性をアンジェリーナ・ジョリーが魂の入った熱演で見せます。

この映画は実話であるそうで、子供が失踪した母親に対して、手柄を誇示するために子供が発見されたとロサンゼルス市警が、母親が違うと主張しているにもかかわらず、別の子供を事件のストレスから勘違いしていると宛がうという信じられないような事件を元にしています。題名の「チェンジリング」とは取り替えられた子供というヨーロッパの民話から持ってきているとネットで書いてありました。さらに驚くのは、間違いを主張する母親に対して、警察は精神が病んでいると医者ぐるみで精神病院へと収容させてしまうこと。そこでは非人間的な拷問まがいのことも平然と行われており、この無法さは本当にアメリカで起こったことなの?と疑いたくなるようなずさんさ、悲惨さなのです。

その運命に翻弄される母親を演じるアンジェリーナ・ジョリーですが、彼女のために映画を作ったのでは、と言いたくなるほどにでずっぱりで、悲しみで泣き叫ぶ顔、げっそり痩せほせた顔、つかの間の喜びを見せる顔、怒りで相手を罵る顔、懇願する顔、、冷静な顔、と存在を揺るがすようなあらゆる感情によったて突き動かされる表情を画面一杯に見せます。もともと彼女は派手な顔立ちなのでそれら迫真迫る表情には圧倒されます。そこには凄まじいまでの母親の執念を感じずにはいられませんでした。クリント・イーストウッド監督がこのような告発的で正義の意味を考えさせるような映画も作ることもできるんだと尊敬の念をますます強くしたのでした。

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